1969年創業の大手声優事務所・青二プロダクションと、AI音声プラットフォームサービスを提供するCoeFont(コエフォント)が10月7日、多言語化したAI音声の世界展開に向けてパートナーシップを締結したと発表した。
青二プロダクション所属声優10名が、AI音声プロジェクトに参画決定。『ドラゴンボール』孫悟空役の野沢雅子さんと、『HUNTER×HUNTER』アイザック=ネテロ役などの銀河万丈さんが発表されており、残りは後日発表される。
両者によるAI音声サービスは、主に音声アシスタントやロボット/音声ナビゲーション搭載製品へ提供。アニメや外国語映画の吹き替えなど「演技」の領域は対象外となる。
声優とAIを巡って、技術の悪用への警戒感が高まる中で、日本初の声優専門プロダクションである青二プロの動向に、大きな関心が集まりそうだ。
青二プロ所属声優の音声を、英語や中国語に変換
両者のグルーパル戦略パートナーシップ締結では、青二プロダクション所属声優の音声データを、CoeFontのAI音声技術で英語や中国語へ多言語化。
多言語に対応をした高品質なAI音声を、主に音声アシスタント(Amazon Alexa、Googleアシスタント)、ロボット/音声ナビゲーション搭載製品(Pepper、医療機器)へ提供していく。
発表にあたって、CoeFontのYouTubeチャンネルでは、野沢雅子さんの英語と中国語のAI音声が公開されている。
多言語化によって、グローバル市場における音声認識技術の普及や社会福祉に貢献。より多くのユーザーに、親しみのある声優の声でサービスを利用してもらうことを目指す。
アニメや外画吹き替えの「演技」はサービスの対象外
声優の声をAI音声化と聞くと、どうしても警戒感が強くなる。しかし今回の取り組みでCoeFont、は声優の“演技”に関わる領域には踏み込まないと明言。アニメや外国語映画の吹き替え等にはサービスを提供しない。
青二プロダクションの代表取締役社長・竹内健次郎さんは協業にあたってのコメントでその点を強調している。
「あくまでも声優の演技の領域ではない声の持つ魅力を演者の権利をしっかりと守りながら活用していくことを目的に、この度株式会社CoeFontと協業していく決断をいたしました」
CoeFontの代表取締役・早川尚吾さんも「声の権利を守りながら拡大するお手伝いをできることとなり、大変興奮しています」と、あくまでも演技以外の面での活用に向けて、意欲を語っている。
AIを悪用、声を無断で販売するなどが問題される
演技での活用を明確に否定する背景には、声優や俳優、アーティストの音声をAIに学習させる問題がある。
学習させたAIツールを使用して、特定の著名人の声を模倣。歌ってみたなどの動画を公開、あるいはキャラクターボイスを販売するといった動きが、この一年で大きく問題視された。
そういったAI技術の悪用に対して、警戒感が強まる一方で、ルールづくりも急務となっている状況だ。
『進撃の巨人』エレン・イェーガー役の声優・梶裕貴さんは2023年11月、NHK「クローズアップ現代」で生成AIへの怖さに言及。一方で、AI技術を活用して、自らの声をベースにした歌声合成ソフトのプロジェクトを始動させている。
そうした状況を踏まえ、CoeFontと青二プロダクションは、AI音声技術と声優の活動領域の棲み分けを適切に実施。
「AIの脅威にのみ注目するのではなく、演者の権利を適切に守りながら、魅力的な声を持つ方々の“声の可能性を高めるため”、第一歩を踏み出す必要があるという想いが一致し、協業を開始することといたしました」と説明した。
両者は協業を通じて得た知見を、日本国内外におけるAI音声技術と演者のより良い関係の構築に貢献するとしている。
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