ここ最近、アニメの企画プロデュースを生業とする筆者のもとに、そんな感想が届くことが増えてきた。
昨今、学生の自主制作アニメのクオリティーは、驚くべき速度で上がってきている。
今回はそんな今を輝く3人の学生アニメ作家たちをピックアップして紹介したい。
まるで動く絵本! 現役美大生 鮮ナヲキ
現役美大生・鮮ナヲキさんが文化祭で公開した短編作品『FLYER』。まるで絵本がそのまま動いているかのような、なめらかかつ鮮やかなアニメーション表現が特徴だ。
文化祭での公開後、ニコニコ動画でWeb公開すると、「45秒で引き込まれる世界観」と、ニコニコ公式Twitterでも取り上げられ、公開から4日で1万回再生を突破した注目作だ。
鮮ナヲキさんがアニメーションづくりを目指したきっかけは、スタジオジブリ作品の影響によるものだという。
本作を制作するにあたり、アニメの技術はほぼ独学で学び、一番の教本は『ハウルの動く城』の絵コンテだったそうだ。 現在は、映像制作チーム「UNDER PINE」にて、新しい短編アニメ作品を、大学の友人たちと共同制作している。
鮮ナヲキ:Twitter
映像制作チーム「UNDER PINE」:Twitter
商業レベルのロボットアクション?! 現役専門学生 悠木意匠
専門学校HAL東京に通う、悠木意匠さんの監督作品『MONOLITH』がTwitterで話題になった。本作は、学校の進級制作展での上映作品として、5か月という短い期間で制作された。
声優、音楽、グラフィックという異なる分野と連携し約50名のスタッフとともにつくり上げたという。
悠木意匠さんは、自身でブログも開設しており、「監督としてどういう点を意識して、画づくりをしているのか?」もより詳しく語られている。こちらも必見だ。作品のテーマは”人と機械の友情”いわゆるバディもの。
主人公は口うるさい相棒に『自分は認められていないのではないか』という想いを抱えています。そこから、一人ではどうしようもない”強敵との戦いを通してお互いの信頼を得る”という形です。
「テーマは常に語られるべし」ということを意識し、最初の喧嘩の内容から最後に呼称が変わったことまで、全てテーマに繋がっています。
分かりやすさが加わるのはもちろんですが、全ての要素が1つのテーマに収束されることで共感され強く感情に訴えることができる映像になるのだと思います。
悠木意匠:Twitter/ブログ
等身大の葛藤が描かれる! 現役高校生 するめ
最後に紹介するのは、現在宮崎県の高校に通う、現役高校生アニメ作家・するめさんの作品『蝉の声、風のてざわり / The Sound of Cicada, Touch the Wind』だ。単純な手書きアニメだけでなく、実写加工にロトスコープ、3DCGなども巧妙に組み合わせた全く新しい映像体験である。
するめさんの作品は、本作や過去作においても数々の映像コンペで評価を得ており、今後の伸びしろが計り知れない作家だ。磯光雄さんの作画に大きな影響を受けました。見ていて心地いいだけでなく、その奥に人の心が見える素晴らしい絵の数々に一目惚れしたんです。原画集とにらめっこしながら、感情のこもった表情や姿勢について頭を悩ませつつ描き進めていったシーンです。
また、主人公が叫ぶまでの“間”は『エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督の演出手法にインスパイヤされてつくったものです。観客にごくりと唾を飲ませる、あの”生の時間の演出”は初めて見たときからずっと印象に残っていました。
自分の作品は、今まで自分が見てきたアニメ作品の断片や、エッセンスをもとに制作している意識があります。
するめ:Twitter/公式サイト【入賞歴】
・『蝉の声、風のてざわり』 (2019)
つくばショートムービーコンペティション2020 ワコムスチューデント賞
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2020 U-25 プロジェクト ノミネート
・『春って、不思議な季節だ。』 (2019)
DHU U-18アーティストコンテスト 2019 Grand Prize/映像部門 First Prize
全国大学動画アワード2019 審査員特別賞
新しい時代のアニメ作家たち
いかがだっただろうか?ここで紹介したのは本当にごく一部であり、日本国内だけで見ても、今後のアニメ業界を背負って立つような期待の新人クリエイターが続々と現れている。
昨今の若手アニメ作家たちの傾向として、始めからデジタル作画や3DCGにも精通しているケースが多く、従来の古式ゆかしいアニメーション表現とは、つくり方の部分から大きく異なる価値観を持っている場合が多い。
このような新しい才能が、今後アニメ業界にどんな影響を与えていくのか?
彼/彼女らの今後の活躍と合わせて、注目したいポイントである。
自主制作アニメについてはこちらも
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