最新タイトルで用いた配信視聴者を巻き込む機能
──今お話に上がった『Back in 1995』の開発過程において、本書の執筆に役立った経験はありますか?一條貴彰 『インディーゲーム・サバイバルガイド』の全編において、『Back in 1995』の開発過程で得た知見が反映されていると感じています。
「ゲームを完成させる」「ゲームを知ってもらう」「ゲームを配信する」「ゲーム開発を継続する」という全てのセクションにおいて、実際に『Back in 1995』を完成させ、宣伝活動・配信をしたことが礎になっています。
展示会の準備に関して特に詳しく解説しているのですが、それも『Back in 1995』での経験があったからこそですね。
──一方で、現在開発中『デモリッション ロボッツ K.K.』についても触れられています。例えば、ゲームプレイ配信を見ている人がゲームに介入できる「インタラクティブ動画配信」をシステムの特徴として挙げられていますが、具体的にどのようなものかうかがえますか?
動画サイト「Twitch」で本作のシステムを使用できるのですが、動画視聴者のための専用のUIが配信動画の上から重ねて表示されます。 一條貴彰 このスクリーンショットでは、左上の緑色のコイン数、「Drop」ボタン、落とす邪魔アイテムの選択UIなどがブラウザ側で描画され、動画に重ねて表示されています。
また、ブラウザ上でロボットをクリックすると「ロックオン」できます。スクリーンショットで表示されている赤い丸ですね。これは4体のロボットの位置情報が動画と一緒にゲームからブラウザへ配信されており、その情報を使って実現しています。
好きなロボットをロックオンし、いいねボタン(ロックオンマーカー上の親指ボタン)を押すとロボットにエネルギーが送られ、たくさんの動画視聴者からいいねされると必殺技が早く使えるようになります。逆に、左上の「Drop」ボタンをクリックするとゲームへ邪魔アイテムを落とすことができます。
このアイテム投下に使うコインは連続視聴によって無料でもらえますが、Twitch上で有償販売することも考えています。
──かなり特徴的な機能ですが、取り入れようと思った理由を教えてください。
一條貴彰 ゲームの実況配信は非常に盛り上がっていますが、ゲーム開発者がその盛り上がりの外にいると感じていて、それをなんとかできないかなと。
そこで、動画視聴者と配信者に、動画がより面白くなる付加価値を提供することでマネタイズし、ゲームプレイヤー・配信者・視聴者、そしてゲーム開発者のそれぞれが幸せになる形を目指しています。
ちなみに私は、このGenvid社の技術を日本で広める仕事を副業として行っています。先ほどご紹介した「ゲーム開発を副業とオーバーラップさせる」という具体例ですね。
ゲーム開発会社さんでこうした動画視聴者連携をつくってみたい!という方はぜひご連絡下さい。私のゲームのプロジェクトファイルを見せながら説明します!
