新作が発売されるたびに、違法コンテンツがネット上に投稿され、いまや正規品の数だけ違法コンテンツが存在すると言われている、日本のアダルトビデオ。
大手アダルトビデオメーカー・S1(エスワン)やMOODYZ(ムーディーズ)の著作権を有する株式会社CAが月間1千万円もの費用をかけ、違法コンテンツの対策に取り組んでいるものの、調査・削除だけでは根元を断つことができない。
そのため、今年に入ってからコンテンツだけでなく、違法アップロード者の撲滅に力を入れ、警告に応じない者に対しては、積極的に刑事事件としての手続きを進めている。
その成果は徐々に現れ、今年7月には警告に応じなかった山梨県在住の男性が、著作権法違反の疑いで書類送検された。
しかし、いまやアダルトビデオの違法コンテンツは当たり前の時代。そして、その渦中にいるのは、違法コンテンツによる被害をダイレクトに受けているAV女優や男優さんたちだ。
今回は、2015年12月をもってAV女優、そして芸能界からの引退を表明した、AV女優の希志あいのさんにインタビュー。
彼女がどんな思いで、8年間AV女優として活動してきたのか。アイドルグループ・恵比寿マスカッツの3代目リーダーとしてなど、女優だけでなく、多彩な活動を続けてきた彼女が、これまでの活動を振り返り、そして、女優としての立場から見た違法コンテンツの問題について、じっくりと語ってくれた。
企画・取材・文/吉田雄弥 撮影/Yosuke Mochizuki
希志あいの(以下、希志) 8年前に私がデビューした頃からあったので、存在は知ってました。最初、はじめて私の作品がアップロードされてるのを知った時は「うわぁ……」「マジ!? これどうやって削除するんだろう?」って思いましたね。
でも、その頃からきっとこれを1つ消しても、またすぐに次が出てくるんだろうなって。いろんな思いから混乱して、いい気分ではありませんでした。
──いまや、アダルトビデオは無料で見るというのが当たり前の感覚になってしまっている気がします。
希志 「無料サイトで知りました」って時々言ってくる方がいるんですよ。失礼極まりないですよね。
やっぱりAVもいろんな人が関わってるもので、遊びでつくってるわけじゃないんです。私は仕事として、みなさんが正規品を買ってくれるお金でご飯を食べてるわけであって。そんなこと言われると「何のためにやってるんだろう」って思っちゃうし、やりがいがなくなるというか。
たしかに、友達の間で話題になったり、あたかも公式のようなデザインでつくられていて、非公式と区別しづらいサイトとかもあると思うんです。でも、たとえ見ちゃったとしても、そういうことは言わないでほしいなって。
希志 制作スタッフさんや私たち女優、男優、マネージャー、パッケージやDVD制作の工場の人たち、最低でも30人以上が毎回関わってるのかな。作品によっては、もっと多くの方々が関わっていることもあると思います。
女優も含めて企画会議をやって、みんなで作品の内容を考えていくんです。収録当日は早朝に現場入りして、深夜まで撮影することもあります。
──すごく大変そうですね。
希志 私がこの業界に入った頃は、大体2日間かけて1本の作品を収録してたんですが、最近は今まで2日かけて撮ってた内容を1日で撮ることが多くなって、もう本当に大変です(笑)。
──どんな撮影なんでしょうか?
希志 簡単に言うと、セックスを2日間に分けてやっていたのを1日でやるんです。たとえば2日で5回セックスするのを、1日で5回セックスして収録するわけです。
──Oh……。
希志 それも普通にカップルがラブホテルでしてるんじゃなくて、ちゃんと(お客さんに)見せるセックスをしないといけないので、音や声をだすとか、カメラでの見え方、顔の表情、体の体勢、常に全身に神経を張り巡らせながらしてるので、筋肉と頭が疲れるんですよ……。そんな中で3Pとか4Pとかの乱交が入ってくると、女の子にとっては普通じゃ考えられないくらいの負担ですよ。
セックスって、ただ筋トレやれば体力がつくとかそういう問題じゃないんです。エアコンの音が入っちゃうので夏場は冷房をつけられないこともあるし、冬場は暖房を切らなきゃいけない。
暑くて死にそうになったり、寒すぎて風邪引いちゃったりすることもあります。でも見ている人にそんな部分は絶対に伝えちゃいけなくて、演技で見せるセックスをするんです。
──そんなに過酷な現場で頑張ってられるのは、やはり買って見てくれてる人の存在が大きいからでしょうか?
