KADOKAWA社内でも「失敗する」と言われた小説のサブスク「カクヨムネクスト」が大成功した話

『ソードアート』『魔法科』レベルの大ヒット作を「カクヨム」から送り出す

──作家も作品も充実化が進んできた「カクヨムネクスト」ですが、次の1年は何が目標になりますか?

松崎夕里 編集者としては、売れる作品をつくるというミッションがあります。運営としては、サブスクで読んでいただける人を増やして、「カクヨムネクスト」というプラットフォームを盤石にしていくことです。

どういう作品なら課金してまで読むのかを考えて試行錯誤しつつ、担当作家を持つKADOKAWAの各レーベルの編集者にも、武器として使ってもらえるような存在にしていきたいと思います。メディアミックスを大きくする術を考えるのは、編集者にとって常日頃の仕事ですから。

──本が売れない時代に、作品発表の窓口および収益源として選択肢に加えてもらいたいと。

松崎夕里 今、新刊は初速がすべてといった話をよく聞きます。書店に並ぶ前に、ファン層を形成して作品への熱を温める、認知を高めておくということが必要になっています。

露出を増やす上で「カクヨムネクスト」を利用することに損はありません。また「カクヨムネクスト」は台湾でもサービスを展開していますし、今は英語対応も準備しています。

KADOKAWA自体がグローバル展開を指向する中で、海外に対して開かれているプラットフォームであることにうま味を感じてくださる作家さんや編集者に向けて、個人ではできないような仕組みを提供できます

河野葉月さんと松崎夕里さん

──なるほど。一方で「カクヨム」の目標はいかがでしょうか?

河野葉月 「カクヨム」もローンチから9周年を記念した「カクヨム誕生祭2025」をはじめ、様々な企画を展開しています。直近では3月31日締め切りで、アニメ映画された『トラペジウム』の作者で元乃木坂46の高山一実さんを迎えた「わたしのアイドル」コンテストを開催しました。

UGCは良くも悪くも安定期に入っているところがあるので、ここからどのように次の展開を探していくかが目下の最大の課題ですね。

また将来的には、Webから出てきてKADOKAWAの屋台骨を支えるほどになった川原礫先生の『ソードアート・オンライン』や、佐島勤先生の『魔法科高校の劣等生』のようなクラスの大ヒット作品を「カクヨム」から送り出したいですね

サブスク「カクヨムネクスト」が目指す小説のエコサイクル

──お二人の挑戦は、出版業界にとって光明となり得るようなお話ですね。

河野葉月 KADOKAWAとしてはもちろん、これまでもこれからも膨大な出版物を刊行して収益をあげることが、作品を供給し続けられる源なのは間違いありません。

一方で、紙代や流通代などすべてが値上がりし、紙の雑誌自体もどんどん閉じて発表する場所が狭まっていく中で、ちゃんとサードプレイスがあった方が良いと思っています。

松崎夕里 実際、「カクヨムネクスト」以外で小説のサブスクリプションサービスというものが思い浮かばないですよね。強いてあげれば「Kindle Unlimited」ですが、漫画や雑誌の利用者層が多いのではないかと思います。

小説雑誌は、エコサイクルができているわけではなく、作家さんへの原稿料も基本的には出版社の持ち出しでした。しかし「カクヨムネクスト」は、売り上げの中から作家さんに還元するサイクルを実現しています。そういった点が、出版業界に良い影響を与えるようになればと思っています。

試しに「カクヨムネクスト」をのぞいてみる
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