興隆するインディーゲーム界の注目タイトル
──ここまでインディーゲーム開発への向き合い方をうかがってきました。現在『UNDERTALE』や『Among Us』など、日本でもインディーゲームが人気を博していますが、日本でインディーゲームがいわゆる“バズる”条件として、重要なことは何だと思いますか?一條貴彰 申し訳ないですが全くわかりません(笑)。個人的にバズる条件はないと思っていまして、ゲームというコンテンツはどうしても運の要素が絡みます。
そして何より、バズったからといってゲームの販売本数が伸びるわけでもありません。バズったことで注目した人たちがそのゲームのプレイヤーになることは稀です。
いわゆるネタ投稿をしたり、センセーショナルな発言をすればバズをつくり出せるのかもしれませんが、そういったバズで得たオーディエンスはゲームの購入には結びつきにくいと考えています。
地道にゲームの内容を充実させることに時間を割く方が、結果的に人気につながると考えています。
──「バズったら……」という妄想にふけることなく、愚直に作品を磨き上げるべきということですね。
一條貴彰 基本的には(笑)。ただし何かの拍子にバズったときに備えて、プレイヤーやメディアからのアクションがしやすいように用意しておくことはできます。
例えば公式サイトにゲームストアのリンクが張ってあってすぐに購入・予約ができるようになっていたり、メディアから問い合わせがあったときにゲームの画像や動画をすぐ渡せるようになっている(プレスキットの用意)ことが大切です。
また、最近ではインディーゲーム開発者が活用できるコンテストやプログラム、動画番組などが日本でもたくさん登場しています。そうした機会を活用することもステップアップのひとつです。 一條貴彰 私はインディーゲーム開発者として、「indie Game incubator(iGi)」(外部リンク)という育成プログラムのアドバイザリーを担当しています。
ちょうど2022年4月からのプログラム実施参加者を応募しているので、「海外も含めてたくさんのプレイヤーにゲームを届けたい」と考えている開発者はぜひ応募してみては、と思います。
──開発者として、今注目しているまたは個人的に遊ばれているインディーゲームを教えて下さい。
日本の開発チームがUnrael Engineでつくっているもので、レトロではない新しい表現としてのローポリゴン・ローレゾリューションが美しく、完成を心待ちにしています。
私はもうレトロポリゴンゲームの開発から離れてしまったのですが、やはりジャンルとしては大好きなのでそうした作品を追っています。近いジャンルで『路地裏漂流記』という開発中のゲームも注目しています。
一條貴彰 また、『デモリッション ロボッツ K.K.』とシンパシーを感じる作品として『Gigabash』(外部リンク)も楽しみです。マレーシアのPassion Republic Gamesという、20名ほどの規模の会社で開発されているゲームです。「路地裏漂流記」というゲームを制作しています!佐伯という名前の高校生が路地裏を探索するゲームです!YouTubeでたまに配信してるので見に来てね!! pic.twitter.com/zwziKH3Mo1
— 00@「路地裏漂流記」制作中よ💙 (@nemuina__zzZ) September 13, 2021
私のゲームとはシステムも開発人数の規模感も異なるのですが、ロボットのデザインや街が壊れゆくビジュアルに同じフェティシズムを感じます。
一條貴彰さん推薦、ゲーム開発関連書籍
──最後に、今からゲーム開発をはじめようとしている本書の読者に向けて、ゲームデザインや企画、プログラミングなどの技術面で参考にするべき書籍・コンテンツを教えて下さい。一條貴彰 ゲームデザイン・企画については、『「レベルアップ」のゲームデザイン 実戦で使えるゲーム作りのテクニック』が、情報がまとまっていてオススメです。
少しジャンルが偏りますが、『3Dゲームをおもしろくする技術』または『2Dゲームをおもしろくする技術 スタートダッシュ編』も参考になると思います。 一條貴彰 技術面で参考にすべき書籍は、Unityであれば、いたのくまんぼうさんの『UnityではじめるC# 基礎編 改訂版』を推します。くまんぼうさんは『インディーゲーム・サバイバルガイド』にもインタビューで参加いただいています。
Unreal Engineの場合は『Unreal Engine 4で極めるゲーム開発:サンプルデータと動画で学ぶUE4ゲーム制作プロジェクト』『Unreal Engine 4 アクションゲーム ブループリント入門』などがオススメです。 一條貴彰 とはいえ、それぞれの本がカバーしている内容やゲームジャンルは異なりますので、書店の店頭で目次を読んでみて、自分に合った本を選ばれるのがいいと思います。
