チップチューンって何? ゲーム音楽の魅力って? サカモト教授とsasakure.UKピコピコ対談

  • 0

ニコニコ動画で評価を受けたクリエイターの葛藤

サカモト教授さん

サカモト教授 僕はニコニコ動画に「ファミコン元気玉」や「スーファミ元気玉」がターニングポイントになって、レコード会社と契約してライブやテレビでの活動をするところまできたんですけど、ふと外からニコニコ動画の文化を見た時に危機感を覚えたんですよ。

sasakure.UK わかります。クローズドな雰囲気を感じますよね。

サカモト教授 そうそう。ニコニコ動画はとても規模が大きくていい場所だけど、クローズドな身内ノリもあるんだってことに気づいた時に「ここにクリエイターとして縛られることはリスキー」だと思ったんです。それは、もっとポップな場所や、世界にも出ていきたい時に「ニコニコ動画に投稿して生活をしています」という見えかたがよくないこともあると思ったんですよ。

そこから、ニコニコ動画だけっていうカラーがでないように意識し始めて、ライブだったりラジオやテレビだったりに積極的に出るようになりました。なるべくもっと広い、色んな世界で活躍したいという気持ちが強くなってきたところでしたし。

sasakure.UKさん

sasakure.UK 実は、僕はニュートラルな視点でサカモトさんを見た時に、キャラクターもそうですけど、、音楽性も広がってきたようにように感じていたんです。それは、そこが要因なのかなと。

僕ってみなさんからボーカロイド楽曲のイメージが強いかもしれないんですけど、もともとインストの楽曲をつくってきた人間なんですよね。

だから僕もサカモトさんのようにボーカロイドだけではない部分を伝えようと、時には違うプラットフォームをつかったり、歌手のかたとのコラボも積極的にしているところがあります。

サカモト教授 自分をプロモーションするツールっていうのはたくさんあって、僕らにとってニコニコ動画はあくまで、その1つなんだよね。

みんなの思い出を引き出すアレンジテクニック

sasakure.UK 実はサカモトさんに会ったら聞こうと思っていたことがあって。サカモトさんがゲーム音楽を演奏したりアレンジする時に、一番大変なことってなんですか?

サカモト教授 現在はゲームのハードウェアで生音が鳴らせるんですけど、僕が演奏するゲームの音楽はそれ以前の楽曲が多いんですね。なので、そもそも演奏されることを想定してつくられていなくて

昔のゲームは1度に3つの音しか鳴らせない時代もあったので、メロディが途切れて音がとびまくることも多いですし、演奏するのがすごく難しいんです。それに音数も少ないですからミスはすぐバレるし、けっこうシビアな世界なんですよ(笑)。

アレンジについては、ゲーム音楽のファンは原曲がシーン・キャラクター・音楽のセットで印象に残っていると思うので、音楽の印象が原曲と違うと思い出が壊れてしまう。なので、原曲の印象と離れてしまわないようにキーはなるべくいじらず、アレンジもひかえめにしています。

sasakure.UK ちなみに、これまで演奏してきたなかで一番難しかった曲ってなんですか?

サカモト教授 ファミコンでいったら、「ドラゴンクエスト」シリーズの戦闘曲は難易度が高いですね。たとえば、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』ラスボスのゾーマ戦のBGMとか。

sasakure.UK 高速でずっと音が鳴りっぱなしですもんね。僕のイメージ通り、難しそうなゾーマでよかったなって個人的には思いました(笑)。

サカモト教授 大人になると、なかなか腰を据えてゲームをやる機会っていうのもなくなってきて。僕が演奏する曲はだいたい思い出から引っ張ってくるんですよ。ササクレさんはいまでもゲームをやったりするんですか?

sasakure.UK 僕はいまでも『beatmania』シリーズをプレイしていますね。サンプリングされた音をならすサンプラーって機材があるんですけど、自分のライブでサンプラーを演奏できるのは『beatmaniaのおかげと言っていいぐらい。

サカモト教授 僕も初代からやって、『beatmania III』で鍵盤が7つになったところで辞めちゃいましたね。

sasakure.UK あれで敷居がちょっと高くなりましたよね。僕は念願叶って、『beatmania IIDX 21 SPADA』に「Atröpøs」という楽曲で参加させてもらったことがあるんですけど、ちなみにあの楽曲っていうのは『ファイナルファンタジーXIV』などで有名な浜渦正志さんの影響が強くて。

トンデモ未来空奏図 [Preview](6:35~「Atröpøs」)

すごく大好きで、尊敬しているゲーム音楽の作曲家の1人なんですけど、あれだけキャッチーな音楽をつくれるのに、難解なビートだったり、アレンジも打ち込みから生音まで幅広く制作されていて。

サカモト教授 ササクレさんってホントに独特な曲をつくるなと思っていたんですよ、ビートや音の使いかたが特に。「こんなの俺にはできない」って聞いてたんですけど、話を聞くとsasakure.UKサウンドには浜渦さんのエッセンスが垣間見れるなあ。

sasakure.UK わぁ~、嬉しいなぁ。まだお会いしたことないので、いつか直接想いを伝えたいですね!
【次のページ】「レトロゲームには音色を追求するカルチャーがあった」
1
2
3
4
この記事どう思う?

この記事どう思う?

関連キーフレーズ

サカモト教授

ゲームミュージック演奏家/ミュージシャン

頭に乗せたファミコンにカセットをさすとそのゲームの曲を奏でてくれるファミコンの中の人。京都大学出身。4歳から始めたクラシックピアノの影響で絶対音感が備わっており、どんな曲も音を聴けばその場でカヴァーできる。ゲーム曲のレパートリーは1000曲以上。最近では、アイドルの「さくら学院」クッキング部ミニパティへの楽曲提供/プロデュース、幕張メッセで行われた「ニコニコ超パーティーII」へのライブ出演、「ニコニコ動画ユーザーチャンネル」第1弾のメンバーに選ばれるなど、勢力的に活動している。
https://twitter.com/pskmt

sasakure.UK

ミュージックコンポーザー/アレンジャー

幼少時代、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に、学生時代は男性合唱、文学作品に多大な影響を受け、その後、独学で音楽制作を始める。寓話のように物語の中に織り込められたメッセージ性を持つ歌詞と、緻密に構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。音楽のみならず映像やデザインも手掛けるマルチな才能が様々なクリエイターから高く評価されている。
https://twitter.com/sasakure_UK

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。