人気配信者・まだら牛さんとぱぱびっぷさんにより結成された「ダイスタス・チーム」が無料公開したTRPG「エモクロアTRPG」。さっそく遊んでみた所感をお届けしたい。
日本TRPG界に激震が走った。
人気配信者・ぱぱびっぷさんのYouTubeチャンネルにて、まだら牛さんとぱぱびっぷさんによる「ダイスタス・チーム」の結成が発表。
さらに、《怪異》の引き起こした事件に巻き込まれ、「感情」を変異させた「共鳴者」となり物語を当事者として体験していく『エモクロアTRPG』が発表。Webサイト上でルールが無料公開されたのだ。エモクロアTRPG 新作お披露目発表会 「これからのTRPGの話をしよう」
TRPGは、ゲームマスター(『エモクロアTRPG』ではディーラーと呼ぶ)の進行のもと、用意されたシナリオの登場人物を演じる遊びである。これまで、オンラインでTRPGを遊ぶにはゲームマスターの好意で立てられる初心者体験セッション等を除き、データやルールを参照するルールブックの購入が必要であった。
しかし、『エモクロアTRPG』はルールがWeb上で無料公開されているため、インターネット接続環境があれば誰でもすぐ遊べるようになっている。
これまでも『エモクロアTRPG』同様の手法でルールを公開しているタイトルは複数存在した。
一方、『エモクロアTRPG』は発表配信を数千人が視聴し、公開と同時に多くのユーザーがルールを閲覧、ルール公開と同時に発表された公式シナリオ「新約・きさらぎ駅」は複数のセッションがYouTube上で配信され、Twitterでは多くのユーザーのプレイ報告が投稿されている。カオスな奴らがワイルドにいくきさらぎ駅
そして発表からわずか1週間で、ユーザーによりpixivおよびBOOTHで発表されたシナリオはすでに50本以上、公式サイトで作成されたキャラクターは1万体以上と大きく盛り上がりを見せている。
筆者もさっそく遊んでみた。
・キャラクターの外見・性別・設定の決定
・能力値の決定
・技能の決定
・共鳴感情の決定
以下で、詳細について説明をしていく。
シナリオに指示がない限り、ディーラー(ゲームの進行役)やほかのプレイヤーと相談しつつ好みで決めてしまおう。
『エモクロアTRPG』には「身体」「器用」「精神」「五感」「知力」「魅力」「社会」「運勢」の8つの能力値がある。 『エモクロアTRPG』で設定する能力値/画像は公式サイトのスクリーンショット
このうち「運勢」以外の7つの数値は、25点の点数を自由に割り振って決めることができる。この点、ダイスの出目で能力値が決定する『クトゥルフ神話TRPG』とは異なる。
「運勢」のみ、6面ダイスを1つ振って出た目がそのまま能力値となる。
好きに決められるとなると、かえってどの能力値に何点割り振るか悩むこともあるかもしれない。だが心配はいらない。公式キャラクターシートには能力値を自動で割り振ってくれる機能がある。
筆者もこれを利用して能力値の方向性を程度決めたのち、少し調整してキャラクターの能力値とした。
習熟度別に1~3のレベルが存在し、合計30点の「技能ポイント」を消費し取得する。
技能レベルが上がるほど、必要な技能ポイントは上昇していく。 技能の設定方法/画像は公式サイトのスクリーンショット
このうち、ベース技能と呼ばれる「*」がついた技能と、<∞共鳴>技能は、すべてのキャラクターが取得しているが、レベルを上げることはできない。
プレイヤーキャラクターは「表(外面)」「裏(内面)」「ルーツ(人格形成の根源)」の3つの共鳴感情を持つ。
最初に考えた設定をもとに、用意された感情一覧から選択して取得する。 共鳴感情の一覧/画像は公式サイトのスクリーンショット
先述の通り、公式サイトにキャラクターシート登録機能があるため、インターネット環境があれば誰でも気軽にキャラクターを作成することができる。
3月27日現在ではオンラインセッション用のシートのみ用意されており、PDFは準備中のようだ。
書籍で発売されたメジャーなタイトルの場合、有志によってオンラインセッション用のキャラクターシートが用意されていることが多いが、このようにあらかじめ公式で用意されているのは珍しい※。
※商業作品で公式でオンラインセッション用キャラクターシートが用意されている例としては、ほかに『ログ・ホライズンTRPG』(外部リンク)がある。