希志 それはもちろんです。私以外の女優さんも、みんな見てくれてる人のことを意識してやってるんで。特に私はおっぱいやお尻が大きいわけでもないので、体に自信がありません。その分、言葉の選び方や演技で頑張らないといけなくて、セリフ1つとっても、このセリフじゃ見てる人には届かないって思ったら、変えてもらうこともあります。だから、買ってくれる人の存在は本当にすごくありがたいです。
──ハードな現場で、セリフにもすごくこだわってるんですね。
希志 最近は1日で5回も6回もセックスすると女の子の負担が大きいから、回数を2回、3回に減らそうか、という流れにもなってきてます。必ずしも違法アップロードやダウンロードだけのせいじゃないけど、確実に影響は受けていて、予算が縮小気味になって、AV業界は萎縮してる。
だんだんと作品自体の内容も小さくなって、きっと見てる人も楽しめなくなってるんじゃないかなって思うんですよ。このまま放置して、もし、AV業界が潰れてしまったら──それは遠い未来じゃないっていうのをわかってほしい。実際にAV業界は萎縮してるんで、それは感じてほしいですね。
希志 実はあんまり触れないようにしていました。私が違法AVについて触れることで、そもそも違法AVの存在を知らない人が知ってしまって、違法ダウンロードしちゃうんじゃないかと思って。
違法AVの問題は、メーカーさんや専門の人にお任せした方がいいんじゃないかとか、いろいろ悩んでいる時期がありました。
でも、私に直接「無料サイトで知りました」と言ってくる人には、「それはダメですよ」って注意することはあります。
いま考えると、私たち女優ができることって、やっぱり直接訴えかけることだと思います。違法ダウンロードもそうですが、違法アップロードが一番よくない。
違法アップロードがなければ、違法ダウンロードもできないわけだし。これは犯罪なんだよってことを知ってほしい。ちゃんと買って、レンタルショップで借りて見ていただいて、気持ちよくなってください。
──違法AVが当たり前になってしまっている状況を変えないといけないですよね。
希志 たとえば、自分の大切な人が頑張ってるのに、その大切な人の作品が勝手に違法にアップロードされてる、違法に無料で見られてる。
そのとき、あなたは違法アップロードやダウンロードしている人に対してどう思うのか? 自分の気持ちに置き換えて考えてみてほしいですね。私たちは物じゃないので。人なんです。
希志 成人誌がすごく減ったと思います。私がデビューした2007年頃って、多分まだAVの全盛期で、コンビニにも書店にもたくさん置いてあったし、グラビアのお仕事も多かったです。これは違法行為だけのせいとかではなく、単純に他の業界と同じく、経済不況の問題だと思いますけど。
でも悪いことだけじゃなくて、女優の子がアイドルとかタレント活動することが多くなって、テレビ出演も増えましたよね。
──希志さん自身も、恵比寿マスカッツの3代目リーダーとして活躍されてましたよね。
希志 あの頃は、ダンス練習の次の日にMVの撮影だったりとか、ライブとライブの合間にAVの撮影があったりとか、本当に忙しくて体力的につらかったですね(笑)。
でも、精神的にはそうでもなくて、メンバーのみんなに会えて、楽しい時間も過ごせた。何より、多くの人に知ってもらえるきっかけになったし、「テレビ見ました」って言ってくれるのも、すごくうれしかったです。
やっぱり、地上波のテレビに出るのは、私たちが世間に認めてもらう、一番わかりやすいやり方なんです。
まだまだ私たちに対する偏見は全然ありますけど、それでもテレビで頑張ってる姿だったり、面白い姿を見てもらうことで、「あ、この子おもしろいじゃん」「この子頑張ってるね」って思ってくれるかもしれないし、ファンの人もその子の違った一面を見れるきっかけになったりするだろうし。
やっぱり、テレビに出て認知されることって大事なことだなって思いますね。
希志 SNSが普及してから、「AV女優は子供産むな」とか、誹謗中傷は鬼のようにきます(笑)。いろいろきますけど、そんなのいちいち気にしてたらやってられないし、私は自分のやってることが悪いとも思ってないので。
最初はね、そういうこと言われてショック受けてましたけど、今はもう、そう思う人もいると受け入れられるようになったし、別に否定もしません。でも、共感はしないです。人それぞれに、その人にとっての考えや「普通」があるから。
「AV女優は子供産むな」って考えは、その人にとって普通かもしれないけど、「だから何なん?」って。考えを押し付けるような人にはなりたくないし、押し付けられても私は応えられない。いま女優として頑張ってる子たちには、偏見に負けないでほしいです。
──心ない誹謗中傷を受けたり、違法行為問題があったり、過酷な撮影スケジュールをこなしたりと、AV女優は端から見るとそんなに長く続けられる仕事じゃないように感じました。希志さんが8年間もAV女優を続けられたのは、なぜでしょうか?
