「エヴァ」「FF」……数々の経験が結実したラスボス戦
──今回のプロジェクトの制作にあたり、これまで関わってきた作品の経験で活きたことがあれば教えてください。吉武薫 僕はこの3年くらい『シン・エヴァンゲリオン劇場版』しかやっていなかったので、ほぼ『エヴァ』しか経験がないんですけど(笑)。
「2秒でやりたいことが全部伝わるくらいの画作りをしないといけない」と強く意識させられました。
今回もその経験を活かして、一枚画の中でバランスを整えてかっこよくハマるように、トリッキーなことはしないように気をつけています。
史耕 僕の場合、ずっと仲良くさせていただいた吉武さんをはじめ、これまで培ってきたクリエイターの方々との繋がりを、この企画に結びつけることができて嬉しかったです。
映像制作チームとして参加してくれたクリエイターは、これまで一緒にお仕事した方が多く、前の案件でやれなかったことや反省を今回ぶつけさせてもらった部分もあります。 柴田徹也 僕は無意識の内に今までやってきたことが入ってきてると思うんですよね。
例えば映像を見たときに「こんな音楽が合いそうだな」「こんなテンションがいいな」とイメージが浮かび、基本そこで音楽の方向性が決まるんですよ。それは自分で気づかないうちに、今までやってきた仕事が自分の血と肉になっているからできることだと思います。
先日、ちょっと面白い出来事があって、会社(ユニークノート)にいる大学を卒業したばかりのクリエイターに、研修として砂漠のシーンで使うゲームBGMをつくってもらったんです。
そうしたら本当にアラビアンな曲を持ってきたんです。映画だったらそういう曲でいいのかもしれないけど、ゲームではそういう音楽は求められていない。
音階や楽器はアラビア風でもアレンジは現代風にするなど、ゲームならではのデフォルメをしないと、みんなが期待している砂漠の「説明」にならないからです。自分がそうしたことがわかるのは、今までの経験があるからだと思います。それが今回も活きたと思いますね。
リモートワーク時代の創作に高速回線は不可欠
──今回のプロジェクトは高速回線であるNURO 光の企画でもあります。近年、リモートワークや遠隔での共作が当たり前となっていますが、クリエイティブにおける回線速度の重要性を教えてください。吉武薫 忖度なしに、高速回線があるおかげで映像のクオリティーを上げられるといっても過言ではないと思います(笑)。というのも、ストレスなくアップロードもダウンロードもできることで、可能な修正回数もその分増えるからです。
史耕 それは大いにありますね。
吉武薫 修正をあと1回か2回、できるかできないかの瀬戸際のところで、アップロードやダウンロードに時間を食われて「できませんでした」ってことも全然ありえますからね。
映像制作においては、いろんな素材が入ったパッケージを渡して、作業を引き継いでもらうことが多いんです。回線速度なしではそうした連携は厳しいですね。
また、そのPCだけにしか入っていないアプリを使うため、リモート環境にあるマシンを遠隔で動かす必要があるときも、最近は回線速度が速くなったのであまり遅延を感じずに作業ができてしまいます。そうした点からも、自分はかなり高速回線の恩恵を受けているんじゃないかなと思っています。 史耕 僕は制作進行をすることもあるので、アップロードやダウンロードの時間で納品が危うくなる経験を何度もしてきています。
なのでできることなら、今回のNURO 光さんのPRによって高速回線がさらに普及してくれたら本当に助かります(笑)。回線速度が安定している人だとありがたいので……。
──実感が込もっていますね(笑)。
吉武薫 データがあまりにも大きければ仕方ないときもあるんですけど、もはや「アップロード待ちです」みたいなのは、高速回線のおかげでほとんどないと思いますね。仮にあったとしても1〜2分くらい。
逆に、クリエイター側からすると「今アップロードしてるんで」みたいな嘘がつけなくなったことでもありますが……(笑)。 ──新型コロナウイルスの感染症拡大以降、大型タイトルでもリモート作業は当たり前となっているようですし、回線速度もひとつの仕事スキルというか最低条件となりつつありますね。
吉武薫 そうですね。コロナがなかったとしても、海外とデータのやり取りをすることはよくあるので、回線で足を引っ張られるのはデジタルやインターネットの恩恵を潰しちゃうことになると思います。
リモートで満足な作業ができないクリエイターは、今の時代だいぶ遅れてる印象になってしまうかもしれないですね。
──音楽制作においてはどうでしょう?
