現在、YouTubeにおいて配信カルチャーと結びつきブームを巻き起こすTRPG(テーブルトークRPG)。
TRPGは長い歴史の中で進化しており、今や昔ながらのどこかに集まってテーブルを囲む遊び方(オフラインセッション)だけでなく、チャットや有志の制作したサポートツールを使ってのオンラインセッションが台頭して久しい。
しかし、TRPGは出版社がルールブックを出版している都合上権利関係もあって公式からオンラインセッションへのサポートが充実しているとは言い難い部分もあった。
現在のブームにおいて配信者として活動するクリエイターであるまだら牛さんとぱぱびっぷさんは、ダイスタス・チームを結成し、3月に新しいTRPGシステム『エモクロアTRPG』を発表。
『エモクロアTRPG』はルールブックがWebで無料公開され、配信やオンラインでのプレイへのサポートが充実しているほか、配信などで使いやすいようシナリオ作者が2次利用に関して意思表示をできる制度「ダイスタス・コモンズ」が整備されている。
同作には、2人がプレイヤーとして感じてきた「こうなったらもっといい」という部分が盛り込まれており、このデジタルネイティブなシステムは間違いなく日本のTRPG文化を未来に推し進める原動力を秘めていると言える。
今回は、そんなダイスタス・チームの2人にKAI-YOU.netとKAI-YOU Premiumにて連動インタビューを敢行。
KAI-YOU.netでは『エモクロアTRPG』について、KAI-YOU Premiumでは2人の見たTRPGの歴史や仕掛け人としての今のTRPGシーンに対する考えを聞いている。
ぱぱびっぷ 僕が2020年のバレンタインデーにまだら牛をナンパしたんですよ(笑)。 まだら牛 何その言い方(笑)。2月頃でいいじゃん。 ぱぱびっぷ 2月14日に連絡をとって、翌日にはもう「エモクロア」という名前が出ているんです。
まだら牛 一番最初の段階で名前は決まってたね。
ぱぱびっぷ Emotional(感情)とFolklore(伝承上の存在)でエモクロア。まだら牛の発案でした。
──まだら牛さんはどういった考えでEmotionalとFolkloreをテーマに据えたんですか? まだら牛 『エモクロアTRPG』は、今みんなが求めているものを広く届けようというのがコンセプトなんです。
だから、基本は「(みんなが親しみやすいよう)現代が舞台でキャラクターは一般人」という世界観を想定していました。
ですが、それと同時に『新クトゥルフ神話TRPG』の「神格」(注1)や、「ダブルクロス」シリーズの「レネゲイドウィルス」(注2)のような強いフックがほしかった。
(注1)『新クトゥルフ神話TRPG』は、H.P.ラヴクラフトによる創作を中心とした、共通の世界観やテーマを持つ作品群「クトゥルフ神話」をテーマにしたTRPG。「クトゥルフ神話」に登場する「神格」たちはバリエーションも多く、それぞれの持つ力や特性、信者などの設定からシナリオのフックとして使われることも多い。
(注2)「レネゲイドウィルス」は、TRPG「ダブルクロス」シリーズに登場するウィルス。このウィルスに感染すると熱や光を操ったりと超常的な力を扱えるが、浸食が進むと怪物になってしまう。 ぱぱびっぷ そうだね。
まだら牛 だから、まずみんなが知っていてとっつきやすい「怪異」というテーマを設けました。これがFolkloreの部分です。
でも、「怪異」が出てくるだけだと、やっつけようとして展開がバトルに偏ってしまうかもしれない。TRPGの戦闘はドラマチックだけど、数字のやりとりが大変で苦手な人も多いんですよ。
──私もよくTRPGで遊ぶんですが、ダイスの出目が低いと攻撃が当たらなかったりダメージが低くてグダグダになってしまったりすることもあるので、苦手な人がいるのもわかります。
まだら牛 だから、物語の解決手段はバトルじゃない何かをベースにしかった。そうなるとドラマに着目した方が間口が広い。ドラマは「感情」をきっかけに起こることも多いので、Emotionalをシステムのモチーフにしたんです。
──親しみやすい世界観だけではなく、判定やキャラメイクなどのシステムも、シンプルでわかりやすいです。 まだら牛 システム周りは『エモクロアTRPG』独自というより、既存のシステムへのリスペクトが強いんです。
『エモクロアTRPG』の判定システムは、ダイスを何個か振って目標値より低い出目のものをカウントするものです。成功したダイスをカウントする方式は『アジアンパンクPRG サタスペ』や『シャドウラン』などでも採用されています。 ──特徴的なシステムに思える「残響」(注3)は何かを参考にされたんですか?