希志 やっぱり、仕事自体を楽しんでやってこれたからだと思います。頑張ってつくった作品を見てくれる人がいて、その人たちがイベントに来てくれて、直接話をしてくれたりとか、うれしいですよね。だから、やりがいを感じているというか。
中学生の時からファンで「18歳になったから来ました!」って子や、男性だけじゃなくて女の子もたくさん来てくれる。私たちは、作品がどれくらい売れてるかとかを知らないので、直接イベントに来てくれるファンの人の存在からでしか、作品の反響とかわからないから、直接会いに来てくれるのはやっぱりうれしいし、ちょっと落ち込んでても、また来月も頑張ろうって気になれます。
希志 引退に関しては、きっかけとか経緯とかはあんまりなくて、なんでしょう……。自分の中でやりきったなという気持ちが大きくて、これ以上続けてもダラダラしてしまうかもしれないし、向上心がなくなってしまうのも嫌だったし。
だったら、1回離れてみようかな? って思ったんです。いろいろ考えて、新しくやりたいことが見つかったし、自分の中で満足できた。この業界が嫌いだとかはまったくなくて、むしろ嫌いになって辞めたくなかった。
それがいまのタイミングだったんです。好きなままで辞めたかったので。
──希志さんにとって、AV業界というのはどんな世界だったんでしょうか?
希志 愛じゃないですかね。愛がないとできないんですよ。スタッフさんの愛がないと、私たちは気持ちよく収録できない。レイプとかの凌辱モノやハードなSMモノとかも、やっぱり全部愛がないとできないですよ。
逆に出演している私たちにも愛がないと、きっと見ている人に伝わらないし。見ている人は、愛がある作品を見て「あ、Hしたいな」って思って、夫婦の営みがうまくいったりするかもしれない(笑)。
AVをきっかけに新しいカップルができて、子供が生まれるかもしれない。すべてが愛でつながってるのかな? って思いますね。AVがないと、もっと性犯罪は増えると思うし、愛と平和と少子化対策のために、この業界はあると思います。
希志 極端な話、ちょっと歩いてレンタルショップで数百円払って借りて見るのか、違法ダウンロードして数百万の損害賠償払ったり※1、懲役受けて人生つぶす※2のか、どっちがいいですか? って言ったら、絶対レンタルショップで借りた方がいいじゃないですか!
