kahocaとNeuronはあえて距離を置く──“作品ファースト”の徹底
──新EP『From Noir into Clair』について、kahocaさんは「今回の制作では色んな感情が動き自分の中でも特別な作品になりました」とXに投稿されていました(外部リンク)。どのような感情が動いていたのでしょうか?
kahoca Empty old Cityで私は、楽曲の世界観や物語を伝えるストーリーテラー(語り手)の役割を担っているんですが、新EP『From Noir into Clair』では作品に登場する人物に、とても感情移入してしまったんですよね。
今回のEPでは、同じストーリーを描く4つの曲の一つ一つの曲に異なる役割があり、その中で渦巻く雰囲気や感情も違ったので、それぞれ「どう表現すればいいんだろう」って考える時間が多くなったんです。
加えて、取り扱うテーマが重いものだったこともあって、作品のことを考えていくうちに、一緒に自分も“堕ちていってしまう”という感覚にはじめてなりました。
kahoca 今回の楽曲は少しクラシックの要素を感じるというか、綺麗なイメージがあって。「この曲を歌うならいつもの歌い方をしたくないな」と思って、声楽に通いはじめたんです。
「今までとは一線を画すような、新しい歌い方をしたい」と思ってのことだったんですが、もちろん一朝一夕で身に着けられるようなものではなくて。
そうした新しいことへの挑戦の中で、自分自身と向き合う時間もものすごく増えて。精神状態としては不安定なままレコーディングに挑んでしまうこともありました。
頭にイメージはあるけど、思ったように表現できないフラストレーションとか、不甲斐ない気持ちとか、いろんな感情が溢れてしまって。それがまたこのEPのストーリーの中で描かれる感情と重なることもあって、レコーディングを一時中断してしまうこともありました。
──そういったkahocaさんの変化というのはNeuronさんも感じられていましたか?
Neuron 声楽に通いはじめた話は聞いてましたし、レコーディングの前に仮で歌ってもらった段階で「新しい声が出てるな」と素直に興奮していたところはありました。
たしかに今回の作品には新しい歌い方の方が合う部分も少なからずあるし、プラスの面しか感じていなかったので、kahocaがそこまで不安定になっているのは気付かなかったです。
レコーディングが止まってしまった時は心配でしたし、新しい発声との葛藤は伝わってきましたが。かといって、辛そうだからもうこれでOKということは絶対にやりませんでした。
──そもそも、普段からあまり相談などはされないのでしょうか?
Empty old Cityの新アーティストビジュアル/Art Director & Designer:Koki Ito(THINKR) Producer:Chihiro Iida(THINKR) Cameraman:Akira Okada
kahoca 会った時に軽く話すくらいだよね。
Neuron そうだね、機会があれば話すけど、普段から連絡を取り合ってるわけじゃない。
kahoca 「メンバーは友だち」だという意識を持ちすぎない方がEmpty old Cityという音楽ユニットとしてはうまくいくと思っているので、そういう距離感にいるところはあるかもしれません。
すごく仲良くなっちゃうと、逆にやりづらくなる部分も出てくるじゃないですか。
今回みたいに私が不安定になっていることをNeuronが知りすぎていてもよくなかっただろうし。そこはお互い、あえて伝えない方が、甘えずにしっかりと作品づくりや活動に向き合えると考えています。
──“作品ファースト”への強いこだわりを感じるエピソードではありますが、そこは意識的に取り組まれていることなのでしょうか?
Neuron 作品やEmpty old Cityというユニットを優先すると、人の気持ちやその時々の状況を少なからず犠牲にしなければならない部分はあると思っているんです。
たとえば、自分のことを優先して考えたくなる時もあるけど、それはEmpty old Cityとしてはダサいから、自分の都合は切り捨てることはたまにあります。友だちに対する思いやりが働いてしまうと、作品づくりにとっては良くない場面もあると思います。
重要なことや楽しいことはお互い積極的に話していますが、普段から密に連絡を取り合って、バランスを崩すのはちょっと嫌ですね。
kahoca 別に仲が悪いとかではないんですよ?
Neuron そこは本当に大丈夫です(笑)。

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イベント情報
Empty old City 2nd ONE-MAN LIVE
- 開催日時
- 2026年5月8日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
- 金額
- ¥6,600(税込)+1ドリンク
- 会場
- Spotify O-EAST
- 受付期間
- 〜11月3日(月・祝) 23:59
関連リンク
Neuron(ニューロン)
コンポーザー/音楽プロデューサー
Empty old CityのComposer / Producer。ユニットとしての活動に加え、外部アーティストへの楽曲提供も行う。花譜「ひとえに壊れて」「黄金の木」「アポカリプスより」「ホワイトブーケ」、明透「illumina」、Albemuth「Replica」、琶舞「Symbiotic Dominion」、梓川「uni」、V.W.P「神話」理芽&幸祜「甘粒」を提供。

kahoca(カホカ)
ボーカル
Empty old CityのVocalとして活動。鳴潮同人スペシャル番組『ソラリスシーサイドストーリー』タイアップソング「Summertime Polaroid」の作詞・歌唱を担当。KAMITSUBAKI STUDIO と”Kazuhide Oka”がタッグ組んだインディーゲームと音楽のプロジェクト「ANMC」では、「アウトライン・シーサイド」「また旅はネコミミと」「二人だけの物語」を歌唱。明電舎 Pixel Singer Project では「電鉄ちゃんのうた」を歌唱。

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