柴田徹也 今の時代だと、仕事中「この音がほしい」「手持ちの音じゃ気に入らない」と思ったとき、ネットでデモを探してソフトウェア音源やサンプル音源をすぐ購入できるんですよね。
パッケージ版とダウンロード版が選べるので、家を出て買いに行く必要すらない。そのダウンロードも、昔は一晩待っても終わらないのが当たり前だったんですが、今じゃ2時間もあれば完了してしまう。
今つくりたい音楽のために、音源を買ってすぐ使える環境になったのはありがたいですね。
2022年、自主制作時代のクリエイター像
──回線速度のみならず、ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークなどあらゆる面で技術が発展したことで、『プロメシアン・ナイト』のような自主制作の作品が次々と生み出される時代になりました。クリエイターとしてこの流れをどう見ていますか?史耕 CG制作のワークフローだけ見ても、BlenderやUnitiy、Unreal EngineといったCG制作ソフトが手軽に使えるようになって、ユーザーが増えているのは実感しています。
これまではCGをつくるための機材やソフトは値段が高く、レンダリングや動画の書き出しにもものすごい時間がかかるのがネックでしたが、そうした障壁が技術革新によって取り払われましたね。
柴田徹也 音楽も同様にとっかかりのハードルはすごく下がっていますね。Macを買って来れば、最初から音楽制作ソフト・GarageBandが入っているし、廉価で上位の音楽制作ソフトが買えるようになりました。
昔は音楽制作ソフトを動かして思ったとおり音を出すのにも技術的な知識や楽器の知識が必要だったのですが、今は普通に触ってすぐに音が鳴らせます。
さらに多くのソフトウェアがサブスク型になってきたことから、初期費用も安く済むようになりました。
新しい音源を買えば買うほど、楽器の奏法(アーティキュレーション)が充実する。昔のように細かい工夫に時間を割かずとも、人が演奏したかのように打ち込めるようになっています。
吉武薫 CGも音楽と同様に、一昔前まではつくりたいイメージがあったとしても、プログラミングできないとダメだったり、ソフトウェア的な都合を把握してないとグラフィックがきれいに出せなかったりしたんです。
でも、この5年ぐらいで直感的に触れるソフトが増えてきて、たぶんプロよりもアマチュアの方が多い状況になりました。
──つくりたいイメージと、実作業の乖離が少なくなってきたのはとてもいいことですね。
吉武薫 それと同時に、個人でつくる時代が来ただけでなく、チームでつくる時代も一緒にやってきた気がしています。
吉武薫 3人くらいのチームというか、会社未満の選択肢が膨大に増えて、みんなにチャンスが増えたのを感じますね。実際、今回の企画では、会社などは通さず直接個人で依頼をいただいたので。自主制作アニメ「プロメシアン・ナイト」を現在制作中です。国内外のクリエイターが集まって日々制作に取り組んでおります。2022年末公開を目指しています。
— 吉武 薫。 (@kaoruinfinit02) January 28, 2022
We are currently working on an independent animation, "Promethean Knight". 2022.#indie_anime #bnpr #b3d pic.twitter.com/uwPdk3T5zx
例えば、庵野秀明さんってたぶん一生映画監督を辞めないと思うんですよね。つまり、庵野さんの席は基本的に空くことはない。ゲームも同じで、有名な作品のディレクターやプロデューサーがいまだに第一線で活躍されている。
その上で、その席を目指して長年経験を積み重ねている人たちがいる。その歴戦の猛者たちと渡りあっていくのは大変ですよ。
だからそれよりも、「自分たちは自分たちでやりたいことを表現する」というのが時代の流れじゃないでしょうか。今はYouTubeなどで作品を見てくれる人もいますからね。すごくいい時代になっていると思いますよ。
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『ラスボスとの対戦を味わうBGM』『睡眠中に脳を活性化させるBGM』といったNURO 光が提供した作業BGMについて、オモコロ、KAI-YOU、ねとらぼの3媒体で紹介する横断企画を実施!今回、新進気鋭と重鎮が交差する高速作業用BGMを配信したNURO 光では、新規お申し込み限定でPlayStation®5を月額990円(税込)からリースできるオプションも受付中! 詳細は下記からどうぞ!
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吉武薫
自主制作プロジェクト・ROLL project代表。CGアニメーション制作およびディレクションを行う。
商業CGアニメなどの演出やコンテの仕事をする傍ら、本格的な個人フィルムのアニメ『プロメシアン・ナイト』を制作中。
史耕
WACHAJACK/KASSEN、その他スタジオやチームで活動するディレクター、プロデューサー。
面白い人たちと良いものをつくることが大好きです!
柴田徹也
関西大学法学部卒。
幼少よりピアノを始め、高校からロック・ジャズを学ぶ。
大学卒業後に株式会社カプコンにサウンドとして入社。
2009年に作曲家の青木佳乃と共に音楽制作会社のユニークノートを設立。
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