アパレルメーカー・アダストリア社が、ファッション特化型メタバースプラットフォーム「StyMore(スタイモアー)」を4月10日(火)にリリースした。
同社はアパレルECサイト「.st(ドットエスティ)」を運営するアパレル業界大手企業。「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」「ハレ」等、数多のブランドを展開する。
2022年からバーチャルファッション事業にも参入。プラットフォームのローンチによってさらなる事業の拡大が見込まれる。
スマホだけで簡単にバーチャルファッションを楽しめるプラットフォームを目指す
アダストリアは2022年にメタバースプロジェクトを始動。
ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」の利用者をターゲットに、オリジナルアバターや、アバター向けのデジタルファッションアイテムを発売。特に「.st」で発売されているアパレルをデジタル化したアイテムが好評だ。
しかし、「VRChat」でアバターに衣服を着せるには、ゲームエンジンのUnityなどで編集作業を行う必要があり、専門的な知識や技術を要する。
近年は有志の開発ツール等によってその難易度は下がりつつあるが、未だに大きなハードルが存在するのが実情だ。
この課題に「StyMore」は斬り込む。様々なデジタルファッションアイテムが並ぶECサイトだが、一部アイテムはアバター作成アプリ「MakeAvatar」に対応。
一度購入すれば、スマートフォン上でゲームキャラクターをクリエイトする感覚で、着せ替えが可能で、そのままVRChatへアップロードできる。
「難易度の高い作業をスキップし、誰でも簡単にバーチャルファッションを楽しむことができる」というコンセプトだ。その一方、より自由度の高いファッションを楽しみたい人向けに、Unityでの作業が必要となる商品も平行して扱われるという。
サービスは4月10日よりスタート。サービスイン時点で、個人クリエイターのショップが24店舗、「.st」を含む企業系ショップが3店舗出店している。今後は「StyMore」限定アイテムの販売も計画されている。
3兆円市場の先駆者を目指す──記者会見で語られた展望
アダストリアは、4月10日に記者会見を実施。「StyMore」設立にあたり、その経緯と展望が語られた。
アダストリアのメタバースプロジェクト責任者・島田淳史さんによれば、この1年半でのデジタルアイテムの販売額は約1000万円、販売数は約3300点を記録。販売額が130万円以上に届いたヒット商品も生まれ、大きな手応えを感じていると語った。
また、独自に実施した調査によって、アバター関連商品の年間支出額につて「3万円以上」が52.6%、「10万円以上」が18.3%に届くことが明らかに。購入頻度も「月2~3回」が多く、これは現実の衣服を上回る頻度だ。
この調査結果と、これまでのデジタルアイテム販売数の76.6%がアバター向け衣服である状況から、島田氏は「メタバース内にも『着替える』需要がある」と推測。
2028年にはメタバース市場が3兆円に到達するという市場予測と重ね合わせて、今回の「StyMore」を開発するに至ったという。
「現時点では大勢の人が参加するカルチャーではないものの、2030年には大きく発展する可能性がある。その段階で参入するよりも、今から参入し、先駆者として取り組んでいきたい」と、マーケティング本部長の田中順一氏は展望を語った。
「小売りを超えた『ファッションプラットフォーマー』へ」というビジョンとともに、アダストリアの大きな挑戦が始まる。
過熱する、バーチャルファッション文化とその産業
バーチャルファッション文化は「VRChat」を中心に大きな盛り上がりを見せている。
アダストリア社以外にも「BEAMS」「chloma」「HATRA」「ANREALAGE」「ATSUSHI NAKASHIMA」など、様々なアパレルブランドが参入。さらに「EXTENSION CLOTHING」や「Melty Lily」など、個人クリエイターによるブランドも人気を博している。
現在の販売プラットフォームは、クリエイターEC「BOOTH」や、「バーチャルマーケット」主催のHIKKYによる「Vket Store」が主流。
しかし、2024年4月から「SUZURI」もバーチャルファッション領域の強化を宣言(参考)。複数企業の本格参戦によって、文化全体の加速が期待される。
クレジット:アダストリア ファッション特化型メタバースプラットフォーム発表会
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