直接お店で借りる勇気がない人は、DMM.comさんとか、人に会わずに正規にダウンロードできるサイトがあるんだから、数百円、数千円出しましょう。本当に買ってほしい。
というか、DMM.comでサンプルがあるから、もし無料で見たいならサンプルを見てほしいです。これ、言っていいかわからないけど、サンプルでも十分抜ける! そのあと気になるんだったら、そのまま手軽に購入できるし、違法じゃなくて安全だから。お金ないときは、サンプルで我慢してほしい(笑)。
──最後に、買ってくださってる方へのメッセージをお願いします。
希志 本当にありがとうございます。言葉で表しきれないくらい、感謝の気持ちでいっぱいです。なおかつ、イベントに来てくださってる方もいて、直接会えることが、私にとって唯一の支えになっていました。
もうこれだけで十分なんですけど、もしできるなら、周りの友人や知り合いの中に違法AVを見ている人やアップロードしてる人がいたら、「それはやめたほうがいいよ」って声をかけたり、SNSでもいいので、違法コンテンツ撲滅の声を広めてほしいなって。
買ってくれてる人のために、私たちはもっとおもしろい作品だったり、見応えのある作品をつくっていこうという気持ちになれているので、私が辞めても、今後も変わりなく、期待してAVを買ってほしいです。
※1 株式会社CAの違法コンテンツ対策の取り組みで、2014年1月から2015年4月の期間、514人に対して個人宅へ弁護士より警告書を送付。うち、40件は示談でまとまり、その合計賠償金額は¥42,282,800にものぼる
※2 違法アップロードは、著作権法119条1項に違反。同項は、著作権を侵害する行為を罰する法律。罰則としては、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するという内容。懲役刑としては窃盗罪と同等だが、罰金に関しては著作権法侵害のほうが圧倒的に重くされている
大手アダルトビデオメーカー・S1(エスワン)やMOODYZ(ムーディーズ)の著作権を有する株式会社CAが月間1千万円もの費用をかけ、違法コンテンツの対策に取り組んでいるものの、調査・削除だけでは根元を断つことができない。
そのため、今年に入ってからコンテンツだけでなく、違法アップロード者の撲滅に力を入れ、警告に応じない者に対しては、積極的に刑事事件としての手続きを進めている。
その成果は徐々に現れ、今年7月には警告に応じなかった山梨県在住の男性が、著作権法違反の疑いで書類送検された。
しかし、いまやアダルトビデオの違法コンテンツは当たり前の時代。そして、その渦中にいるのは、違法コンテンツによる被害をダイレクトに受けているAV女優や男優さんたちだ。
今回は、2015年12月をもってAV女優、そして芸能界からの引退を表明した、AV女優の希志あいのさんにインタビュー。
彼女がどんな思いで、8年間AV女優として活動してきたのか。アイドルグループ・恵比寿マスカッツの3代目リーダーとしてなど、女優だけでなく、多彩な活動を続けてきた彼女が、これまでの活動を振り返り、そして、女優としての立場から見た違法コンテンツの問題について、じっくりと語ってくれた。
企画・取材・文/吉田雄弥 撮影/Yosuke Mochizuki
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無料サイトで知りました
──希志さんは、AVが違法にアップロードされていることはご存知ですよね?希志あいの(以下、希志) 8年前に私がデビューした頃からあったので、存在は知ってました。最初、はじめて私の作品がアップロードされてるのを知った時は「うわぁ……」「マジ!? これどうやって削除するんだろう?」って思いましたね。
でも、その頃からきっとこれを1つ消しても、またすぐに次が出てくるんだろうなって。いろんな思いから混乱して、いい気分ではありませんでした。
──いまや、アダルトビデオは無料で見るというのが当たり前の感覚になってしまっている気がします。
希志 「無料サイトで知りました」って時々言ってくる方がいるんですよ。失礼極まりないですよね。
やっぱりAVもいろんな人が関わってるもので、遊びでつくってるわけじゃないんです。私は仕事として、みなさんが正規品を買ってくれるお金でご飯を食べてるわけであって。そんなこと言われると「何のためにやってるんだろう」って思っちゃうし、やりがいがなくなるというか。
たしかに、友達の間で話題になったり、あたかも公式のようなデザインでつくられていて、非公式と区別しづらいサイトとかもあると思うんです。でも、たとえ見ちゃったとしても、そういうことは言わないでほしいなって。
1日で5回もセックスを収録するように
──1つの作品をつくるのに、どのくらいのスタッフさんが関わってるんでしょうか?希志 制作スタッフさんや私たち女優、男優、マネージャー、パッケージやDVD制作の工場の人たち、最低でも30人以上が毎回関わってるのかな。作品によっては、もっと多くの方々が関わっていることもあると思います。
女優も含めて企画会議をやって、みんなで作品の内容を考えていくんです。収録当日は早朝に現場入りして、深夜まで撮影することもあります。
──すごく大変そうですね。
希志 私がこの業界に入った頃は、大体2日間かけて1本の作品を収録してたんですが、最近は今まで2日かけて撮ってた内容を1日で撮ることが多くなって、もう本当に大変です(笑)。
──どんな撮影なんでしょうか?
