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  • 2020.09.04

ゲーム音楽が、同人音楽と民族音楽を繋いだ

同人音楽を辿る本連載。

「民族音楽と同人音楽」の続編として、とかく議論が紛糾しがちな「ゲーム音楽」を紐解く。

ゲーム音楽が、同人音楽と民族音楽を繋いだ

クリエイター

この記事の制作者たち

さて今回は「民族音楽と同人音楽」の続編。

ゲーム音楽について触れていきます。待ってました! という声も聞こえそうだし、なんじゃそりゃ、の声も聞こえそうな気がします。みなさまはどちらでしょうか。というかいままでですます体でしたでしょうか。ごきげんようお姉さま。

さて、同人音楽サークルの中には「民族音楽系」を名乗りつつ、ゲーム音楽からも影響を受けたことを公言しているサークルさんも少なくありません。

「ゲーム音楽」と「民族音楽」と「同人音楽」。ここにはいろいろなつながりがありそうです。今回はそこらへんを少しだけ掘り返してみようかなと思っております。

ゲーム音楽とはなにか」というテーマは以前から多くの議論が様々な人たちによって繰り広げられています。でも今回は全部省略。

ゲームのバックグラウンドミュージック(BGM)を主な対象にしたいと思います。SEとかセリフとか、それらにまつわるディスコグラフィーについてはまた別の機会にお話することもあるでしょう。

※本稿は、2015年に「KAI-YOU.net」で配信した記事を再構成したもの

執筆:安倉儀たたた 編集:新見直

目次

  1. ゲーム音楽を巡る、制約の歴史
  2. ゲームミュージックが民族音楽に出会うまで
  3. ゲーム世界を表現するための音楽
  4. 同人音楽、民族音楽が可能にするもの

ゲーム音楽を巡る、制約の歴史

同人音楽とゲーム音楽の話に入る前に、少しゲーム音楽について整理しておきましょう。

「ゲーム音楽」と一口でいっても、その実体はこの30年間でハードウエアの進展とともに急激に変化してしまいました。そもそも「ゲーム音楽・ゲームサウンド」という言葉自体も誰が言いはじめたのかははっきりとわかっていません。

また、誤解されがちですが「ゲーム音楽」もコンピューターゲームの登場と同時に生まれたわけではないのです。もともとコンピューターゲームに音楽はなかったのです。

コンピューターゲームの「音楽」に注目が集まるのは世界的にみて時差があるようです。

日本ではすぎやまこういちさんによる『ドラゴンクエスト』のクラシカルで印象深いメロディを思い描く人も多いでしょうが、その一方で、初期にはメロディがない「ゲーム音楽」も多かったのです。

80年代のコンピューターにとって「音を鳴らす」という挙動は大変負担が大きい処理でした。

敵の数や玉の表示が多くて処理落ちがしばしば発生するシューティングゲームでは、音色は限界まで減らし、画面表示に可能な限りメモリ領域をあてるといった開発者たちによるギリギリの戦いが日々繰り広げられる。

そのため、極少ないリズムをひたすらループする、ゲーム音楽独特の楽曲編成が生み出されました。とくにアーケードゲームではこうしたループサウンドが盛んに使われました。

ゼビウス(XEVIOUS)

1983年発売のファミリーコンピューター(通称ファミコン)では、同時に4音以上を鳴らすことができなかった上、使える色数も相当限られていたため、グラフィックも(今見ると)ショボいものでした。

三和音とノイズが出せる性能は当時としては出色の出来でしたが、画面の色数やグラフィックなどとも干渉するため、グラフィックが豪華だったりするとその分「音楽」の音色を減らされてしまうのです。また「メロディ」は多数の効果音が鳴っている時には消えてしまいます。

そんな風に、ゲーム音楽の制約は非常に強かったといえます。

かつて「テレビゲーム」の擬音が「ピコピコ」だったことは、ファミコンでは音色が限定され、生音のような臨場感あふれる音色を奏でることができなかったことをもっとも端的に表していたと思います。

いまそれがピコピコサウンドだとか8bitサウンドとか、あるいはチップチューンといって見直されていることはとても嬉しいことです。

頭の片隅にでも置いておいていただきたいのは、このような「ゲーム音楽」という統一的な枠組みは、最初は存在しなかった、ということです。

ファミコン時代から「ループを中心とするテクノ風の音楽」と「メロディアスな音楽」の両方が存在していて、これらの音楽は様々な形で聞かれていました。「ゲーム音楽に影響を受けた」といっても、どんなゲームを遊んだかの経験が違えば、その意味は大きく異なります

しばしばゲーム音楽の定義をめぐって交わされる論争は、単純に遊んでいたゲームの違い(聴取体験の偏り)に端を発しているように思われることもあります。

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ハードの進化と共に音数の増えるゲーム音楽