アーティスト・まふまふさんが2021年12月31日、歌い手出身者として初めて『第72回NHK紅白歌合戦』に出場した。
同年11月19日の出場発表時、ファンは大きな驚きと喜びに包まれた一方、見慣れぬその名に困惑した人も少なくなかったかもしれない。「まふまふって誰? 歌い手って何?」と。
歌い手とは、既存曲のカバーやオリジナル曲を動画サイトに投稿するボーカリストの総称。ニコニコ動画におけるVOCALOID(ボーカロイド)曲のカバーを中心とした「歌ってみた」作品が発端であり、もとは趣味の延長であった。
だが、根強い人気を獲得した歌い手たちが、CDをリリースしたり、大規模なライブを開催したり、タイアップされたりすることで、徐々にプロのアーティストの一角として名を連ねるようになっていった。まふまふさんはその道を切り拓いてきた1人だ。
熱狂的なファンが多数存在、しかし世の中にはまだあまり認知されていない歌い手。今回、まふまふさんの出場を機に関心を持った人に向けて、今、熱い歌い手たちを紹介したい。
文:満島エリオ 編集:都築陵佑
命に嫌われている。/まふまふ【歌ってみた】
2010年から「歌ってみた」動画を投稿しはじめ、カバーだけでなく自ら作詞・作曲もこなし、そのいずれでも高い評価を受けているまふまふさん。2021年5月には史上初となる東京ドームでの無観客・無料の配信ライブを開催したと言えば、これまで彼を知らなかった人も只者でないとわかるだろう。
ボーカリスト・まふまふの特徴として真っ先に挙げられるのは、驚くほどの高音域に達するハイトーンボイス。そして、痛みや苦しみを慟哭するように歌い上げ、聴く者に共鳴させる圧倒的な表現力だ。
今回『NHK紅白歌合戦』で歌った「命に嫌われている。」は、数々の歌い手にカバーされてきたボカロP・カンザキイオリさんの代表作であり、まふまふさんのカバーは1億回再生を突破。「生きること」を強く見つめなおすような楽曲の強いメッセージを乗せた圧倒の歌唱、一聴の価値があるはずだ。【MV】ユーリカ /そらる(ドラマ「ゆうべはお楽しみでしたね」OP曲)
まふまふさんの次にご紹介したいのが、そらるさん。
落ち着いた柔らかな歌声が心地よく、優しい声色をしっかりと聴かせるようなバラードとの相性は特に抜群。カバーだけでなく自身でも作詞・作曲も行なっており、物語性のあるファンタジックな世界観を紡ぎ出すのが特徴だ。[ポケットモンスターOP]1・2・3/After the Rain(そらる×まふまふ)
まふまふさんと一緒にAfter the Rainというユニットを組んでおり、アニメ『ポケットモンスター』のOP主題歌「1・2・3」を担当するなど、ソロ・ユニットともにメジャーシーンに食い込む活躍をしている。歌い手の中でも活動歴が長く、2021年7月に13周年を迎えた、界隈の先輩的存在でもある。
【Ado】うっせぇわ
「うっせぇわ」で一世を風靡し、2021年の音楽シーンの顔とも呼べる存在となったAdoさんもまた歌い手出身。
「歌ってみた」動画の投稿で活動を開始し、ボカロP・syudouさんが書き下ろしたメジャーデビュー曲「うっせぇわ」がスマッシュヒットとなって、一躍音楽シーンの中心へと躍り出た。どんな曲も呑み込んでしまう圧倒的なパワーの歌声は、「歌ってみた」作品でも唯一無二の存在感を放つ。
「うっせえわ」以降もすりぃさんやDECO*27さん、Gigaさんら有名ボカロPたちと組み、「踊」や「レディメイド」などパンチ力の強い曲を連続して発表し、その実力を確たるものとして示し続けてきた。今一番勢いのある歌い手だろう。【Ado】ボッカデラベリタ 歌いました
yama - 春を告げる (Official Video)
Adoさんにおける「うっせぇわ」のように、1曲でスターダムを駆け上がったのもう一人がyamaさんだ。「歌ってみた」動画の投稿やロックバンド・BINのメンバーとして活動していたyamaさんが、初めて自身の名義で出したのが「春を告げる」であり、その名を一気に知らしめる曲となった。