まだら牛 「残響」は「ダブルクロス」の「ロイス」(注4)などに似ていますね。セッションの想い出や強い感情などをキャラクターシートに記録できて、それにシステム上で強い効果が与えられているといいなと思ったんです。
(注3)『エモクロアTRPG』のキャラクターと「怪異」に関するルール。キャラクターはあるシナリオで「怪異」と遭遇すると、その「怪異」から「残響」として何らかの感情的な影響を受ける。別のシナリオに参加した際に、その「残響」を消費することで有利な効果を得られる。
(注4)「ダブルクロス」の、キャラクターが持つ人間関係に関するルール。シナリオの登場人物や他プレイヤーと結んだ関係性は「ロイス」としてストックされ、この関係性に変化が起こると「タイタス」という状態に変化する。これを消費すると、シナリオ中で一時的に有利な効果を得ることができる。
ぱぱびっぷ 一番最初はまだら牛がボードゲーム用に考えていたオリジナルの判定を採用しようかと考えたんですが、やっていくうちにわかりやすさと簡便さを整えて今の形になりました。
TRPGは長い歴史の中で進化しており、今や昔ながらのどこかに集まってテーブルを囲む遊び方(オフラインセッション)だけでなく、チャットや有志の制作したサポートツールを使ってのオンラインセッションが台頭して久しい。
しかし、TRPGは出版社がルールブックを出版している都合上権利関係もあって公式からオンラインセッションへのサポートが充実しているとは言い難い部分もあった。
現在のブームにおいて配信者として活動するクリエイターであるまだら牛さんとぱぱびっぷさんは、ダイスタス・チームを結成し、3月に新しいTRPGシステム『エモクロアTRPG』を発表。
『エモクロアTRPG』はルールブックがWebで無料公開され、配信やオンラインでのプレイへのサポートが充実しているほか、配信などで使いやすいようシナリオ作者が2次利用に関して意思表示をできる制度「ダイスタス・コモンズ」が整備されている。
同作には、2人がプレイヤーとして感じてきた「こうなったらもっといい」という部分が盛り込まれており、このデジタルネイティブなシステムは間違いなく日本のTRPG文化を未来に推し進める原動力を秘めていると言える。
今回は、そんなダイスタス・チームの2人にKAI-YOU.netとKAI-YOU Premiumにて連動インタビューを敢行。
KAI-YOU.netでは『エモクロアTRPG』について、KAI-YOU Premiumでは2人の見たTRPGの歴史や仕掛け人としての今のTRPGシーンに対する考えを聞いている。
ニコニコ動画に超会議、TRPGの「現場」裏話はこちら
取材対象:ダイスタス・チーム(ぱぱびっぷ・まだら牛) 取材・執筆:安倉儀たたた 企画:うぎこ 編集:小林優介目次
きっかけはバレンタインのナンパ
──『エモクロアTRPG』はどのようなきっかけで生まれたんですか?ぱぱびっぷ 僕が2020年のバレンタインデーにまだら牛をナンパしたんですよ(笑)。 まだら牛 何その言い方(笑)。2月頃でいいじゃん。 ぱぱびっぷ 2月14日に連絡をとって、翌日にはもう「エモクロア」という名前が出ているんです。
まだら牛 一番最初の段階で名前は決まってたね。
ぱぱびっぷ Emotional(感情)とFolklore(伝承上の存在)でエモクロア。まだら牛の発案でした。
──まだら牛さんはどういった考えでEmotionalとFolkloreをテーマに据えたんですか? まだら牛 『エモクロアTRPG』は、今みんなが求めているものを広く届けようというのがコンセプトなんです。