希志 簡単に言うと、セックスを2日間に分けてやっていたのを1日でやるんです。たとえば2日で5回セックスするのを、1日で5回セックスして収録するわけです。
──Oh……。
希志 それも普通にカップルがラブホテルでしてるんじゃなくて、ちゃんと(お客さんに)見せるセックスをしないといけないので、音や声をだすとか、カメラでの見え方、顔の表情、体の体勢、常に全身に神経を張り巡らせながらしてるので、筋肉と頭が疲れるんですよ……。そんな中で3Pとか4Pとかの乱交が入ってくると、女の子にとっては普通じゃ考えられないくらいの負担ですよ。
セックスって、ただ筋トレやれば体力がつくとかそういう問題じゃないんです。エアコンの音が入っちゃうので夏場は冷房をつけられないこともあるし、冬場は暖房を切らなきゃいけない。
暑くて死にそうになったり、寒すぎて風邪引いちゃったりすることもあります。でも見ている人にそんな部分は絶対に伝えちゃいけなくて、演技で見せるセックスをするんです。
──そんなに過酷な現場で頑張ってられるのは、やはり買って見てくれてる人の存在が大きいからでしょうか?
希志 それはもちろんです。私以外の女優さんも、みんな見てくれてる人のことを意識してやってるんで。特に私はおっぱいやお尻が大きいわけでもないので、体に自信がありません。その分、言葉の選び方や演技で頑張らないといけなくて、セリフ1つとっても、このセリフじゃ見てる人には届かないって思ったら、変えてもらうこともあります。だから、買ってくれる人の存在は本当にすごくありがたいです。
──ハードな現場で、セリフにもすごくこだわってるんですね。
希志 最近は1日で5回も6回もセックスすると女の子の負担が大きいから、回数を2回、3回に減らそうか、という流れにもなってきてます。必ずしも違法アップロードやダウンロードだけのせいじゃないけど、確実に影響は受けていて、予算が縮小気味になって、AV業界は萎縮してる。
だんだんと作品自体の内容も小さくなって、きっと見てる人も楽しめなくなってるんじゃないかなって思うんですよ。このまま放置して、もし、AV業界が潰れてしまったら──それは遠い未来じゃないっていうのをわかってほしい。実際にAV業界は萎縮してるんで、それは感じてほしいですね。
私たちは物じゃない、人なんです
──希志さん自身は、違法AVについて直接ファンの人たちに訴えかけたことはあるんでしょうか?希志 実はあんまり触れないようにしていました。私が違法AVについて触れることで、そもそも違法AVの存在を知らない人が知ってしまって、違法ダウンロードしちゃうんじゃないかと思って。
違法AVの問題は、メーカーさんや専門の人にお任せした方がいいんじゃないかとか、いろいろ悩んでいる時期がありました。
でも、私に直接「無料サイトで知りました」と言ってくる人には、「それはダメですよ」って注意することはあります。
いま考えると、私たち女優ができることって、やっぱり直接訴えかけることだと思います。違法ダウンロードもそうですが、違法アップロードが一番よくない。
違法アップロードがなければ、違法ダウンロードもできないわけだし。これは犯罪なんだよってことを知ってほしい。ちゃんと買って、レンタルショップで借りて見ていただいて、気持ちよくなってください。
──違法AVが当たり前になってしまっている状況を変えないといけないですよね。
希志 たとえば、自分の大切な人が頑張ってるのに、その大切な人の作品が勝手に違法にアップロードされてる、違法に無料で見られてる。
そのとき、あなたは違法アップロードやダウンロードしている人に対してどう思うのか? 自分の気持ちに置き換えて考えてみてほしいですね。私たちは物じゃないので。人なんです。
テレビに出ることは、世間に認めてもらうわかりやすい方法
──2日撮りだったのが、1日で撮るようになったりと、希志さんがデビューされてからいろんな変化があったと思いますが、改めてデビュー当時から振り返ってみて、ほかにどういった部分に変化を感じますか?希志 成人誌がすごく減ったと思います。私がデビューした2007年頃って、多分まだAVの全盛期で、コンビニにも書店にもたくさん置いてあったし、グラビアのお仕事も多かったです。これは違法行為だけのせいとかではなく、単純に他の業界と同じく、経済不況の問題だと思いますけど。
