レジェンド格ゲーマー梅原大吾のオーディション「俺を獲れ」波乱の現場レポ

手探りにすすむオーディション 明暗分かれる挑戦者たち

左からGameWith重藤優太さん、こく兄さん、梅原大吾さん、川村竜(ミートたけし)さん、COMP鈴木優太さん

そうしてスタートした『俺を獲れ』の前半オーディションは、7分という時間の中で、自己アピールをしつつ審査員に何を求めているかを挑戦者がプレゼン。最後に審査員(斧)に獲りたいかどうかの意志を確認するという流れとなっていた。

梅原さん含めた審査員がオーディション開催中から口にしていたことだが、「初めての試みとなったこのイベントをどのように進めていこうか?」という手探り感があり、特に序盤では審査側・挑戦者側のどちらにもそれは色濃く漂っていた。

左端が、一番手の樽江突撃さん

映えある挑戦者1番手は、YouTuberとして活動している樽江突撃さん。

冨樫義博氏による漫画『HUNTER×HUNTER』の休載が長引いていた時期に、「連載再開まで一日一千回(一万回)感謝の正拳突き」企画をしていた方、と言えばピンと来る読者も多いだろう。
ハンターハンター連載再開まで一日一万回感謝の正拳突き
そんな樽江さんはこれまでの自身の経歴などをアピールするも、審査員の興味をそこまで引くことができなかった。こうしたオーディションにおいて1人目は場の空気感が定まっていないため往々にして不利に働くことが多く、結果として樽江さんは斧を獲得できず終了に。

ただ、最初のグループとして登場した5名は、“糖尿病を患うギャンブル狂”“アボカド好きなラッパー”“梅原好きでほぼニートの配信者”“福沢諭吉を賛美するシンガー”など、かなりユニークな面々が集まっていた。 1発目に登場したものの、審査員から斧をもらえなかった樽江さんに話を聞くと、「1発目でかなり緊張していた。ただ知名度で他の5人には負けないと思ってましたし、斧も5本とろうと思ってました」と振り返る。

「結果的に斧をひとつも獲れなかったのは非常に悔しい」
「"この企画であなたたちとやりたいです!"という部分を押し出せなかった。応援してくれた人たち、自分の配信を見てくれているリスナーたちに申し訳ない」(樽江突撃さん)

苦々しい表情で答えていた。

見えてきた合格ライン 実績ある面々も

審査員からの興味を惹き、斧を複数獲得する挑戦者たち。1グループ目を終えて2グループ目・3グループ目と進むにつれて、見えづらかった合格ラインが少しずつハッキリとしていく。

研究者として格ゲーを研究していくので協力してほしい
自分はイラストを制作しているのでここぞの場面で起用してほしい
格ゲーを原作にした作品づくりに協力してほしい 具体的な目標と強みをアピールする者たち、作品を生みだせるような手に職がある挑戦者たちが次々と現れ、審査員5人は次々と好反応を示していったのだ。

後半になるにつれてかなりのキャリアや実績を積んでいる挑戦者が続々と登場し、『Fate/Grand Order』の概念礼装やグッズイラストなどに携わってきたイラストレーター・霧月さん、テレビアニメ化まで進んでいった人気ライトノベル作品『魔王学院の不適合者』の原作者・さんらが登場。

同作品を知っている筆者として、思わず「マジかよ」と口走ってしまう面々だった。 そんななかで印象的だったのは、クローバーさんのオーディションだ。その語り口はまさに企画のプレゼンテーションそのもので、「自分の格ゲー研究に協力してほしい」と語る内容は、後日梅原さんのYouTubeチャンネルにも切り抜きがアップされるほど。

「研究のためのインタビューに協力してほしい!」とクローバーさんが端的な主張を述べると、「それくらいならぜひ」と名乗り出た審査員は4人にのぼった。
【俺を獲れ】普段はVtuberの賢人へウメハラが見せた最速の回答「この企画の攻略もして…」
クローバーさんは国立大学所属の若手研究者であり、それまでの発表やプレゼンテーションがここに活きた格好となった。プレゼン後、KAI-YOUの取材に応じてくれた。

「温かく迎え入れてくれてとてもうれしかったです。時間がない中でしたが、できることは全部やろうと。自分が参加しているコミュニティの皆がすごく協力してくれて、いろいろな指摘をしてくれたんです。彼らのおかげで、良い時間をつくれたなと感謝しています」(クローバーさん)

個性的な「俺を獲れ」挑戦者たち その才能を買われたのか?

オーディションに挑戦してきた人たちを2つのタイプにザックリとわければ、「自分の個性・魅力を使ってくれ」タイプと「自分の持ち込んだコンテンツを使ってくれ」タイプであろう。

個人のタレントのみで勝負する挑戦者への反応はやや厳しく、コンテンツ制作者・クリエイタータイプの挑戦者に審査員の注目が集まりやすかったと言える。 イベント後、梅原さんに「印象的だった挑戦者はいましたか?」と尋ねたところ、そねあいぼんさんや村井智さんといったイラストや音楽といった分野の挑戦者をあげていた。彼らはそれまでの実績や当日持ってきた制作物を活かし、評価を得ていたわけだ。

短い時間のなかでどのようなアピールをするか? プレゼン力が試される中で、何かひとつでも作品があれば話題のとっかかりになるし、そもそも「作品≒これまでの成果≒自分の力」として審査員にとっても視聴者にとっても受け入れやすい。

審査員(斧)の言葉で印象的だったのは、「あなたのやりたいことが、我々にどんな利益をもたらすか?」という言葉だ。

自分はどのような部分を特長としているか? どのようなコンテンツを提供するか? という部分を挑戦者はアピールするものの、5人が終始気にしていたのは「じゃあ我々審査員に、どのような利益をもたらすのか?」という部分だった。

定番の格ゲーものまねで笑いをさらったお笑いコンビ・NOモーション。

面白そうだと思った審査員がその挑戦者を獲得するという企画の性質上、審査員側の需要を満たすこともまた重要であったのだ。

開催の2日前に合格発表という進行だったため、挑戦者側もクリティカルな答えを用意するのはなかなか難しかっただろう。

ただ、そこに何らかのアンサーを用意していた人は、やはり審査側の反応が良かった。実際「俺を獲れ」後に、梅原さんの専属アドバイザーとして雇われる人物まで現れた。
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