それからわずか5ヶ月で2ndアルバム『Amon Katona』をリリースし、さらには、冠ラジオ番組「RYKEYと愉快な言葉達」を放送開始した。
2016年には、KANDYTOWNのIOさんらと共に参加したラッパー・SIMONさんの楽曲「eyes」も話題となり、コアなヒップホップファンからの支持を確かなものにした。
関係者は冗談混じりに「免許合宿」などと説明したが、もちろん、真に受けるヒップホップファンなどいない。「期待されていたラッパーが突如音信不通になって姿を消し、関係者が言葉を濁す」という出来事は、過去に何度も経験済みだからだ。
様々な憶測が飛び交ったが、結局、公式の発表がないまま約1年もの月日が流れた。
そして2017年7月、久しぶりにRYKEYさんのTwitterが更新され、彼の活動は再開された。 KAI-YOUでは、空白の1年を経て姿を現したRYKEYさんをインタビュー。ことの真相やプライベート、11月8日にリリースされた復帰作のEP『CHANGE THE WORLD』についてもうかがった。
取材・文:山下智也 撮影:Kenji.87
空白の1年に何があったのか?
──1年ぶりの復帰です。復帰してから、親交のあるラッパー、SALUさんや漢 a.k.a. GAMIさんらからは何か連絡をもらいましたか?RYKEY やっぱり、SALUをはじめみんなが、「RYKEYが帰ってきて新しいシーンがつくられるね」みたいなことを言ってくれて、嬉しかったですね。
──以前から知られていましたが、今になってなぜかRYKEYさんと紅蘭(草刈正雄の実娘でタレント)さんとの交際がまたメディアで取り沙汰されています。
RYKEY 「狙ってたんじゃないの?」というぐらいのタイミングでしたよね。1人でも多くの人から注目してもらえるなら、それはそれで嬉しいです。
自分もダサい音楽やってるわけじゃないですし、自信持ってやってるんで。ヒップホップを知らない人に知ってもらう、すごくいい機会だと思いますよ。
──空白の1年について、漢 a.k.a. GAMIさんがネット配信番組「漢たちとおさんぽ」で『RYKEYは免許更新に行っている』とも言っていました。実際この1年に何があったんでしょうか?
RYKEY 漢くんは決して嘘は言ってないですよ。人間免許を更新しにいきました(笑)。
──なぜ人間免許の更新に行かないといけなくなったのですか?
RYKEY それは、週刊新潮を見てください(笑)。(外部リンク)
──(笑)。報道されているだけではなく、SNSでも紅蘭さんとの交際を公にしてますが、プライベートを隠さない理由はあるのでしょうか?
RYKEY 世の中的には、同じ土俵で見るのかもしれないですけど、自分は、タレントでもなければ芸能人でもなくてラッパーなので、自分のスタイルで生きていこうと思ってます。
向こうも公にして構わないスタイルなんで、別に良いんじゃないかって思います。
あと、自分が思うラッパーって生活からラッパーなんです。そうじゃないと、実際にラップって生まれてこないと思うんですよ。 ──RYKEYさんがおっしゃるラッパーの生活ってどういったものなんですか?
RYKEY 逆にどういうのがラッパーの生活だと思います?
──そうですね…いつも仲間といて、夜になったらクラブにいって、とか。
RYKEY 自分が思うラッパーは、他の人以上にいろんな感情を背負って生きてきた人のことだと思ってます。
誰でも言えるようなことを歌うラッパーって評価されないじゃないですか。でもラップに限っては、過去の過ちを歌って、唯一評価される音楽じゃないですか。
言ってしまえば、例えば昔、いじめられてたことを歌うのも、昔は悪いことしてたけど今はこうだぜと歌うのも立派なラップだと思いますし、人が聞けないようなことを聞けるのがラップの音楽だと思っています。
そうじゃないですか?
──僕もリアルな経験を歌うラッパーが好きでよく聴きますね。
RYKEY 普通には仕事できないような人たちが、それでも真面目に生きていかないといけない。「じゃあ、どうする?」ってなった時に、土木作業員かヤクザかラッパーになるみたいな選択肢しかなかったんですよ。
最近は世の中も変わってきてますが、自分が子供の時から見てきたラッパーや海外のシーンはそうでした。だから、2PacやBiggie(The Notorious B.I.G.)を見て、真面目に生きていけない人たちがやる音楽(がラップ)だと思ってました。
自分はそこに憧れて、海外の真似をしすぎちゃいましたね。「ラッパーてどんな生活なの?」って言われたら俺しかいない。そのままなんですよ(笑)。
──ですが、日本のヒップホップシーンは今、「高校生ラップ選手権」や「フリースタイルダンジョン」の影響でラップを始める敷居が下がって、これまで以上にオタクやナードなラッパーなども増えてます。そんな中で、ハードかつリアルな内容をラップしているRYKEYさんは一線を画す存在だと思いますが、自分を客観的にみると、どこが評価されていると思いますか?