でも悪いことだけじゃなくて、女優の子がアイドルとかタレント活動することが多くなって、テレビ出演も増えましたよね。
──希志さん自身も、恵比寿マスカッツの3代目リーダーとして活躍されてましたよね。
希志 あの頃は、ダンス練習の次の日にMVの撮影だったりとか、ライブとライブの合間にAVの撮影があったりとか、本当に忙しくて体力的につらかったですね(笑)。
でも、精神的にはそうでもなくて、メンバーのみんなに会えて、楽しい時間も過ごせた。何より、多くの人に知ってもらえるきっかけになったし、「テレビ見ました」って言ってくれるのも、すごくうれしかったです。
やっぱり、地上波のテレビに出るのは、私たちが世間に認めてもらう、一番わかりやすいやり方なんです。
まだまだ私たちに対する偏見は全然ありますけど、それでもテレビで頑張ってる姿だったり、面白い姿を見てもらうことで、「あ、この子おもしろいじゃん」「この子頑張ってるね」って思ってくれるかもしれないし、ファンの人もその子の違った一面を見れるきっかけになったりするだろうし。
やっぱり、テレビに出て認知されることって大事なことだなって思いますね。
「AV女優は子供を産むな」容赦無い誹謗中傷
──偏見はいまだに存在するというお話が出ましたが、長く活動されてる中で、どのような偏見を感じてきたんでしょうか?希志 SNSが普及してから、「AV女優は子供産むな」とか、誹謗中傷は鬼のようにきます(笑)。いろいろきますけど、そんなのいちいち気にしてたらやってられないし、私は自分のやってることが悪いとも思ってないので。
最初はね、そういうこと言われてショック受けてましたけど、今はもう、そう思う人もいると受け入れられるようになったし、別に否定もしません。でも、共感はしないです。人それぞれに、その人にとっての考えや「普通」があるから。
「AV女優は子供産むな」って考えは、その人にとって普通かもしれないけど、「だから何なん?」って。考えを押し付けるような人にはなりたくないし、押し付けられても私は応えられない。いま女優として頑張ってる子たちには、偏見に負けないでほしいです。
──心ない誹謗中傷を受けたり、違法行為問題があったり、過酷な撮影スケジュールをこなしたりと、AV女優は端から見るとそんなに長く続けられる仕事じゃないように感じました。希志さんが8年間もAV女優を続けられたのは、なぜでしょうか?
希志 やっぱり、仕事自体を楽しんでやってこれたからだと思います。頑張ってつくった作品を見てくれる人がいて、その人たちがイベントに来てくれて、直接話をしてくれたりとか、うれしいですよね。だから、やりがいを感じているというか。
中学生の時からファンで「18歳になったから来ました!」って子や、男性だけじゃなくて女の子もたくさん来てくれる。私たちは、作品がどれくらい売れてるかとかを知らないので、直接イベントに来てくれるファンの人の存在からでしか、作品の反響とかわからないから、直接会いに来てくれるのはやっぱりうれしいし、ちょっと落ち込んでても、また来月も頑張ろうって気になれます。
年内で引退。好きなままで辞めたかった
──そんな希志さんが、今年いっぱいでAV女優、そして芸能界からも身を引かれます。希志 引退に関しては、きっかけとか経緯とかはあんまりなくて、なんでしょう……。自分の中でやりきったなという気持ちが大きくて、これ以上続けてもダラダラしてしまうかもしれないし、向上心がなくなってしまうのも嫌だったし。
だったら、1回離れてみようかな? って思ったんです。いろいろ考えて、新しくやりたいことが見つかったし、自分の中で満足できた。この業界が嫌いだとかはまったくなくて、むしろ嫌いになって辞めたくなかった。
それがいまのタイミングだったんです。好きなままで辞めたかったので。
──希志さんにとって、AV業界というのはどんな世界だったんでしょうか?
