KADOKAWA社内でも「失敗する」と言われた小説のサブスク「カクヨムネクスト」が大成功した話

「カクヨム」と「カクヨムネクスト」の違い サービスを牽引する名作たち

──長く「カクヨム」で書いている作家さんにも、「カクヨムネクスト」でも書きたいというモチベーションは生まれて来ていますか?

松崎夕里 すごくあります。「カクヨム」で開催されていた「カクヨムコンテスト10」にて、「カクヨムネクスト」での連載権を獲得できる「カクヨムネクスト賞」を設けたのですが、2000作品近くの応募がありました。

まだ書籍化の経験はないけれど、「カクヨムネクスト」の可能性を感じて小説を書いてくださった方も大勢いた結果だと思います。

一方で、プロの作家さんでまだお声がけをしていない方々も、「これなら長篇化できる」という自信を持って腕まくりをして乗り込んで来ていただいてます。

カクヨムネクスト賞が設けられた小説コンテスト「カクヨムコンテスト10

──「カクヨムネクスト」が充実すると、本体の「カクヨム」に影響が出るといった懸念はないのでしょうか?

河野葉月 懸念はありません。「カクヨムネクスト」が成長することで「カクヨム」も大きくなる──相互補完の関係が構築できればと思っています。

読者に読まれる作品を作家それぞれが目指すUGCである「カクヨム」とは違って、「カクヨムネクスト」では編集者が、自分たちのつくりたい作品や自分たちの将来の読者のための作品を、仕込む能力を発揮できます。

そこから新しい潮流が生まれて、それが「カクヨム」に環流して行き詰まりを打破するような構造が理想です。

──では実際に「カクヨムネクスト」で、この1年の間に見えた盛り上がりがあれば教えてください。

松崎夕里 ニシキギ・カエデ先生が、『カードと猫と〈プレモン〉世界ニューゲーム』を2024年3月13日の連載開始から毎日、1日も欠かさず更新を続けていただいていて支えになっています。

ニシキギ・カエデ先生は、「カクヨム」で『ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~』の更新を続けながらですから、1日の相当な時間を使っていただいていると思います。

──他のプラットフォームで活躍していた作家さんや長くプロとして活躍してきた作家さんが来ると、読者の方も付いてきてくれます。

松崎夕里 3月でライトノベル雑誌雑誌の『ドラゴンマガジン』が休刊になったので、連載されていた賀東招二先生の『フルメタル・パニック! Family』が「カクヨムネクスト」に移籍します。

竹町先生の『スパイ教室』シリーズの短編も「ドラゴンマガジン」から「カクヨムネクスト」に移るので、ファンの方々にも新たなプラットフォームを利用していただけると嬉しいです。

10周年控える「カクヨム」 ホラーの隆盛と「魔法のiらんど」合併

──「カクヨム」も2016年のローンチから2026年で満10周年となります。先行するWeb小説サイトが大きなシェアを持っていた中での挑戦でしたが、改めてここまで振り返っていかがでしたか?

河野葉月 初期から比較的代表作に恵まれました。編集部の人たちがすごく良い作品を見つけてきてくれて、良い形で出版してくれたことが大きいです。

柞刈湯葉先生の『横浜駅SF』や紙城境介先生の『継母の連れ子が元カノだった』、2025年7月にアニメ化される七野りく先生の『公女殿下の家庭教師』など、「カクヨム」では正統派の異世界ファンタジーや現代ラブコメが当たるといった評価が確立されました。

また近年は、芦花公園先生の『ほねがらみー某所怪談レポートー』(※カクヨム連載時のタイトルは『骨疼き』)や背筋先生の『近畿地方のある場所について』など、ホラージャンルの盛り上がりも目覚ましく、カクヨムコンテストにも新しくホラー部門ができました。

──最近では、3月31日に終了するケータイ小説のパイオニア「魔法のiらんど」を合併し、「カクヨム」の中に1ジャンルとして創設するという再編も注目を集めました。

河野葉月 作家さんには今、作品のお引っ越しを呼びかけています(※取材は3月11日に実施)。

「カクヨム」と「魔法のiらんど」とでは、作家さんも作品も、読者の人たちの文化も大きく異なります。安心して活動してもらえるまでにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、「カクヨム」の中にしっかりと根付かせていきます。

松崎夕里 「カクヨムネクスト」でも、「魔法のiらんど」で人気の咲坂ゆあ先生、実和先生、南雲いちよう(ゆーり)先生の新連載をはじめました。ファンの方には読みに来ていただきたいですし、既存の「カクヨムネクスト」読者の方々には、ジャンルの多様性を示しながら読書の広がりを図っていけたらと思っています。

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