何もできずにいたアダルトビデオメーカー
FC2動画は、ほかの動画共有サイトに比べ、違法な動画やアダルト動画が数多く投稿されていることで知られている。なかでもアダルトビデオメーカーへの被害は大きく、新作が発売後間もなく投稿されてしまうケースも珍しくない。4月から5月にかけては、FC2動画の運営元社長と相談役が公然わいせつ幇助などの疑いで逮捕されたが、いまなお運営は続いており、違法動画は蔓延している。
担当者は、「以前から違法アップロードによる被害は業界関係者の間でも認知されていましたが、被害に対して大きな危機感を持っているメーカーは少ない」と語る。また、親告罪であるために、権利者側での調査や対策に莫大な時間と費用がかかってしまうのも、AVに限らず多くの権利者がなかなか対策に乗り出せない一因だ。
その結果、AVであるという性質もあいまって、違法アップロードは蔓延し、検索サイトでは正規コンテンツよりも違法コンテンツが上位に表示され続ける状態になっていたという。これに危機を感じた同社は、2012年より本格的な対策に乗り出した。
担当者によると、2012年7月から2015年5月までの間、同社が著作権を有するコンテンツで違法にアップロードされた作品数は、毎月発売される、いわゆる「新作」だけでも8,216作品。被害はFC2動画などの動画サイトだけではなく、ファイル共有ソフト・BitTorrentなどを利用した違法アップロードもあり、同社の損害額は単純計算で約400億円以上にものぼるという。
大規模な予算を投じて本格的な対策へ
現在、同社が対策にかける予算は月間1,000万円を超え、年換算で少なくとも1億円以上と、対策費用からも取り組みへの本気度がうかがえる。専門業者と共同で定期的にインターネット上のパトロールやモニタリングを実施し、動画投稿共有サイトへの動画削除の要請のほか、違法サイトからのダウンロードリンク削除や検索結果からの非表示要請などをあわせて行うことで、違法ダウンロードを防止するとともに、著作権侵害に関する証拠を随時収集している。
違法ダウンロードのもととなる悪質な違法アップロード者に対して、2014年には、動画共有サイトなどの運営元やISPに対し、年間2,374人の個人情報の開示を請求。個人を特定した違法アップロード者に対しては順次警告と損害賠償の請求を行い、そのどちらにも応じず、アップロードを繰り返す場合には、収集した侵害の証拠をもって、管轄の警察署へ著作権侵害の届出を行い、刑事事件としての手続きを進めている。
担当者は「これまで、良質な正規コンテンツ制作のみに注力し、購入してもらえる様に販促活動をしてきましたが、悪質なアップロード者による侵害を受け、違法コンテンツの削除申請やSEO対策などの対応を迫られていました。しかし後手に回る対応に終始していてはいつまでも解決しないという判断から、専門業者と共同で調査することで、著作権侵害の確たる証拠を得ることができるようになりました。そして、今回、ようやく著作権法違反の容疑による書類送検へとつなげることができました。今回の書類送検は同様の事案を今後スムーズに進める良い実例となり、違法アップロードをするすべての人たちに対して大きな抑止力となるのでは」と語る。
同社ではほかにも、全国130人の違法アップロード者に対して、同様に著作権侵害で各管轄警察署に申請を行っており、捜査が進展が見られるという。今後についても、違法アップロードへの対応はもちろん、違法ダウンロードへの対策にも積極的に取り組み、アダルトビデオ業界の違法コンテンツ撲滅を目指すという。
今回の事例をきっかけに、違法アップロードや違法ダウンロードに対する意識が少しでも広まることを願うばかりだ。
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