中性的で伸びやかなyamaさんの歌声は、Adoさんと逆にどんな曲にも寄り添うように響く。メジャーデビュー直後からタイアップが立て続いた上、1stアルバム『the meaning of life』を発売、川谷絵音さんらがプロデュースを手がけたトリプルシングル『Oz./世界は美しいはずなんだ/スモーキーヒロイン』を発売するなど、目覚ましい展開を見せ続けている。2022年はさらなる飛躍が予想される。yama『Oz.』MV
かいしんのいちげき! / 天月-あまつき-【オリジナル】
甘酸っぱい青春ソングを歌わせるならこの人、天月(あまつき)さんだ。
少年らしさを残した爽やかな声色を持つ天月さん。自身が作詞・作曲するオリジナル曲もピュアで多幸感のある楽曲が多く、武器を最大限に活かした「かいしんのいちげき!」は4000万回再生を突破している。
さらに他アーティストへの楽曲提供も行っており、作詞・作曲家としてのポテンシャルを伸ばしつつ、声優活動や朗読劇など演劇方面への進出も進んでいる。【96猫】ブリキノダンスを歌ってみた
【96猫&天月】お願いマッスル を歌ってみた
少年ボイスにセクシーなお姉さんボイス、力強いハスキーボイスからポップなキュートボイスまで、変幻自在な七色の声色の持ち主。楽曲ごとに大きく印象を変える多彩さには驚かされるはず。「本当に同じ人!?」と思わず疑いたくなるほどの強烈な落差をぜひ味わってみてほしい。
歌唱だけでなく、曲中のちょっとした小芝居の上手さも見事なもの。96猫さんは、声色の引き出しの多さと表現力を活かして声優活動も行なっている。そして、そんな「なんでもござれ」な器用さの反面、素になってしゃべるときは無邪気で元気いっぱいで、そのギャップにもキュンとさせられる。ヴァンパイア 歌ってみた 【あらき×nqrse×めいちゃん】
数多の歌い手の中でも独自の立ち位置を確立しているのがNqrse(なるせ)さん。その最大の武器は、なんといっても「自分でリリックが書けて歌えるラッパー」であること。ピンクのゆるふわヘアがかわいらしいYouTubeやTwitterのアイコンのイメージとは裏腹に、骨太の声でゴリゴリにフロウをかますギャップがたまらない。
個人名義の楽曲も出しているほか、他の歌い手と組んでラッパーとして楽曲に参加することが多く、Nqrseさんが書き下ろしリリックでラップアレンジされた「歌ってみた」動画は他には出せないオリジナリティを発揮する。「歌ってみた」のアレンジの幅を圧倒的に広げてくれる存在だ。【MV】FAITH / luz
それでいて本人は至って天然で、おとぼけエピソードを挙げればキリがない。歌で気になった人はぜひ、ゲーム実況なども併せて見て、素のluzさんとのギャップを味わってみてほしい。
ライブイベント「XYZ TOUR」を主催し、そこに出演する歌い手を集めたユニットでオリジナル楽曲を制作するなど、オーガナイザーとしての手腕も発揮している。【MV】Finale/XYZ
【MV】シル・ヴ・プレジデント/P丸様。【大統領になったらね!】
“だ・だ・だ・大統領になったらね”という歌詞とキャッチーなメロディを、どこかで耳にしたことがあるのではないだろうか。TikTokで爆発的な人気を獲得した「シル・ヴ・プレジデント」だ。
P丸様。のとびきり元気で可愛らしい声はインパクト大で、一度聴いたら忘れないはず。
音楽だけでなく、自らイラストを描き、複数キャラにアテレコし編集したアニメを公開しており、そちらでも再生数を大きく伸ばしている。マルチな才能の持ち主で、本人曰くその肩書きは“マルチエンターテイナー”。約2年間ありがとうございました!!【ゆるふわ】【夏休み超総集編!】
花や、花/浦島坂田船
ソロではなくグループで活動する歌い手も存在している。その中から紹介したいのが浦島坂田船だ。もともとそれぞれが歌い手、配信者として活動していたうらたぬきさん、志麻さん、となりの坂田さん、センラさんの4人からなる歌い手ユニットで、ユニット名も4人の名前から取られている。
オリジナル曲とカバー曲の両輪で活動しており、セクシーさ全開の色気のある楽曲からはつらつとしたアイドルソング、コミカルな楽曲まで、幅広い音楽が楽しめるのも彼らの魅力。それを実現したのは、それぞれ違ったテイストでアイデンティティーを確立してきた4人が組んだからこその化学反応と言えるだろう。
