進行役であるゲームマスターが用意したシナリオの登場人物となり、キャラクターを演じていく遊び「TRPG」(テーブルトークRPG)。
1970年代のアメリカで始まったこの遊びは、チャンネル登録者数140万人越えの人気実況者・ガッチマンさんやVTuberグループ・にじさんじなども配信を行うYouTubeの人気コンテンツの一角となっている。
そのシーンで絶大な存在感を放っているのが、ディズムさん・J.B.さん・ペレ夫さん、小ka栗ショーンさんの四人で構成される配信者グループ・驚天動地倶楽部だ。
メンバーのディズムさんが執筆したTRPGシナリオ『カタシロ』は、プレイヤーの内面や価値観を反映した展開が高い評価を獲得。2020年12月には、『カタシロ』を原案とする舞台「カタシロRebuild」の制作が発表され、クラウドファンディングでは4400万円以上の支援が集まった。 いま、TRPGと配信の世界に何が起こっているのか。KAI-YOU.netでは、驚天動地倶楽部の中心的メンバーであり、『カタシロ』の制作者でもあるディズムさんにインタビューを行った。
※本インタビューは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に配慮し、1月29日にZoomを用いて行われました。
取材・執筆:安倉儀たたた 企画:うぎこ 編集:小林優介
ディズム 僕が『カタシロ』をつくるきっかけになったのは、VTuberの磁富モノエさんなんです。(磁富モノエさんは2021年2月19日をもって活動を終了)
去年、僕は『忘れじの理想郷』というシナリオを書きまして、磁富モノエさんにも配信の出演オファーをしたんです。 TRPGはリアルタイムの展開が盛り上がりを生むので、シナリオの内容を事前に知っていると100%楽しむことはできません。
ところが、彼女はすでに別の配信を見て『忘れじの理想郷』の中身を知ってしまったとのことで、オファーを断念して別のシナリオをつくりはじ始めました。それが『カタシロ』です。新クトゥルフ神話TRPG『忘れじの理想郷』しまどりる,まだら牛,日ノ森あんず
ディズム ちょうどその頃、プレイヤーたちが犯人や関係者を演じながら殺人事件を追体験する「マーダーミステリー」という遊びが配信で流行り出していて。
その勢いをけん引していたのが、「カタシロRebuild」にも協力してくれている、TRPG配信者のまだら牛さんの『狂気山脈 陰謀の分水嶺』というシナリオだったんです。【マーダーミステリー】狂気山脈~陰謀の分水嶺~2nd Climb【ディズム視点】
ディズム これは僕も負けていられないなと思いまして(笑)。
色々考えた結果、物語が展開する中で徐々に事件の犯人がわかっていく都合上、マーダーミステリーには犯人役と推理役が1対1で対決するシナリオが存在しないということに気づいたんです。
もし実現できたら盛り上がるに違いないと思ったんですが(笑)。結局、マーダーミステリーのルールでは無理だと断念してそのアイデアをTRPGに流用しました。
──1対1のシナリオにこだわられた理由は何だったのでしょうか?
ディズム 「忘れじの理想郷」を書いたときに、ダイスを振らせて運によるドラマを引き起こしたりといった、TRPGというゲームシステムの面白さで盛り上がりをつくるのはどうも苦手だと思ったんです。
それよりも、僕は人と対話する方が好きだし得意だと気付いた。そして、その得意分野を活かすには、1対1で対話する形式のシナリオが理想的でした。
ディズム 一番最初に、イラストレーターのしまどりるさんという方にテストプレイをしていただいたきまして。しまどりるさんがうまかったおかげでテストプレイ自体は楽しく遊べたんですが、対話という面ではシナリオが十分なクオリティに達していませんでした。
テストプレイ段階では、今の『カタシロ』の肝となっている重要な決断の部分で、プレイヤーが自身の価値観を絡めて悩むというよりも、単にAかBかという選択をするだけになってしまっていたんですね。
それを解消し、プレイヤーにその人独自の考えを見せてもらおうと価値観を問うような思考実験を組み込みました。 ──『カタシロ』に組み込まれた思考実験は、配信の視聴者としては「自分ならこうするな」とシナリオに没入させてくれます。さらに、思考実験が浮き彫りにしたプレイヤーの価値観から発展する対話ではその人の意外な一面が見られたりと、カウンセリングのような側面があるように思われます。
ディズム 「医者」と「患者」の対話が中心ですし、そういう要素もあるかもしれませんね。実は僕、プレイ中はプレイヤーが言っていることにただ応答をしているだけなので、その後物語がどんな展開になるのか不安でもあるんです。
それでも、コミュニケーションが盛り上がるように不安を感じたらその不安を相手に伝えるようにしています。自分の心境を素直に伝えるからこそ、相手も自分の考えを話してくれる。
僕はそこから生まれる他では2度と起きえない対話が見れれば満足なんです。
──トークを重視されているのには、配信することを前提にしているからというのもあるのでしょうか。
ディズム それもあります。今はツールも進化して配信画面も凄く凝ったものがつくれますが、トーク重視なら配信画面がめちゃくちゃ凝っていなくてもいいですからね(笑)。
