連載 | #1 ギャルが生きた30年史

AIKAが表現する90年代 電子部族化したギャルが現れるまで

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AIKAが表現する90年代 電子部族化したギャルが現れるまで
AIKAが表現する90年代 電子部族化したギャルが現れるまで

速水健朗「ギャルが生きた30年史」第1回1990年代/モデル:AIKA

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POPなポイントを3行で

  • ギャルが生きた30年間を速水健朗が総括
  • セクシー女優・AIKAが1990年代ギャル演じる
  • 電子部族化した現代のギャルが生まれるまで
女性における日本特異の文化として、時代の流行とも絡みながら平成の30年間に独自の変遷をたどってきた「ギャル」。

振り返れば常にギャルがいた平成から令和を迎え、その元年が終わろうとするいま。2020年という新たな10年間を前に、1990年代/2000年代/2010年代と時代を彩ってきたギャルを、写真とテキストで振り返る。 書き手は1973年に生まれ、『ケータイ小説的。』(2008年)で浜崎あゆみさんらギャル文化の象徴とケータイ小説との密接な関係に切り込んだライターの速水健朗さん。『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』や『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』など幅広い分野で多数の著書を持つ。

モデルは、ギャル女優として活躍するセクシー女優のAIKAさんと今井夏帆さん。ギャル文化をリアルタイムで経験してきた2人が、各年代のJKギャルを演じる。

第1回目はAIKAさんが1990年代のギャルを表現。当時のギャルを取り巻く環境を解説する速水さんの文章とともに、みなさんそれぞれが経験してきた(または未体験の)ギャル文化に思いを馳せてほしい。

文:速水健朗 モデル:AIKA 撮影:宇佐美亮 スタイリスト:細谷文乃 編集:恩田雄多

【画像】AIKAさんによる90年代ギャルをもっと見る

「みんなが知ってるギャル」が生まれるまで

当時、リボンの紐を限界まで長くしていたという人も多いはず

ギャルはいつ誕生したのか。1990年代の話をする前に、もう少し前の時代に触れておこう。1980年代前半までは、元気な女子大生たちが「ギャル」だった。当時は女子大生ブーム。まだ女性の4大進学率が低く(10%台)、希少価値としてメディアがもてはやしていたのだ。

それが80年代後半のバブル期になると、ディスコでボディコンで弾ける“イケイケギャル”が登場してくる。ゴルフをしたりモツ鍋が大好きな新しい時代のOL=「オヤジギャル」(※1 中尊寺ゆつこ『スウィートスポット』連載開始1989年〜)という語もバブルの最中に生まれている。彼女たちは、男女雇用機会均等法が制定された直後のOLたちである。 なんか、わたしの知ってるギャルと違う」と思う人は多いはず。この時代のギャルは、マスメディアが持ち上げる一番元気な女の子でしかない。90年代に生まれてきたギャルは、彼女たちとはちょっと別の種族なのだ。

明るめの茶髪、短いスカート、ルーズソックスという90年代ギャルの定番スタイルを最初に始めたのは、有名私立の遊んでいる高校生たちである。彼女たちは高級カジュアル、LA辺りのセレブを意識したファッションで身を固めており、コンサバファッションに身を固めた80年代のイケイケギャルの真逆だった。

おそらくは反発心があったのだろう。小麦色に焼いた肌、明るい茶髪、短いスカート丈などは、その辺りから生まれたスタイル。彼女たちは、最初から目立っていたわけではなく、80年代末に登場した渋カジ族、90年代のチーマーといった“目立っていた男の子たちの彼女”的な存在でもあった。

腰にセーターを巻くのも90年代を象徴するスタイルの1つ

これも「わたしの知ってるギャルと違う」と思うかもしれないが、それも正しい。彼女たちがそのままギャルになっていったわけではない。彼女たちは、そのファッションを卒業して単にハイソなセレブになっていく。だが一方で、彼女たちが見つけ出した派手なスタイルは、周辺の女子高生たちに伝播する。

そして、競争の要素が加わる。スカートはより短くなり、ルーズソックスはより長くルーズになる。“通俗化”し、その後“極端化”し、さらにそれが全国区で“標準化”されていく。ファッションの普及形態ではよく見られるルーティーン。結果、当初のセレブ寄りだった有名私立の女子高生ファッションは、ギャル(当初は“コギャル”)の標準的スタイルになったのだ。

ギャル文化は、高校の制服に関する校則が厳しかった時代に始まっている。スカートの丈は、自分で詰める。シャツや靴下は指定のものではなく、当時、大流行したポロ・ラルフ・ローレン(POLO RALPH LAUREN)。のちに「ルーズソックス」が発売されそちらがメインになるが、もともとは90年前後に流行した、高級カジュアルブランドの靴下をたるませて履くのがルーツだ。

白のダボッとしたニットベストも、ラルフローレンのワンポイントロゴ入り。こうした着崩しが基本にあった。バーバリーチェックのマフラーも超定番。本物のバーバリーは、結構お高いので、激安スーパーで売っている謎の模造品も出回っていた。腰にベージュのカーデガンを巻くスタイルもあった。バッグは、ポスカでデコった他校(男子校)のナイロンのバッグを持つのが流行した。

多くが自分たちで見つけ出したスタイルであり、業界やメディアが仕掛けたものとは違った、“ストリート発”の文化と言っていい。それだけではない。茶色のローファーやボタンダウンシャツ(ときにポロシャツ)といったアイテムからは、アメリカ東海岸のアイビースタイルが基本にあることもわかる。なぜギャルのルーツにアイビーがあるのはなぜか。そもそものハイソを着崩すというルーツの残存かもしれない。

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ギャルが生きた30年史

女性における日本特異の文化として、時代の流行とも絡みながら平成の30年間に独自の変遷をたどってきた「ギャル」。 振り返れば常にギャルがいた平成から令和を迎え、その元年が終わろうとするいま。2020年という新たな10年間を前に、1990年代/2000年代/2010年代と時代を彩ってきたギャルを振り返る。 書き手は1973年に生まれ『ケータイ小説的。』(2008年)で浜崎あゆみらギャル文化の象徴とケータイ小説との密接な関係に切り込んだライターの速水健朗。 象徴的なアイテム・制服をまとい各年代のギャルを演じるモデルは、ギャル女優として活躍するセクシー女優のAIKAと今井夏帆というギャル文化をリアルタイムで経験してきた2人。 当時のギャルを取り巻く環境とその中で彼女たちが武装化、部族化、ハードボイルド化していったのか。それぞれが経験してきた(または未体験の)ギャル文化に思いを馳せてほしい。

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