『浦島坂田船のげつようび』という毎週配信のツイキャスや、YouTubeで実写動画が定期的に公開されており、メンバー同士のかけあいを楽しめるのもユニットならではだ。【浦島坂田船】なにやってもうまくいかない【歌ってみた】
莉犬さん、ジェルさん、さとみさん、るぅとさん、ころんさん、ななもり。さんの6人からなるユニット。こちらもそれぞれ単独で「歌ってみた」動画やゲーム実況を行いつつ、ユニットとしてオリジナル曲を出したり、ゲーム実況を行ったり、実写動画で企画を行ったりと幅広く活動している。
エンタメ性が高く、音楽、ゲーム、トーク、アニメなどいろいろな角度から楽しむことができ、コンテンツ量が多いところも沼が深いポイント。音楽面では、ユニット名通り、代表曲には王子様然とした多幸感のある曲が揃っていて、コミカルなだけでなくかっこいいところもバッチリ見せてくれる。【MV】大好きになればいいんじゃない?/すとぷり【HoneyWorks】
同年11月19日の出場発表時、ファンは大きな驚きと喜びに包まれた一方、見慣れぬその名に困惑した人も少なくなかったかもしれない。「まふまふって誰? 歌い手って何?」と。
歌い手とは、既存曲のカバーやオリジナル曲を動画サイトに投稿するボーカリストの総称。ニコニコ動画におけるVOCALOID(ボーカロイド)曲のカバーを中心とした「歌ってみた」作品が発端であり、もとは趣味の延長であった。
だが、根強い人気を獲得した歌い手たちが、CDをリリースしたり、大規模なライブを開催したり、タイアップされたりすることで、徐々にプロのアーティストの一角として名を連ねるようになっていった。まふまふさんはその道を切り拓いてきた1人だ。
熱狂的なファンが多数存在、しかし世の中にはまだあまり認知されていない歌い手。今回、まふまふさんの出場を機に関心を持った人に向けて、今、熱い歌い手たちを紹介したい。
文:満島エリオ 編集:都築陵佑
目次
まふまふ
ボーカリスト・まふまふの特徴として真っ先に挙げられるのは、驚くほどの高音域に達するハイトーンボイス。そして、痛みや苦しみを慟哭するように歌い上げ、聴く者に共鳴させる圧倒的な表現力だ。
今回『NHK紅白歌合戦』で歌った「命に嫌われている。」は、数々の歌い手にカバーされてきたボカロP・カンザキイオリさんの代表作であり、まふまふさんのカバーは1億回再生を突破。「生きること」を強く見つめなおすような楽曲の強いメッセージを乗せた圧倒の歌唱、一聴の価値があるはずだ。
そらる
落ち着いた柔らかな歌声が心地よく、優しい声色をしっかりと聴かせるようなバラードとの相性は特に抜群。カバーだけでなく自身でも作詞・作曲も行なっており、物語性のあるファンタジックな世界観を紡ぎ出すのが特徴だ。
Ado
「歌ってみた」動画の投稿で活動を開始し、ボカロP・syudouさんが書き下ろしたメジャーデビュー曲「うっせぇわ」がスマッシュヒットとなって、一躍音楽シーンの中心へと躍り出た。どんな曲も呑み込んでしまう圧倒的なパワーの歌声は、「歌ってみた」作品でも唯一無二の存在感を放つ。
「うっせえわ」以降もすりぃさんやDECO*27さん、Gigaさんら有名ボカロPたちと組み、「踊」や「レディメイド」などパンチ力の強い曲を連続して発表し、その実力を確たるものとして示し続けてきた。今一番勢いのある歌い手だろう。
yama
中性的で伸びやかなyamaさんの歌声は、Adoさんと逆にどんな曲にも寄り添うように響く。メジャーデビュー直後からタイアップが立て続いた上、1stアルバム『the meaning of life』を発売、川谷絵音さんらがプロデュースを手がけたトリプルシングル『Oz./世界は美しいはずなんだ/スモーキーヒロイン』を発売するなど、目覚ましい展開を見せ続けている。2022年はさらなる飛躍が予想される。
天月
少年らしさを残した爽やかな声色を持つ天月さん。自身が作詞・作曲するオリジナル曲もピュアで多幸感のある楽曲が多く、武器を最大限に活かした「かいしんのいちげき!」は4000万回再生を突破している。