RYKEY 経験してることは、詳しく言えるじゃないですか。
自分の音楽は、他の人が経験したことないようなことを経験した上で、映画などで見たことあるような話通りで、それを偽りなく言葉に出しているところが評価されてるんじゃないんですかね。
J-POPが好きな人も聴ける『CHANGE THE WORLD』
──今作のEP『CHANGE THE WORLD』ですが、タイトルの意図は?RYKEY 今回のEP買ってくれた人は、これまでの自分の荒削りなラップとは違うんで「あれ?」ってなるかもしれないですけど、音楽家として、いつまでも同じことやっていても楽しくないわけですよ。
音楽という以上、音を楽しみたいですし、新しいチャレンジとして「自分の中の世界も変わっていってる」という意味でこのタイトルになりました。
──MVが公開された「Walk」をはじめ、これまでのハードなイメージを覆すChill系や、爽やかで明るいサウンドの曲が目立ちますが、サウンド面でもこだわった点はありますか?
RYKEY 今までと一緒じゃなくて、「誰かが真似しだしちゃうやつをやろうよ」というテーマで、最先端をいくようにプロデューサーと共に意識しましたね。
今まで自分がやっていた音楽って、好きな人には分かる音楽だったと思います。だけど、今作に限っては、ハードコアなヒップホップが好きな人以外にも聴いてもらえるような音づくりに励みました。
RYKEY この1年いなかったですけど、今回のEPのクオリティーはハンパなく高いと自負しているので、音楽を本当に好きな人だったら「RYKEY、すげー進化したね」と思うんじゃないですか。
音楽に関しては、これが良いあれが良いっていうのはないと思うんですよ。
例えば、今回のEPが好きな人がいれば、前のアルバムを好きな人がいるように、今作を好きになった人も前のアルバムを掘り下げて好きになってくれたら良いと思いますし、前の作品を好きな人も、新しい音楽も好きになってくれたら嬉しいですね。
また昔みたいなラップをやりたくなったらやりますし、新しいことをやるにあたって怖さや人の目を気にしたりもすると思うんですけど、そこをずっと気にしてたら何もできないので、自分は自分だなって思ってます。 ──ヒップホップメディア「Amebreak」のインタビューでは1stアルバム『Prety Johns』で20代、2ndアルバム『AMON KATONA』で30代に響かせるイメージでつくったというお話がありましたが、今作は意識した世代、または聴いて欲しい世代はありますか?
RYKEY ラッパーって、刺青があるからワリぃんだろうなとか偏見を持たれてるんですよ。実際、その通りなんですけど(笑)。
だけど、そこの偏見を今回のEPでパッと変えたかなというのがありますね。
どうしても自分は、ハードコアな言葉で力があるような、哀愁漂うラップが好きなんですけど、今回それをやっちゃうと、復帰後というのもあって少し重いかなあって。
耳から心に入りやすい気持ちいいEPなので、いろんな世代や層に、ジャンルで言ったらJ-POPが好きな人にも聴いてもらえるものだと思ってます。
──色んな世代や層というお話もありましたが、曲をつくったら両親などご家族に聴いてもらったりするんですか?
RYKEY 自分は家族をファンにしてから音楽活動もスタートだったので、家族すらもファンにできない人って、はっきり言って音楽をやる必要ないと思ってます。
昔、家でヒップホップの映像を見てたときに「こんな悪い話ばっかりしてて変な歌を聴いてる」と親に言われました。
もちろん、その時は、親も自分の音楽活動を応援してくれなかったですけど、『Pretty Jones』をリリースしてからは、自分からCD渡さなくても勝手にチェックしてましたよね。
家族だからCDを買うとかじゃなくて、RYKEYの音楽が好きだから買ってるんじゃないですか。だから、嬉しいです。
盟友SALUとの出会い
──1番思い入れのある曲はありますか?RYKEY 全曲に思い入れがありますが、強いていうならば3曲目の「SKY TO DIE feat. SALU」です。
これは、1番短い言葉の中にたくさんの想いが込められていて、聴く人に沢山の想像力を与えると思います。
──その「SKY TO DIE feat. SALU」は、題名からしてもRYKEYさんの「BABY」やSALUさんの「Dear My Friend」に出てくる”空”というフレーズがキーとなっているのかと思いましたが、SALUさんとコンセプトを決めてからつくったんですか?
