MC型教師の「競争」「課題」「制限」で行うゲーミフィケーション教育
イシイ 沼田先生は、教育の現場でゲームの要素を取り入れたりと、いわゆる「ゲーミフィケーション」の枠で紹介されることもありますが、どのような形でゲームを取り入れているんですか?沼田 ゲームかどうかは自分ではわからないんですが、周りの人にゲーミフィケーションだといわれる所以は、授業に「競争」と「課題」と「制限」の3つの要素をよく取り入れるからかな。
要は、人と競える課題を与えて、それをどうクリアするか。さらに課題に制限を加えることで、子ども自身から「やりたくなっちゃう」ような気持ちを引き出してあげる。
たとえば、以前、風力・水力・太陽光・地熱・バイオ熱の5つの再生化エネルギーを小学生に浸透させてほしいという仕事があったんです。ただ、どう考えても「エネルギーがなくなったらどうする?」なんて唐突に言っても子供たちは興味を持たない。
だから、「君たちは何ヶ月後かにこのエネルギーを徹底的にアピールして、選挙をする。そして、誰が1位かを決めるんだ」という形で授業を行いました。課題も制限も決めて、1位を取るという競争もつくる。ゲームをやってるような感覚で楽しくなる工夫をして、それを学ぶ力に変えていけたらいいな、という考え方で指導していますね。
イシイ 今の話、おもしろいですね! まさにゲームをデザインされているように感じます。
沼田 今の再生化エネルギーの指導の例では、本来は「そのエネルギーを学ぶ」ことが目的だけど、実は彼らにとっては「自分がアピールするエネルギーで1位を取る」ことが目的になります。勉強が苦手でも、目的をそらすことでやる気が湧いてくる。本来の目的からそれているけど、自然と勉強していることにつながるんです。
イシイ 目的をそらしたりとか、自分じゃないキャラになって演じると、案外動きやすかったりしますよね。
『ドラクエ』みたいに、クラスを徹底的にロールプレイする
沼田 クラスをまとめていく上で、徹底的なロールプレイというか、生徒たちの特徴を活かすことは意識しています。運動会とかで足が速い子やパワーがある子は、その力を活かせる種目に徹底的に分ける。たとえば、パワーがある子って逆に足が速くないってことありますよね? そういう子たちって、リレーとかに出場すると他の子に責められたりすることがあるんですよ。ほかにも、スポーツは苦手だけど文字を書かせたらピカイチな子とか、ドラムがうまい子とか、色んな子がいる。
だから、彼らの力を発揮できる場を僕がつくって、一緒に戦う。『ドラクエ』のパーティーを組むような感覚です。それが僕の仕事なのかなって。
イシイ まさに沼田先生の教育は最新のゲームデザインであり、今の子供たちに合ったものだと思います。僕らの世代って『ドラゴンボール』に代表されるように、とにかく強いやつが1番なんですよ。悟空が強くて、クリリンとかは置いていかれるんですね。みんな悟空になりたいと思う。
それが最近は変わってきていて、『ONE PIECE』なんかを見てもらうとそうなんですけど、必ずいろんな力が役に立つんです。つまり、使えないキャラがいない、誰もが常にチャンスがある。だから沼田先生のような教育は、今の世代の子たちにすごく合っているし、さすがだなと感じます。
沼田 僕は色んな敵=課題を用意するんです。それも、歯が立たないような敵ばかりじゃダメで、『ドラクエ』でいう、経験値がたくさんもらえる超喜ばれるはぐれメタルのような敵を用意して、思わず会心の一撃をバンバン入れたくなるようにとか、用意する敵にも配慮してます。
そうやって工夫することで、みんなに活躍の場ができるようにしたいんです。
イシイ お二人の話を聞いていると、シミュレーションゲームの出だしが好きだとか、遊戯王カードが好きだとか、ゲームって人を表すんだと思いました。ゲームから何を学んだかというよりは、何が好きか、どんな風にプレイしたかということを知ることで、より自分が成長できるような印象を受けましたね。
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番組情報
QREATOR'S calendar
- 放送日
- 2015年12月14日(月)・12月21日(月)
- 時間
- 22:30〜23:00
- 放送局
- TOKYO MX
- スタジオゲスト
- 西野亮廣、堀江貴文、椎木里佳
【内容】
現在最も活躍しているクリエイター3名を招き対談を通し、有名クリエイターのカレンダーはどうなっているのか?
時間の使い方やアイデアの生み出し方など、ビジネスや人生のヒントが得られる番組です。スタジオゲストは、キングコングの西野亮廣氏・堀江貴文氏・女子高生起業家の椎木里佳氏をお招きし、対談を展開します。今回の記事の模様はVTRで放送予定です。
関連リンク
イシイジロウ
ゲームクリエイター/原作・脚本家
1967年生まれ。日経映像(1994年入社)、チュンソフト(2000年入社)、レベルファイブ(2010年入社)において、おもにアドベンチャーゲームのシナリオ・監督・プロデュース、ディレクションを務めたのち、2014年に独立。2015年株式会社ストーリーテリング設立。
2015年10月YOUTUBEで配信開始されたアニメシリーズ『モンスターストライク』 のストーリー・プロジェクト構成を担当。同じく2015年12月に発売される3DS版『モンスターストライク』のストーリー・プロジェクト構成も担当している。2016年1月より放映されるTVアニメ『ブブキ・ブランキ』にシリーズ構成・脚本(北島行徳氏と共同)として参加する事が発表された。
Twitter:https://twitter.com/jiro_ishii
QREATORS:http://qreators.jp/qreator/ishiijiro
沼田晶弘
MC型今教師/小学校教諭
1975年、東京生まれ。国立大学法人 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、学校図書生活科教科書著者、ハハトコのグリーンパワー教室講師。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、アメリカ・インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。
スポーツ経営学の修士を修了後、同大学職員などを経て、2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校へ。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞「教育ルネッサンス」に取り上げられて話題に。教育関係のイベント企画を多数実施するほか、企業向けに「信頼関係構築プログラム」などの講演も精力的に行っている。
Twitter:https://twitter.com/88834
QREATORS:http://qreators.jp/qreator/numataakihiro
和ーなごみ/Social Study代表
1994年生まれ。10年近く不登校を経験。2013年2月にイベント制作会社和ーなごみを起業し高校生社長となり3月には日本初となる高校生だけで経営するカフェ「ESPOIR」を設立。4月より和歌山大学観光学部に進学。
同年11月には40校以上から500名以上の学生を集めた学生合同文化祭を主催し、5000人以上を集客した。学生と社長のマッチングメディア「社長訪問」を立ち上げるなど、自身の経験を話すことで「一歩踏み出す勇気。」を伝えるため、全国各地の学校やイベントでの講演活動やメディア出演も精力的に行っている。
Twitter:https://twitter.com/nagomiobata
QREATORS:http://qreators.jp/qreator/obatakazuki
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