ディーラーの進行に従って物語が進み、その中でプレイヤーが何かものを探すときには技能「*知覚」で判定、調べ物をする場合は技能「*調査」で判定を行う。 技能がどういった目的で使えるのかは、ルールブックに記載されている/画像は公式サイトのスクリーンショット
判定に必要な技能はディーラーが指示するため、TRPGがはじめてという場合でも比較的戸惑わずに進めるのではないか。
通常は成功数が1あればやろうとしたこと自体は成功になるが、判定によっては2以上の成功が必要なこともある。また、成功数が増えることでより良い結果が得られる。
たとえば、シナリオをプレイ中にクッキーを焼くのに手先を使った作業全般の判定に使う技能「細工」判定を要求されたとする。
このとき、キャラクターが<技巧:料理>を2レベル持っていたら、
「<技巧:料理>の技能で判定してもいいですか?」
と提案できる。これをディーラーが認めれば<技巧:料理>で判定可能だ。
細工はすべてのキャラクターが1レベルで取得しているベース技能のため、2レベルで取得している技能で判定できればより成功しやすくなる。
余談だが、「ココフォリア」「ユドナリウム」などの国産のオンラインセッション補助ツールでは、コマンドを入力するだけでダイスを振れるプログラムが導入されている。
このコマンドを一覧にし、メニューから呼び出せるようにしたものを「チャットパレット」と呼ぶのだが、なんと『エモクロアTRPG』のWebキャラクターシートにはこのチャットパレットを自動で出力してくれる機能がある。
コマンドを入力せずともクリックするだけで自動でダイスを振り判定を行えるうえ、判定の成否も自動的に表示してくれるため非常に便利だ。
共鳴判定にはそれぞれ「強度/上昇〇」と「共鳴感情」というものが設定されている。<∞共鳴>値の数だけダイスを振り(初期は全員1)、「強度」以下の出目が出たら成功となり、「上昇〇」の「〇」の数値だけ共鳴値が上昇してしまう。
ダイスが増えてしまう以上、共鳴値が増えれば増えるほど<∞共鳴>に成功しやすく――怪異に引っ張られやすくなってしまう。減少すればするほど失敗しやすくなる『クトゥルフ神話TRPG』の正気度に近いが、こちらは振るダイスの数を増加させることによって怪異に近づいていることを表現している。
「共鳴感情」がキャラクターが持つ共鳴感情がある程度一致していると、「感情マッチング」が発生し判定に使うダイスが増えてしまう。より怪異に引っ張られやすくなるので注意が必要だが、こればかりは登場する怪異との相性による。
ラウンド進行とは、たとえばコンピュータRPGにおける戦闘や、物語の終盤に訪れるピンチシーンなどドラマチックなシーンを演出するのに使用する。
コンピュータRPGの戦闘は敵味方が素早さ順に一人ずつ行動していくが、『エモクロアTRPG』はラウンド進行の行動順決定に使用する能力値がシチュエーションにより異なる。
ルールに示されている例としては、陸上での戦闘が身体+スピード、議論は知力、ライブは魅力といった具合だ。 ラウンド進行中は、1巡につき1人1回行動が行える。プレイヤーキャラクター達はこのラウンド進行を繰り返して事態を解決するか――事態が解決できなくなってしまうところまで進行する。
シナリオに設定されている終了条件を満たせばラウンド進行は終了だ。PCにとって良い結果になったのか、そうでないかはセッションの進行次第だが。
ルールが軽く、ツールのサポートもあって遊びやすい。
また共鳴判定の判定ダイスが増えていくところにより、プレイヤーキャラクター達が怪異に浸食されていることをうまく表現できていると感じる。
ウェブでいつでも無料でルールを参照できるという点でも、ルールブックを買う前にまずTRPGを遊んでみたい初心者にもお勧めだ。
TRPGに少しでも興味がある方は是非、『エモクロアTRPG』を遊んでみてほしい。
日本TRPG界に走った衝撃『エモクロアTRPG』発表
──2021年3月19日。日本TRPG界に激震が走った。
人気配信者・ぱぱびっぷさんのYouTubeチャンネルにて、まだら牛さんとぱぱびっぷさんによる「ダイスタス・チーム」の結成が発表。
さらに、《怪異》の引き起こした事件に巻き込まれ、「感情」を変異させた「共鳴者」となり物語を当事者として体験していく『エモクロアTRPG』が発表。Webサイト上でルールが無料公開されたのだ。
しかし、『エモクロアTRPG』はルールがWeb上で無料公開されているため、インターネット接続環境があれば誰でもすぐ遊べるようになっている。