だから、基本は「(みんなが親しみやすいよう)現代が舞台でキャラクターは一般人」という世界観を想定していました。
ですが、それと同時に『新クトゥルフ神話TRPG』の「神格」(注1)や、「ダブルクロス」シリーズの「レネゲイドウィルス」(注2)のような強いフックがほしかった。
(注1)『新クトゥルフ神話TRPG』は、H.P.ラヴクラフトによる創作を中心とした、共通の世界観やテーマを持つ作品群「クトゥルフ神話」をテーマにしたTRPG。「クトゥルフ神話」に登場する「神格」たちはバリエーションも多く、それぞれの持つ力や特性、信者などの設定からシナリオのフックとして使われることも多い。
(注2)「レネゲイドウィルス」は、TRPG「ダブルクロス」シリーズに登場するウィルス。このウィルスに感染すると熱や光を操ったりと超常的な力を扱えるが、浸食が進むと怪物になってしまう。 ぱぱびっぷ そうだね。
まだら牛 だから、まずみんなが知っていてとっつきやすい「怪異」というテーマを設けました。これがFolkloreの部分です。
でも、「怪異」が出てくるだけだと、やっつけようとして展開がバトルに偏ってしまうかもしれない。TRPGの戦闘はドラマチックだけど、数字のやりとりが大変で苦手な人も多いんですよ。
──私もよくTRPGで遊ぶんですが、ダイスの出目が低いと攻撃が当たらなかったりダメージが低くてグダグダになってしまったりすることもあるので、苦手な人がいるのもわかります。
まだら牛 だから、物語の解決手段はバトルじゃない何かをベースにしかった。そうなるとドラマに着目した方が間口が広い。ドラマは「感情」をきっかけに起こることも多いので、Emotionalをシステムのモチーフにしたんです。
──親しみやすい世界観だけではなく、判定やキャラメイクなどのシステムも、シンプルでわかりやすいです。 まだら牛 システム周りは『エモクロアTRPG』独自というより、既存のシステムへのリスペクトが強いんです。
『エモクロアTRPG』の判定システムは、ダイスを何個か振って目標値より低い出目のものをカウントするものです。成功したダイスをカウントする方式は『アジアンパンクPRG サタスペ』や『シャドウラン』などでも採用されています。 ──特徴的なシステムに思える「残響」(注3)は何かを参考にされたんですか?
まだら牛 「残響」は「ダブルクロス」の「ロイス」(注4)などに似ていますね。セッションの想い出や強い感情などをキャラクターシートに記録できて、それにシステム上で強い効果が与えられているといいなと思ったんです。
(注3)『エモクロアTRPG』のキャラクターと「怪異」に関するルール。キャラクターはあるシナリオで「怪異」と遭遇すると、その「怪異」から「残響」として何らかの感情的な影響を受ける。別のシナリオに参加した際に、その「残響」を消費することで有利な効果を得られる。
(注4)「ダブルクロス」の、キャラクターが持つ人間関係に関するルール。シナリオの登場人物や他プレイヤーと結んだ関係性は「ロイス」としてストックされ、この関係性に変化が起こると「タイタス」という状態に変化する。これを消費すると、シナリオ中で一時的に有利な効果を得ることができる。
ぱぱびっぷ 一番最初はまだら牛がボードゲーム用に考えていたオリジナルの判定を採用しようかと考えたんですが、やっていくうちにわかりやすさと簡便さを整えて今の形になりました。
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