私、架神恭介も、ド派手なCMをテレビでよく目にしている。 くっきー!氏はお笑い芸人として活動する一方、アート、音楽など各方面で多彩な才能を発揮している。そして、今回のモンストコラボでは敵キャラクターのデザインに留まらず、ステージ背景デザイン、BGM楽曲の作成、さらにキャラクターボイスまで手がけており、そのマルチな才能を遺憾なく発揮している。
いるのだが…… なるほど、怪物的熱狂の名に恥じぬアートワークである……。なんというか、露悪的というか、キッチュというか、地獄というか……。いや、とにかく、すごいインパクトだ。
私はただただ、その絵面の圧力に押されるばかりであった。だが、その時、後ろからこれを覗き込んだ妻が、思いがけない一言を発したのである。
「あ、かわいい」
と──。 女子の言う「かわいい」は玄妙にして不可思議なものであるが、とにかく事実として、くっきー!氏のアートワークは若い女性たちから一定の人気を確保している。
今回のコラボでもタイトルで謳っている通り、くっきー!氏のアートワークが怪物的であり、地獄的であるのは確かだが、それでいて同時に人を惹き付ける魅力をも備えているのだ。
なぜ、怪物的図像は人を惹き付ける力を併せ持つのか? 人を畏れさせ、同時に魅惑する力の秘密とは? この謎に立ち向かうには、もはや各分野の専門家の知恵を結集するしかない!
われわれは各方面へ助力を緊急要請し、ここに3名の専門家が集結した!
326氏
まずはプロイラストレーターの326氏。氏からは同業者としての見解を聞くことができるだろう。池上英洋先生
次に、西洋美術史学者、池上英洋先生。西洋美術の歴史はくっきー!氏のアート性を解体できるのか?そして、三人目……! 地獄に立ち向かうには、やはりこの方の助力は欠かせない!
稲田ズイキ氏
そう、仏僧である。浄土宗から、僧侶の稲田ズイキ氏が来てくれた!326「くっきー!さんは狂っている」
われわれが、まずお話をうかがったのはプロイラストレーターの326氏だ。 独自性の強い作品を打ち出す氏の芸風はくっきー!氏に通じるところがあるのではないか、326氏ならばくっきー!氏のアート性を紐解けるのではないかと、われわれは考えたのだ。だが、くっきー!氏のアートを提示した途端、326氏はじっとイラストに見入り「狂っている……狂ってますね……」と何度も呟き始めた。い、一体、どういうことなのか……?
「芸人さんで絵を描く、というと、キングコングの西野亮廣さんとくっきー!さんが二大天才だと思うんですけど、西野さんが頭のキレる天才だとしたら、くっきー!さんは頭がキレてる天才です。
西野さんはロジカルなのでまだ考えてることが分かるんですけど、くっきー!さんは異次元で四次元なので、想像もつかない、こんなもん敵うわけがない、という感覚なんですよ。自分じゃ絶対できないようなことをされると驚くしかないっていうか、同じ人間じゃない、っていうか……」
「くっきー!さんは本来理解されない天才です。ただ、いま日本人も、まあまあ全員狂ってきてるので、くっきー!さんが理解されるという珍しい現象が起こっています。本来であれば理解されないまま野垂れ死ぬタイプの天才です。だって、全然時代に合わせに行ってない。それなのにたまたま時代の方がシンクロしてピントが合っちゃった(笑)。こんなもんただの事故です(笑)。なのできっと御本人的にも『え、マジで!?』という感覚だと思います」
「気が狂っている人たちが、お金を持つ時代になったということですね……。モンストの運営の人たちもいい意味で相当狂ってますよ(笑)」
「もともと世界と比べても日本のエロ漫画とか薄い本(同人誌)とかでは狂ってるのは多かったんですよ。アートの方でもグロとかは昔からありました。けど、そういうサブカルとかアングラだったものが、ネットの発達や趣味の多様化でオープンになってきて、なんならちょっとオシャレにすらなってきた。
くっきー!さんの狂った世界観も少しだけ『原宿化』してるんですよ。くっきー!さんのアートワークを見て、『あ、原宿だ』『JAPANだ!』って思う人もいる。そういう時代になってる」
「あの人、『ザ・ワールド・チャネリング』(注:野性爆弾の冠番組)では道に落ちてる木の枝とか普通に拾って食ってますからね。観てる僕らは腹抱えて笑ってますけど、横にいるタレントは全員ドン引きしてましたよ」
「……だから、狙ってはないけど、本当はもっとリミッター外せるところを少しだけブレーキ踏んでるとは思います。社交的な変態というか。少しスピードを緩めることで達人の動きがギリギリ常人の動体視力で追えるようになるというか」
というのは、326氏はくっきー!氏のイラストを「狂っている」「真似できない」と言うが、われわれ絵の素人からすると、どんなイラストレーターの作品であっても等しく真似ができないので、絵のプロが「真似できない」というのがどういう感覚なのか分からないのだ。
「僕の絵もくっきー!さんの絵も技術的にはそこまでメチャクチャ高いことはやってないので、小学生でも模写はできるんですよ。でも、まだ見ていないくっきー!さんの作品は誰もつくれない。だから真似ができない。それって実は一番大切で難しいことでもあって、子供でも模写できるけど、326風やくっきー!風の新しい作品は誰も生み出せない。それが作家として一番正しい距離感だと思ってます」
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