RYKEY お互いのストレートな言葉を落とし込みたかったんですが、自分でも難しい歌をつくちゃったなあという感じです。
「空が遠くに見えるよ、空が青すぎて今日は死にたくなるよ」という歌詞は、病んでる人にも聞こえるし、これ以上ない幸せな人にも聞こえますからね。
SALUには「こんな感じで書いたんだけどどう?」って聞いたら「やばいじゃん」って言ってくれて。
SALUとは、お互いがお互いを認め合ってる関係性だと自分は思っているので、お互い、特にああしてこうしてというのは、なかったですね。SALUからも信じてた通りのリリックが来たんで、期待通りだなっていう感じです。
RYKEY 実際、本人にしか分からないでしょうね。自分に対して歌っていると意識して聴いたら、そう思いますね。あれは、メッセージ性が強くて、こういうことがラップなんだと考えさせられました。
──お互い言及せず、胸の内に留めておいた?
RYKEY 「お互いラッパーだから言いたいことを曲にするのが当たり前でしょ?」みたいなことをSALUも言ってたんで、別に深くは聞いていません。
──そもそもSALUさんと出会ったきっかけは何だったんですか?
RYKEY SALUが昔、厚木の「あぐらCREW」っていうチームで活動してて、その頃からライブに遊びにいってて。
格好もその頃と今とでだいぶ変わってますね。昔、SALUはすげえダボダボの服着てたんですよ(笑)。
俺も知り合いの先輩がいて、SALUもその時、先輩の金魚の糞みたいにいたので、お互い同じ立場で「いつか俺たちもCD出して」という話をしてました。
10代から知っている人と、20代でも一緒に音楽をできてるというのは嬉しいですね。お互い夢が叶って、いい形で出来てると思いますね。
前向きに生きていこうと思うきっかけになれば
──「この人たちに向けて書いた」という曲はありますか?RYKEY 今回、広い視野のものごとを書いたと思っているんで、あえていうなら「HATE YOU」ぐらいですかね。
「誰のこと言ってるの?」となると思うんですけど、ここで言っちゃうと喧嘩になっちゃうんで言えないです(笑)。
──想像を巡らせることにします(笑)。2曲目はJP THE WAVYさんと一緒にされてますが、これはRYKEYさんから声をかけたんですか?
RYKEY 戻ってきてからJPを知って、こんな面白いやつもいるんだ、新しいじゃんと思いました。
たまたまJPも自分のことを好きでいてくれて、お互いの意思が疎通しあったんで、新しいのやろうよという感じで一緒にやりましたね。
そもそも、自分とJPがやるっていうことがリスナーは想像できないと思うんですよ。だけど、ここでJPを取り入れたってことは「そういうことなんだよ、分かってよ」って思います。
──RYKEYさんを見てると人当たりが良くて、フットワークも軽いというイメージがあります。Instagramでも、Spikey Johnさんと一緒にMVをやりたいと言っていて、その直後に実際に2人で写真を撮ってましたが、Spikeyさんとつくった新たなMVのリリースはあるのでしょうか。
RYKEY いや、特にないんですが、今後タイミングがあればやりたいですね。
本当にSpikeyだけでなく、若くて才能ある人って沢山いるんで、一緒に仕事できたら嬉しいです。
──先日は、唾奇さんともインスタライブを一緒にされてましたよね。
RYKEY 今のシーンで頑張ってる人たちって『Pretty Jones』のファンが多いんですよ。だから、好きな人と一緒に音楽をできることに関しては、音楽家として光栄なことですよね。
──最後に、今後の夢や目標をお聞かせください。
RYKEY 自分の音楽が生活の一部になって、前向きに生きていこうと思うきっかけになってくれることを僕は望んでいるので、1人でも多くの人に聴いていただけるような音楽づくりを今後も続けていきたいです。これからもよろしくお願いします。
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RYKEY
ラッパー
1987年、日本人の父とケニア人の母から生を授かり、東京都八王子で生まれる。中2で地元のギャングの一員に。17歳の頃、八王子にあるClubでギャングの先輩のライブを見たのがきっかけでラップを始める。2008年、音楽プロデューサー・JIGGさんと出会い、共に楽曲制作を始める。2012年AKLOさんの代表曲「Red Pill」のRemixにSALUさんと参加しその名を広めた。2015年6月には待望の1stアルバム「Pretty Jones」をリリース。それから5ヶ月と言うスピードで2nd アルバム「Amon Katona」もリリースし、冠ラジオ番組『RYKEYと愉快な言葉達』放送開始。2016年にはSIMONさんの楽曲「eyes」にKANDYTOWNのIOさんと共に参加。約1年の空白期間を経て2017年11月、復帰作のEP『CHANGE THE WORLD』をリリースした。
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