希志 愛じゃないですかね。愛がないとできないんですよ。スタッフさんの愛がないと、私たちは気持ちよく収録できない。レイプとかの凌辱モノやハードなSMモノとかも、やっぱり全部愛がないとできないですよ。
逆に出演している私たちにも愛がないと、きっと見ている人に伝わらないし。見ている人は、愛がある作品を見て「あ、Hしたいな」って思って、夫婦の営みがうまくいったりするかもしれない(笑)。
AVをきっかけに新しいカップルができて、子供が生まれるかもしれない。すべてが愛でつながってるのかな? って思いますね。AVがないと、もっと性犯罪は増えると思うし、愛と平和と少子化対策のために、この業界はあると思います。
無料で見たいならサンプルで我慢してほしい
──いろんな思いを聞かせていただいてありがとうございます。なおさら、正規品をちゃんと買ってほしいですよね。希志 極端な話、ちょっと歩いてレンタルショップで数百円払って借りて見るのか、違法ダウンロードして数百万の損害賠償払ったり※1、懲役受けて人生つぶす※2のか、どっちがいいですか? って言ったら、絶対レンタルショップで借りた方がいいじゃないですか!
直接お店で借りる勇気がない人は、DMM.comさんとか、人に会わずに正規にダウンロードできるサイトがあるんだから、数百円、数千円出しましょう。本当に買ってほしい。
というか、DMM.comでサンプルがあるから、もし無料で見たいならサンプルを見てほしいです。これ、言っていいかわからないけど、サンプルでも十分抜ける! そのあと気になるんだったら、そのまま手軽に購入できるし、違法じゃなくて安全だから。お金ないときは、サンプルで我慢してほしい(笑)。
──最後に、買ってくださってる方へのメッセージをお願いします。
希志 本当にありがとうございます。言葉で表しきれないくらい、感謝の気持ちでいっぱいです。なおかつ、イベントに来てくださってる方もいて、直接会えることが、私にとって唯一の支えになっていました。
もうこれだけで十分なんですけど、もしできるなら、周りの友人や知り合いの中に違法AVを見ている人やアップロードしてる人がいたら、「それはやめたほうがいいよ」って声をかけたり、SNSでもいいので、違法コンテンツ撲滅の声を広めてほしいなって。
買ってくれてる人のために、私たちはもっとおもしろい作品だったり、見応えのある作品をつくっていこうという気持ちになれているので、私が辞めても、今後も変わりなく、期待してAVを買ってほしいです。
※1 株式会社CAの違法コンテンツ対策の取り組みで、2014年1月から2015年4月の期間、514人に対して個人宅へ弁護士より警告書を送付。うち、40件は示談でまとまり、その合計賠償金額は¥42,282,800にものぼる
※2 違法アップロードは、著作権法119条1項に違反。同項は、著作権を侵害する行為を罰する法律。罰則としては、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するという内容。懲役刑としては窃盗罪と同等だが、罰金に関しては著作権法侵害のほうが圧倒的に重くされている
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希志あいの
AV女優
生年月日1988/2/1、身長157cm、スリーサイズB87cmW57cm H83cm、血液型AB型、趣味ダンス・器械体操、出身地東京都
12月19日(土)には、堂々の引退作『ありがとう』が発売される。アイポケHPから募集した最後に見たい企画をランキング形式で発表し、様々な試みに挑戦している。
http://www.ideapocket.com/special/kisi_aino_intai/
https://twitter.com/kishi_aino
1件のコメント
米村 智水
希志あいのさん雰囲気変わった〜