これまでも『エモクロアTRPG』同様の手法でルールを公開しているタイトルは複数存在した。
一方、『エモクロアTRPG』は発表配信を数千人が視聴し、公開と同時に多くのユーザーがルールを閲覧、ルール公開と同時に発表された公式シナリオ「新約・きさらぎ駅」は複数のセッションがYouTube上で配信され、Twitterでは多くのユーザーのプレイ報告が投稿されている。
筆者もさっそく遊んでみた。
サポートも充実、キャラクターのつくり方
ルールによると、共鳴者作成の手順は以下の通り。・キャラクターの外見・性別・設定の決定
・能力値の決定
・技能の決定
・共鳴感情の決定
以下で、詳細について説明をしていく。
外見や性別・設定の決定
外見や性別・設定には、数値の割り振りなどは発生しない。シナリオに指示がない限り、ディーラー(ゲームの進行役)やほかのプレイヤーと相談しつつ好みで決めてしまおう。
能力値の決定
能力値とはキャラクターの身体的な強さや賢さなどを数値化したものである。『エモクロアTRPG』には「身体」「器用」「精神」「五感」「知力」「魅力」「社会」「運勢」の8つの能力値がある。 『エモクロアTRPG』で設定する能力値/画像は公式サイトのスクリーンショット
このうち「運勢」以外の7つの数値は、25点の点数を自由に割り振って決めることができる。この点、ダイスの出目で能力値が決定する『クトゥルフ神話TRPG』とは異なる。
「運勢」のみ、6面ダイスを1つ振って出た目がそのまま能力値となる。
好きに決められるとなると、かえってどの能力値に何点割り振るか悩むこともあるかもしれない。だが心配はいらない。公式キャラクターシートには能力値を自動で割り振ってくれる機能がある。
筆者もこれを利用して能力値の方向性を程度決めたのち、少し調整してキャラクターの能力値とした。
技能の決定
技能とは共鳴者が「できること・得意なこと」を表す。習熟度別に1~3のレベルが存在し、合計30点の「技能ポイント」を消費し取得する。
技能レベルが上がるほど、必要な技能ポイントは上昇していく。 技能の設定方法/画像は公式サイトのスクリーンショット
このうち、ベース技能と呼ばれる「*」がついた技能と、<∞共鳴>技能は、すべてのキャラクターが取得しているが、レベルを上げることはできない。
共鳴感情の決定
最後に、共鳴感情を決定する。共鳴感情はそのキャラクターがどの感情と共鳴しやすいかを示す。プレイヤーキャラクターは「表(外面)」「裏(内面)」「ルーツ(人格形成の根源)」の3つの共鳴感情を持つ。
最初に考えた設定をもとに、用意された感情一覧から選択して取得する。 共鳴感情の一覧/画像は公式サイトのスクリーンショット
先述の通り、公式サイトにキャラクターシート登録機能があるため、インターネット環境があれば誰でも気軽にキャラクターを作成することができる。
3月27日現在ではオンラインセッション用のシートのみ用意されており、PDFは準備中のようだ。
書籍で発売されたメジャーなタイトルの場合、有志によってオンラインセッション用のキャラクターシートが用意されていることが多いが、このようにあらかじめ公式で用意されているのは珍しい※。
※商業作品で公式でオンラインセッション用キャラクターシートが用意されている例としては、ほかに『ログ・ホライズンTRPG』(外部リンク)がある。
ゲームの進行方法、流れ
さて、キャラクターさえ作成してしまえば、セッション進行は非常に手軽に行うことができる。ディーラーの進行に従って物語が進み、その中でプレイヤーが何かものを探すときには技能「*知覚」で判定、調べ物をする場合は技能「*調査」で判定を行う。 技能がどういった目的で使えるのかは、ルールブックに記載されている/画像は公式サイトのスクリーンショット
判定に必要な技能はディーラーが指示するため、TRPGがはじめてという場合でも比較的戸惑わずに進めるのではないか。
判定の方法
なんらかの判定を行う場合は、参照する技能レベル分だけ10面ダイスを振り、「技能に対応した能力値+技能レベル」以下の出目(※ベース技能は能力値)が出たダイスの数だけ成功となる。 このとき、1の出目は「クリティカル・ダイス」と呼ばれ成功数がプラス1され、0の出目は「エラー・ダイス」と呼ばれ成功数がマイナス1される。通常は成功数が1あればやろうとしたこと自体は成功になるが、判定によっては2以上の成功が必要なこともある。また、成功数が増えることでより良い結果が得られる。
具体的な判定の例
