結婚の“メリット”は? 現代社会と制度のズレ
磯野 最近、「ヒールメイト」の会員の方から「結婚制度が息苦しい」とか「もっと簡単に離婚できればいいのに」という声をよく聞きます。
亀山 コロナ禍でいろいろなことが炙り出されたような気がします。あの頃、夫婦が一緒にいる時間が増えてよかったという人もいるけど、多くはげんなりしたり幻滅したりしたのではないかと感じるんです。
磯野 結局、結婚は制度なんですよね。本当に一緒にいたいなら事実婚でも同棲でもいいわけですから。制度を利用していないと、子どもの姓とか相続とかが問題になるから、そこがクリアされれば、別に結婚制度を利用する必要はないと思う人も多いんじゃないでしょうか。
磯野妙子さん:レゾンデートル株式会社代表。医療専門職として高度医療に長年従事。また一般家庭の主婦として子育てに専念してきた。2022年に起業経験もない状態で、既婚者専用マッチングアプリ/コミュニティ「Healmate(ヒールメイト)」を立ち上げて現在に至る。
亀山 私自身は自称“大恋愛”の末に結婚したんですが、婚姻届を書く時点で「ヤバい、これ間違えたわ」と思ったんですよ。制度を欲していたわけじゃない、と。
でも若気の至りで「相手を自分のものにしたい、縛りつけたい」という思いが勝って、脅すようにして結婚を勝ち取ったから、婚姻届を書かないわけにはいかなかった。それで書いたけど、いずれ離婚するだろうなと思ったら、やっぱり離婚しました。
磯野 私は先ほど言ったように、「女は結婚しなければいけない」という親の価値観の中で育ったから、仕事より結婚を選んでしまったんです。
でもその後、教育も文化もどんどん男女平等になってきた結果、現代の結婚という制度に無理が生じているのかなと思っています。
亀山 もともとは家父長制度の中の「嫁」という位置づけで、相手の「家に入る、戸籍に入る」というのが結婚ですもんね。
戦後の民法で、一応、両人の意志のみで結婚することができて、夫婦で新戸籍をつくるようになったけど、つい最近まで結婚式場でも「○○家と○○家」なんて書いてありましたからね。
選択的夫婦別氏制度も遠のいてしまったし、ますます少子化になって当然だと思う。今となっては、結婚のメリットって、磯野さんが言ったように相続くらいしかないんじゃないでしょうか。
亀山早苗さん:フリーライター。男女関係を中心に、恋愛、結婚、不倫、婚外恋愛などについて20年以上取材を続けている。著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』などがある。
磯野 もちろん、メリットやデメリットとして単純に割り切れない面もありますし、幸せの形も人それぞれです。今の結婚制度が“安心”に繋がっているという人も多いと思います。
そう思うんですけど、私たちのように結婚に疑問を持つ人やしんどい思いを抱えている人もいるし、それぞれの事情もあるんじゃないかと……。
日本の結婚は“愛情ベース”だけじゃない
亀山 私、パートナーシップ制度を、同性だけじゃなくて異性間にも広げればいいと思うんです。最近、少しそういった動きもあるようですが、まだ認められてはいない。
磯野 結婚して「これは違っていた」と思っても、離婚するのがまた大変ですしね。
亀山 日本の結婚ってそもそも、愛情ベース“だけ”じゃないんですよね。生活単位、育児単位という側面が大きく、しかも伝統的に世間体とか見栄とかプライドとかと表裏一体になっているから、夫婦関係は悪くなっているのに「結婚」という形にしがみついてしまうことが多い。
ヨーロッパ風に愛情ベースだったら、「愛情が減ってきた」と感じた方が別れを言い出し、それを追ってはいけないという文化があるから、言われた側もさっさと別れる。じゃあ、子どもはどうするかと冷静に話し合いもできる、というケースも多いんです。
でも日本だと、不仲を通り越して、互いに憎しみが湧くまで離婚しないケースもあるから、その後の話し合いがなかなか冷静にできない。子どもが夫婦関係の人質みたいになっていることもある。愛情がなくなったら一緒にいるべきかを改めて考える。そんな価値観がもう少し育つといいなあと思います。
磯野 その前提として、お互いの経済的精神的自立がありますよね。それがないと自由になれない。
亀山 そうですよね。だからたとえば、専業主婦や主夫の方が離婚を考えたとき、そこをバックアップする制度があればいいなと思いますね。1年で無理なく技術を身につけて就職にたどりつき、無事に離婚できる、みたいな。
磯野 みんながひとりでも生きていけるようにすれば、結婚する人がますます減るかも……。
亀山 夫が稼いで、妻が家庭を担ってと、役割分担がはっきりしていた時代ではなくなりましたからね。本当にみんながひとりで生きていけるようになったら、結婚という制度の意義がさらに問われるかもしれません。
磯野 結婚がもっとパートナー同士の愛情を重視する形に変わっていくとよいですね。
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