さらに他アーティストへの楽曲提供も行っており、作詞・作曲家としてのポテンシャルを伸ばしつつ、声優活動や朗読劇など演劇方面への進出も進んでいる。
96猫
歌唱だけでなく、曲中のちょっとした小芝居の上手さも見事なもの。96猫さんは、声色の引き出しの多さと表現力を活かして声優活動も行なっている。そして、そんな「なんでもござれ」な器用さの反面、素になってしゃべるときは無邪気で元気いっぱいで、そのギャップにもキュンとさせられる。
Nqrse
個人名義の楽曲も出しているほか、他の歌い手と組んでラッパーとして楽曲に参加することが多く、Nqrseさんが書き下ろしリリックでラップアレンジされた「歌ってみた」動画は他には出せないオリジナリティを発揮する。「歌ってみた」のアレンジの幅を圧倒的に広げてくれる存在だ。
luz
セクシー系がお好きな人におすすめしたいのがluzさん。モデルのような端正なルックスに色気のある歌声で独自の世界観をつくり出すluzさんの音楽は、耽美な雰囲気が好きな人にはたまらないはず。MVでご覧になることをおすすめしたい。ライブイベント「XYZ TOUR」を主催し、そこに出演する歌い手を集めたユニットでオリジナル楽曲を制作するなど、オーガナイザーとしての手腕も発揮している。
P丸様。
P丸様。のとびきり元気で可愛らしい声はインパクト大で、一度聴いたら忘れないはず。
音楽だけでなく、自らイラストを描き、複数キャラにアテレコし編集したアニメを公開しており、そちらでも再生数を大きく伸ばしている。マルチな才能の持ち主で、本人曰くその肩書きは“マルチエンターテイナー”。
浦島坂田船
オリジナル曲とカバー曲の両輪で活動しており、セクシーさ全開の色気のある楽曲からはつらつとしたアイドルソング、コミカルな楽曲まで、幅広い音楽が楽しめるのも彼らの魅力。それを実現したのは、それぞれ違ったテイストでアイデンティティーを確立してきた4人が組んだからこその化学反応と言えるだろう。
『浦島坂田船のげつようび』という毎週配信のツイキャスや、YouTubeで実写動画が定期的に公開されており、メンバー同士のかけあいを楽しめるのもユニットならではだ。
すとぷり(すとろべりーぷりんす)
歌い手に関心を持ったなら、その延長で押さえておきたいのがエンタメユニット・すとろべりーぷりんす(すとぷり)だ。莉犬さん、ジェルさん、さとみさん、るぅとさん、ころんさん、ななもり。さんの6人からなるユニット。こちらもそれぞれ単独で「歌ってみた」動画やゲーム実況を行いつつ、ユニットとしてオリジナル曲を出したり、ゲーム実況を行ったり、実写動画で企画を行ったりと幅広く活動している。
エンタメ性が高く、音楽、ゲーム、トーク、アニメなどいろいろな角度から楽しむことができ、コンテンツ量が多いところも沼が深いポイント。音楽面では、ユニット名通り、代表曲には王子様然とした多幸感のある曲が揃っていて、コミカルなだけでなくかっこいいところもバッチリ見せてくれる。
「歌ってみた」されたボカロ曲も興味あります?
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日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。
14件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:5066)
すとぷり大好きなのでこれからも頑張ってください!!
ドームツアーが成功しますように❗
匿名ハッコウくん(ID:5028)
P丸様ってYouTuberじゃないの?歌い手でいいの?あとnqrse出す時あらきとめいちゃん入れてるならあらなるめいでだすなりそれぞれで出して欲しかった。その点で言えば個人的は論外だと思う
匿名ハッコウくん(ID:5027)
歌い手大好きなので、これからも頑張ってほしいです!!
ちなみに、この中での推しはすとぷりと、p丸様です!
歌い手の皆さん、頑張ってください!!(*´ω`*)