判定に使用する技能だが、通常はベース技能が指定される。ただし、プレイヤーからの提案をディーラーが認めれば、別の技能で判定をすることもできる。たとえば、シナリオをプレイ中にクッキーを焼くのに手先を使った作業全般の判定に使う技能「細工」判定を要求されたとする。
このとき、キャラクターが<技巧:料理>を2レベル持っていたら、
「<技巧:料理>の技能で判定してもいいですか?」
と提案できる。これをディーラーが認めれば<技巧:料理>で判定可能だ。
細工はすべてのキャラクターが1レベルで取得しているベース技能のため、2レベルで取得している技能で判定できればより成功しやすくなる。
余談だが、「ココフォリア」「ユドナリウム」などの国産のオンラインセッション補助ツールでは、コマンドを入力するだけでダイスを振れるプログラムが導入されている。
このコマンドを一覧にし、メニューから呼び出せるようにしたものを「チャットパレット」と呼ぶのだが、なんと『エモクロアTRPG』のWebキャラクターシートにはこのチャットパレットを自動で出力してくれる機能がある。
コマンドを入力せずともクリックするだけで自動でダイスを振り判定を行えるうえ、判定の成否も自動的に表示してくれるため非常に便利だ。
共鳴判定
セッション中に怪異に遭遇するか、怪異に影響を受けた強い感情に触れてしまった場合、共鳴判定を行う。これは、怪異に「引っ張られる」ことを示している。共鳴判定にはそれぞれ「強度/上昇〇」と「共鳴感情」というものが設定されている。<∞共鳴>値の数だけダイスを振り(初期は全員1)、「強度」以下の出目が出たら成功となり、「上昇〇」の「〇」の数値だけ共鳴値が上昇してしまう。
ダイスが増えてしまう以上、共鳴値が増えれば増えるほど<∞共鳴>に成功しやすく――怪異に引っ張られやすくなってしまう。減少すればするほど失敗しやすくなる『クトゥルフ神話TRPG』の正気度に近いが、こちらは振るダイスの数を増加させることによって怪異に近づいていることを表現している。
「共鳴感情」がキャラクターが持つ共鳴感情がある程度一致していると、「感情マッチング」が発生し判定に使うダイスが増えてしまう。より怪異に引っ張られやすくなるので注意が必要だが、こればかりは登場する怪異との相性による。
ラウンド進行
セッションが進行し怪異と対峙、事態を解決することになった場合、しばしば登場するのがラウンド進行だ。ラウンド進行とは、たとえばコンピュータRPGにおける戦闘や、物語の終盤に訪れるピンチシーンなどドラマチックなシーンを演出するのに使用する。
コンピュータRPGの戦闘は敵味方が素早さ順に一人ずつ行動していくが、『エモクロアTRPG』はラウンド進行の行動順決定に使用する能力値がシチュエーションにより異なる。
ルールに示されている例としては、陸上での戦闘が身体+スピード、議論は知力、ライブは魅力といった具合だ。 ラウンド進行中は、1巡につき1人1回行動が行える。プレイヤーキャラクター達はこのラウンド進行を繰り返して事態を解決するか――事態が解決できなくなってしまうところまで進行する。
シナリオに設定されている終了条件を満たせばラウンド進行は終了だ。PCにとって良い結果になったのか、そうでないかはセッションの進行次第だが。
『エモクロアTRPG』を遊んでみての総括
今回筆者は、「Discord」と「ココフォリア」を利用したテキストチャットでセッションを行ったが、キャラクター作成からセッション終了まで4時間半ほどであった。ルールが軽く、ツールのサポートもあって遊びやすい。
また共鳴判定の判定ダイスが増えていくところにより、プレイヤーキャラクター達が怪異に浸食されていることをうまく表現できていると感じる。
ウェブでいつでも無料でルールを参照できるという点でも、ルールブックを買う前にまずTRPGを遊んでみたい初心者にもお勧めだ。
TRPGに少しでも興味がある方は是非、『エモクロアTRPG』を遊んでみてほしい。
新たな時代に向かうTRPG
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producerM/上総観久
ゼロ年代からTRPGを遊んでいるTRPGプレイヤー。長年オフラインセッション専門だったが、コロナをきっかけに本格的にオンラインセッションでTRPGを遊び始めた。
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