Web上のリソースについては先ほどもお答えしたUnityやUnreal Engine公式の動画チュートリアルがオススメです。
また、手前味噌ではありますが、私の会社で運営している情報サイト「IndieGamesJp.dev」(外部リンク)では、インディーゲーム開発にまつわるコンテスト情報やマーケティングノウハウ、便利なツールやサービスなどのニュースを配信しています。こちらもぜひご参考いただければ幸いです。
『インディーゲーム・サバイバルガイド』を3名様にプレゼント
一條貴彰さんの『インディーゲーム・サバイバルガイド』を3名様にプレゼント。応募方法をご確認の上、ふるってご応募下さい!【応募方法】
1.KAI-YOU.netのTwitter(@kai_you_ed)をフォロー
2.以下のツイートをリツイート【応募期限】『インディーゲーム・サバイバルガイド』を3名様にプレゼント
— KAI-YOU (@KAI_YOU_ed) December 29, 2021
1. @KAI_YOU_ed をフォロー
2. このツイートをRTで応募完了
(※2022年1月4日〆切)
著者・一條貴彰さんインタビューhttps://t.co/JaAXhOz7xk pic.twitter.com/19K8J5nbZO
2022年1月4日(火)23時59分まで
【応募条件】
・日本国内に在住の方
・KAI-YOU.netのTwitterをフォローしている方
・TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)を受信可能な方
【当選発表】
ご応募いただいた方の中から抽選し、当選者を2名決定します。
当選者のみ、TwitterのDMにてお知らせいたします。
※都合により当選通知のご連絡が遅れる場合がございます。あらかじめご了承ください
※都合によりプレゼントの発送が遅れる場合がございます。あらかじめご了承ください
※住所の不備や転居先不明・長期不在などによりプレゼントをお届けできない場合は、当選は無効になります
※本キャンペーンの当選権利を他者に譲渡することはできません
※ご連絡後、一定期間お返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
※発送は当選お知らせ以降、順次対応させていただきます。
インディーゲームの世界へ飛び込め
この記事どう思う?
書籍情報
インディーゲーム・サバイバルガイド
- 価格
- 2,948円(税込み)
- 仕様
- A5、336ページ
- 著者
- 一條 貴彰
- 編集
- 村下 昇平
- カバーデザイン
- イノウエ
- 出版
- 技術評論社
- 執筆協力
- yuta、葛西 祝、秦 亮彦
- 監修
- PLAYISM (株式会社アクティブゲーミングメディア)
■『インディーゲーム・サバイバルガイド』目次
第1章:誰でもゲームを全世界へ販売できる時代
インディーゲーム——ゲーム文化の新たな発信チャネル
ゲーム作りをどうはじめて、どう続けていくのか
つくったゲームをたくさんの人に遊んでもらうために
対談:みずからのスタイルを貫くための個人制作ゲーム——「アンリアルライフ」hako生活×「果てのマキナ」おづみかん
第2章:ゲームを「完成させる」ために必要なこと
破綻しないためのプロジェクト管理
工数を見誤りがちな実装
快適に遊んでもらうための機能
デバッグとリファクタリング
完成の極意
対談:独立から家庭用ゲーム機展開へ、その道のりと苦闘——「カニノケンカ」ぬっそ×「ジラフとアンニカ」斉藤敦士
第3章:ゲームを「知ってもらう」ために必要なこと
宣伝活動の意味
宣伝素材の制作
公式サイトの制作
デモ版や体験版の開発
プレスリリースの作成と配信
そのほかの宣伝活動
インタビュー:Unityがインディーゲーム開発者に支持される理由
対談:スマートフォンゲームの生存戦略——「TapTripTown」いたのくまんぼう×「くまのレストラン」Daigo
第4章:ゲームを「配信する」ために必要なこと
税金・販売計画・契約・法律
スマートフォンでの配信
PC/家庭用ゲーム機での配信
インタビュー:Epic Games Japanが推進するクリエイター支援
対談:小規模チームによるゲーム開発の現場から——「グノーシア」川勝徹×「ALTER EGO」大野真樹
第5章:ゲーム開発を「継続する」ために必要なこと
ゲームイベントへの出展・展示
SNSの活用
ファン活動の促進
ゲームのアップデートとエンドコンテンツの用意
継続的なセールの実施
ゲームの売上以外で活動資金を得る
ゲーム作りの継続
対談:日本のインディーが海外へつながる「場」をつくる——「asobu」チャオ・ゼン&アン・フェレロ
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