クトゥルフ神話
くとぅるふしんわ
クトゥルフ神話(Cthulhu Mythos)は、アメリカの怪奇小説家H・P・ラヴクラフトと、彼と交流した作家たちの作品を起源とする架空の神話体系/シェアード・ワールド。
概要
クトゥルフ、ヨグ=ソトース、ナイアーラトテップ、アザトースなど、人類の理解を超えた超越的な存在や、架空の魔導書「ネクロノミコン」、都市アーカム、港町インスマス、ミスカトニック大学、海底都市ルルイエなど、複数の作品で共有される設定群によって構成される。
ラヴクラフトが1920年代から1930年代にかけて発表した怪奇小説を中心に、オーガスト・ダーレス、ロバート・E・ハワード、クラーク・アシュトン・スミス、ロバート・ブロックら周辺作家が互いの設定を引用しながら発展した。
ラヴクラフトの死後も、世界中の作家やクリエイターが新たな神格、怪物、魔導書、土地、物語を追加。
小説だけでなく映画、漫画、アニメ、ゲーム、TRPGなどへ広がり、一人の作家が生み出した架空世界が、無数の創作者によって100年近く拡張され続ける「共有神話」となっている。
基本情報
- 英名:Cthulhu Mythos
- 原点となった作家:H・P・ラヴクラフト
- 成立時期:1920年代〜1930年代
- 主なジャンル:怪奇小説、ホラー、SF、コズミック・ホラー
- 代表的な存在:クトゥルフ、ヨグ=ソトース、ナイアーラトテップ、アザトース
- 代表的な架空文献:ネクロノミコン
- 代表的な土地:アーカム、インスマス、ダニッチ、ルルイエ
- 関連TRPG:『Call of Cthulhu』『クトゥルフ神話TRPG』
- 主な関連作家:オーガスト・ダーレス、ロバート・E・ハワード、クラーク・アシュトン・スミス、ロバート・ブロック
H・P・ラヴクラフトが生み出した架空の神話
クトゥルフ神話の原型を生み出したのは、アメリカの怪奇小説家H・P・ラヴクラフト。
1920年代から1930年代にかけて、怪奇小説誌「Weird Tales」などで作品を発表した。
代表作には、
- 「クトゥルフの呼び声」
- 「ダンウィッチの怪」
- 「インスマスの影」
- 「狂気の山脈にて」
- 「闇に囁くもの」
- 「時間からの影」
- 「魔女の家の夢」
などがある。
これらの作品では、同じ神格や怪物、架空の土地、書物などが作品をまたいで登場する。
ただし、ラヴクラフト自身が最初から詳細な設定集を用意し、一つの巨大な物語として「クトゥルフ神話」を構築していたわけではない。
個々の物語へ断片的な固有名詞や歴史を配置し、別作品でも同じ名称を登場させることで、作品の背後に人間には把握できない巨大な世界が存在するように感じさせる手法を取っていた。
複数の作家が拡張した「ラヴクラフト・サークル」
クトゥルフ神話が一般的な小説シリーズと大きく異なるのは、早い段階から複数の作家が互いの設定を自由に引用していたことにある。
ラヴクラフトは手紙を通じて多くの怪奇小説家と交流していた。
その周辺には、
- オーガスト・ダーレス
- ロバート・E・ハワード
- クラーク・アシュトン・スミス
- フランク・ベルナップ・ロング
- ロバート・ブロック
らがおり、後に「ラヴクラフト・サークル」と呼ばれるようになった。
作家たちは他の作家が考案した神格、魔導書、土地などを自身の作品へ登場させ、ラヴクラフト自身も他者の創作した固有名詞を自作へ取り入れた。
一人の作者が設定を厳格に管理するのではなく、互いの作品を引用し合う遊びから、実在しない巨大な神話体系が形成されていった。
『クトゥルフ神話TRPG』
日本でも『Call of Cthulhu』の翻訳版が1980年代から展開された。
2004年にはKADOKAWAから『クトゥルフ神話TRPG』が刊行。
2019年には、海外版の第7版をベースにルールを全面的に刷新した『新クトゥルフ神話TRPG』が発売された。
日本では特に2010年代以降、ニコニコ動画に投稿されたTRPGのリプレイ動画を通じて人気が拡大。
プレイヤー同士のセッションを字幕やイラスト、立ち絵などによって編集した動画が大量に投稿され、TRPGを実際に遊んだ経験のない視聴者にもクトゥルフ神話が広まった。
その後はYouTubeでの生配信文化へ接続。VTuber、ストリーマー、ゲーム実況者、声優らが参加するセッションも多数配信され、TRPGは「遊ぶゲーム」であると同時に「見るコンテンツ」へと発展した。
「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」
日本におけるクトゥルフ神話TRPGの動画文化を代表するシリーズの一つが、クリエイターのまにむによる「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」。
2010年代にニコニコ動画で公開され、個性的なキャラクター、テンポの良い編集、漫画的な演出などによって人気を獲得した。
後に活躍する多くのTRPG配信者/クリエイターにも影響を与え、日本におけるTRPGのセッションを「映像コンテンツとして見る」文化の拡大に貢献した。
『狂気山脈 ~邪神の山嶺~』
日本のクトゥルフ神話TRPG文化を代表するオリジナルシナリオの一つが、まだら牛による『狂気山脈 ~邪神の山嶺~』。
H・P・ラヴクラフトの「狂気の山脈にて」をモチーフに、エベレストを上回る未知の山脈へ挑む登山家たちを描く。
TRPG配信を通じて人気を獲得し、その後はマーダーミステリー、舞台、展覧会などへ展開。
さらにアニメ映画『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』の制作プロジェクトへ発展した。
海外の怪奇小説を源流とするクトゥルフ神話から、日本のクリエイターが独自の物語/IPを生み出した代表的な事例となっている。
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