セミに電気を流し「弾いてみた」メディアアートに賛否 その学術的な意義について

セミに電気を流し「弾いてみた」メディアアートに賛否 その学術的な意義について
セミに電気を流し「弾いてみた」メディアアートに賛否 その学術的な意義について

UnsplashAmos from Stockphotos.comが撮影した写真

セミに電気刺激を与え曲を演奏させるメディアアートが、YouTubeでにわかに注目を集めている。

「セミで弾いてみた」といったタイトルと、電極に繋がれたセミというビジュアル面でのインパクトからか、ボカロP・Kanariaさんの楽曲「酔いどれ知らず」を演奏したショート動画は、執筆現在700万回を超える再生回数を記録している。

投稿者の佃優河さんは、落合陽一准教授が主宰するデジタルネイチャー研究室に所属しているメディアアーティスト。

この記事では、佃優河さんの活動とともに、注目を集めたメディアアートの背景にある学術的テーマを併せて紹介する。

(※編集注)昆虫が苦手・嫌いな方はブラウザバックを推奨いたします。

メディアアーティスト・佃優河とは

佃優河さん/画像は公式サイトより

佃優河さんは1999年生まれ。福岡県出身。メディアアーティストとしては「BioPunk」という世界観を掲げ、コンピュータと生物を用いた作品を制作している。

ゴキブリを顔に貼り化粧に使うアート「COSMETIC ROACH」がCREATIVE HACK AWARD2019のファイナリストに選出され、2020年からは若手クリエイターのサポートを行うクマ財団から4期生として支援を受けていた。

“人間と生物の新たな関係性の探求”

佃優河さんは、自身の芸術活動のテーマを「コンピュータによって見えてくる人間と生物の新たな関係性の探求とイメージの具現化」と説明している(外部リンク)。

これまでに、セミの鳴き声を電気刺激で制御することによってカノンを演奏する「蝉-Canon」や、ゴキブリを群体制御することによって多彩な機能を備えたインターフェース「Calmbots」などを発表している。
佃優河さんの制作した「蝉-Canon」

「生物の電子制御」を研究 国際学会にも投稿

また、佃優河さんは、メディアアーティストとしての活動と並行して「生物の電子制御」に関する研究も行っている。

セミに関しては、電気刺激によって鳴き声を制御し、昆虫とコンピューターのハイブリッドスピーカーとして活用する方法を模索。

その内容を論文にまとめ、査読付きの国際会議にも投稿した(外部リンク)。

論文の中で佃優河さんは、スピーカーとしてのセミの有用性を提示。一般的なロボットと比較して、エネルギー効率、耐久性、敏捷性に優れた昆虫型コミュニケーションツールの実現可能性を見出した。

「将来的にはこのような昆虫によるコミュニケーションツールが、災害時などの緊急時の音声支援として活用されることが期待される」とも記している。

賛否ある「セミで弾いてみた」への反応

最も再生されている「酔いどれ知らず」の演奏動画
前述の通り「生物の電子制御」の関する試みを、メディアアートと研究の両側面から行ってきた佃優河さん。

今回の「セミで弾いてみた」の関連動画に関しては、その広がりがゆえか様々な反応が寄せられている。

セミに電極をつないで鳴き声を制御するという、未だかつて見たことのないことを平気でやってのける投稿者を面白がるコメントや、試みそのものを称賛する声が集まる一方で、セミへの負荷を案ずる意見や、生物を利用した作品への拒絶反応なども見られている。

こういったコメントに対し佃優河さんは、セミへの負荷への学術的な視点からの認識や電気刺激の基礎知識を提示すると同時に、「作品へ印象は多様であるべき」だという考えをコメント欄に残している。
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