TikTokで世界的ミームに セレブに曲を送りつけて成功したバンド AJRをご存知?

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いいところを挙げるとキリがないほど素晴らしい「World's Smallest Violin」

これほどの盛り上がりが起こったのには、楽曲の約20秒に及ぶクライマックス部分がTikTokの動画の尺としてベストだったり、盛り上がりが最高潮に至るサウンド構成だったりと、いろいろな要因がプラスに作用したためだろうと推察できる。

So let me play my violin for you(だから頼む、僕のこのバイオリンを聴いてくれよ)》という歌詞も人生の振り返りを暗喩していたり……考え始めればきりがないが、それにしても素晴らしい。

当然、TikTokでこの楽曲の一部分を聴いて興味を抱いた人々は正式な音源に行き着く訳だが、よく聴いてみると全体としての完成度があまりに高いことにも気付くはずだ。

まるで友人間の遊びのようにユニゾンで歌う開幕から、いわゆるギター・ベース・ドラムというロックバンド然とした構成とは違う音像に続き、果てはトランペットやバイオリン、木琴といったサウンドをサンプリングパッドで入れ込む流れは基本的なバンドではまず行われないものだ。

言わずもがな、ラストに掛けての大爆走やボーカル陣の掛け合いなども興奮を高める重要な点であり、陳腐な表現をしてしまえば「何か自分だけが知ってる曲見つけちゃった!」な感動さえも押し寄せてくる。

明るいサウンドと裏腹に、悲しみを描いた抒情的な歌詞

歌詞に関しても、この楽曲は実に叙情的でグッとくる。

まずAメロでは、祖父が第二次世界大戦を生き抜いたり、ひいおじいさんが消防士でたくさんの命を救ってきた事実を述べながらも、対する自分は学校を中退してしまった弱者だと卑下。

以降の「オーマイガー」と歌われる印象的なコーラスは、そんな自分に対してのものだ。

サビに差し掛かった頃にはそうしたネガティブな感情は更に肥大化してしまい「誰も話を聞かないのならこの場で騒いでしまいそう」、「だから僕の愚痴を聞いてほしいんだ」と自暴自棄になってしまう。

歌詞にもセラピストが登場しているため、おそらくこの時点で、歌われている男は精神的に何らかの疾患を患ってしまっている状態なのだろう。

2番では、自分との比較対象が先祖から友人へと切り替わる。

その友人は他の人たちと悪いことをしながら毎日楽しそうに暮らしているのだが、そんな友人を見ながら自分は「悪いことして何が楽しいんだろう?」と疑問に思う。

ただ楽しそうなのは圧倒的に友人の方で、そのため自分は「みんな僕の方を見てかわいそうに思ってるんじゃないか」と思考を悪い方へ悪い方へと向かわせてしまう。

中でも「でもこんな人もいるんだよ」とするサビ前の歌詞は自己肯定のようでも、ある種の諦めにも取れる悲しい部分だ。

そして、物語はアップテンポになるクライマックスへ。

世の中には自分より辛い人もいると感じているが今が辛すぎる。だから暴れて走って叫んで、心を落ち着かせようとする。もしかしたらそういった行動は自分を死に向かわせているのかもしれないと思い描く主人公。

でもそうした狂騒の果てにもし前向きになれたら、ヘネシー(ウイスキーの一種)を飲んでハッピーになって前向きに生きられるんじゃないか。何より、あなたなら救ってくれるかもしれない。だから頼む、僕のこのバイオリンを聴いてくれ。

……長々と記してしまったが、以上が「World's Smallest Violin」の私なりの解釈である。

一見明るい楽曲のようでいて、その実リアルの悲しみが現れている表裏一体感。是非ともこの歌詞を踏まえつつ、何度も繰り返し聴いてみてほしいところだ。

日本でも注目を集めること間違いなしなAJR

TikTokを経ての思わぬ躍進。唯一無二のサウンドメイク。深堀りすればするほど心を掴まれる歌詞。

突如として日の目を浴びたAJRの「World's Smallest Violin」には、必然的と言えるほど、ヒットに繋がる要因が込められていた。

海外においてロックバンドの最高峰に駆け上がる中でも、SNS上で新たなバズを生み出そうと画策するAJR。

つい先日も新曲の一部がYouTubeショートで公開されたが、こちらも爆笑する声が入っていたりキャッチーだったりと、またも注目を集めそうな予感がする。

今後近いうちに日本でも台風の目となること請け合いなAJR。触れるのは彼らが新たなバズを生み出す前の今しかない!
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