1970年代のアメリカで始まったこの遊びは、チャンネル登録者数140万人越えの人気実況者・ガッチマンさんやVTuberグループ・にじさんじなども配信を行うYouTubeの人気コンテンツの一角となっている。
そのシーンで絶大な存在感を放っているのが、ディズムさん・J.B.さん・ペレ夫さん、小ka栗ショーンさんの四人で構成される配信者グループ・驚天動地倶楽部だ。
メンバーのディズムさんが執筆したTRPGシナリオ『カタシロ』は、プレイヤーの内面や価値観を反映した展開が高い評価を獲得。2020年12月には、『カタシロ』を原案とする舞台「カタシロRebuild」の制作が発表され、クラウドファンディングでは4400万円以上の支援が集まった。 いま、TRPGと配信の世界に何が起こっているのか。KAI-YOU.netでは、驚天動地倶楽部の中心的メンバーであり、『カタシロ』の制作者でもあるディズムさんにインタビューを行った。
TRPGの歴史と現在の隆盛についてのインタビューはこちら
※本記事には、一部TRPGシナリオ『カタシロ』のネタバレが含まれています。※本インタビューは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に配慮し、1月29日にZoomを用いて行われました。
取材・執筆:安倉儀たたた 企画:うぎこ 編集:小林優介
目次
配信で流行する「マーダーミステリー」と『カタシロ』の関係性
──今回舞台となる「カタシロRebuild」。その原典であるTRPGシナリオ『カタシロ』は、どのようなきっかけで誕生したのでしょうか?ディズム 僕が『カタシロ』をつくるきっかけになったのは、VTuberの磁富モノエさんなんです。(磁富モノエさんは2021年2月19日をもって活動を終了)
去年、僕は『忘れじの理想郷』というシナリオを書きまして、磁富モノエさんにも配信の出演オファーをしたんです。 TRPGはリアルタイムの展開が盛り上がりを生むので、シナリオの内容を事前に知っていると100%楽しむことはできません。
ところが、彼女はすでに別の配信を見て『忘れじの理想郷』の中身を知ってしまったとのことで、オファーを断念して別のシナリオをつくりはじ始めました。それが『カタシロ』です。
その勢いをけん引していたのが、「カタシロRebuild」にも協力してくれている、TRPG配信者のまだら牛さんの『狂気山脈 陰謀の分水嶺』というシナリオだったんです。
色々考えた結果、物語が展開する中で徐々に事件の犯人がわかっていく都合上、マーダーミステリーには犯人役と推理役が1対1で対決するシナリオが存在しないということに気づいたんです。
もし実現できたら盛り上がるに違いないと思ったんですが(笑)。結局、マーダーミステリーのルールでは無理だと断念してそのアイデアをTRPGに流用しました。
──1対1のシナリオにこだわられた理由は何だったのでしょうか?
ディズム 「忘れじの理想郷」を書いたときに、ダイスを振らせて運によるドラマを引き起こしたりといった、TRPGというゲームシステムの面白さで盛り上がりをつくるのはどうも苦手だと思ったんです。
それよりも、僕は人と対話する方が好きだし得意だと気付いた。そして、その得意分野を活かすには、1対1で対話する形式のシナリオが理想的でした。
『カタシロ』の裏にあった苦労や不安
──『カタシロ』製作時の苦労や試行錯誤についても教えてください。ディズム 一番最初に、イラストレーターのしまどりるさんという方にテストプレイをしていただいたきまして。しまどりるさんがうまかったおかげでテストプレイ自体は楽しく遊べたんですが、対話という面ではシナリオが十分なクオリティに達していませんでした。
テストプレイ段階では、今の『カタシロ』の肝となっている重要な決断の部分で、プレイヤーが自身の価値観を絡めて悩むというよりも、単にAかBかという選択をするだけになってしまっていたんですね。
それを解消し、プレイヤーにその人独自の考えを見せてもらおうと価値観を問うような思考実験を組み込みました。 ──『カタシロ』に組み込まれた思考実験は、配信の視聴者としては「自分ならこうするな」とシナリオに没入させてくれます。さらに、思考実験が浮き彫りにしたプレイヤーの価値観から発展する対話ではその人の意外な一面が見られたりと、カウンセリングのような側面があるように思われます。
ディズム 「医者」と「患者」の対話が中心ですし、そういう要素もあるかもしれませんね。実は僕、プレイ中はプレイヤーが言っていることにただ応答をしているだけなので、その後物語がどんな展開になるのか不安でもあるんです。
それでも、コミュニケーションが盛り上がるように不安を感じたらその不安を相手に伝えるようにしています。自分の心境を素直に伝えるからこそ、相手も自分の考えを話してくれる。
僕はそこから生まれる他では2度と起きえない対話が見れれば満足なんです。
──トークを重視されているのには、配信することを前提にしているからというのもあるのでしょうか。
ディズム それもあります。今はツールも進化して配信画面も凄く凝ったものがつくれますが、トーク重視なら配信画面がめちゃくちゃ凝っていなくてもいいですからね(笑)。
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