連載 | #23 『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』特集

【闇】ポケモンの育成済み理想個体がメルカリで大量出品されている話

【闇】ポケモンの育成済み理想個体がメルカリで大量出品されている話
【闇】ポケモンの育成済み理想個体がメルカリで大量出品されている話
自分の身の回りにあるものを気軽に販売することができるサービス「メルカリ」において、『ポケットモンスター サン・ムーン』のポケモンたちが販売されていることが分かった。

メルカリ上にて「ポケモン 理想個体」と検索すると、いくつものポケモンたちがヒットする。相場は1匹につき300〜500円程度。なかには6匹で600円といった格安のセット販売を行っているユーザーも見受けられた。

対人戦での人気ポケモン「ガブリアス」の育成済、理想個体も300円で売られている

メルカリで本来販売されていそうな、いわゆる「ポケモングッズ」に相当する膨大な量のポケモン(データ)がやりとりされており、実際に売約が成立しているようだ。なぜこんなにも育成済のポケモンが出品されているのだろうか?

競技化が進む「ポケモン」の裏で発生した闇ビジネス?

はじめに言っておくと、メルカリ上において、SNSのIDやパスワード、あるいはデータといった「物品ではないもの」の販売は規約によって禁止されている(事実、すでに閲覧が不可能になっているページも散見された)。

過去にも『Pokémon GO』のアカウント販売などが話題となったことが記憶に新しい。 「ポケットモンスター」では、インターネット通信を用いた対人戦「レーティングバトル」が盛んになっている。その熱は日本だけでなく全世界に普及し、海外のコミュニティでは有志によるE-Sports化、つまり賞金のかけられた競技化もすでにはじまっている。 最新作『ポケットモンスター サン・ムーン』が発売される以前からずっと、対人戦の熱はすさまじいものがあり、パーティーの構築や戦術などが日夜、コアなユーザーによって研究され続けていた。それによって、「ポケモン」は子供向けのゲームだというパブリック・イメージがありながらも、実際には超コアなヘビープレイヤー向けのゲームという側面も持っている。
ポケモンのレーティングバトルの実況動画(もこうさん)
結果、「対戦で強いポケモン」を使って「高度な戦術」でプレイしなくては、インターネット対戦において勝利することは困難を極め、低年齢のプレイヤーやポケモンというゲームに触れたばかりの人にとっては、非常に敷居が高くなってしまっているのが現状だ。

「対戦で強いポケモン」をつくるには時間がかかる

冒頭に記述した「理想個体」という言葉だが、これは対戦で人気の「型」を実現するにふさわしいステータスを持つポケモンのことを指す。簡単にいえば、スピードで先手必勝の戦法をとるポケモンなら、「すばやさ」のステータスがMAXのポケモンが「理想個体」だ。

正直言って、この「理想個体」=「対戦で強いポケモン」を育てるのには時間がかかる。

これは自称ポケモン中級者の筆者のケースではあるが、育成を効率よくするための環境づくりに10時間以上費やした後に、そこから1体強いポケモンをつくるのに、ポケモンの種類にもよるがどんなに急いでも2〜3時間はかかっている。

6匹のパーティーをつくるのには、半日以上ぶっ続けで集中力を途切らせることなく、寝食を我慢しつつプレイし続けなくてはならない。

これはコアなポケモンプレイヤーであれば、慣れもあって別に不可能なことではないが、一般的なゲームプレイヤーには荷が重いだろう。仕事が忙しい社会人などにもなかなか難しそうだ。

そういった背景があってか、安価でラクに強いポケモンを手にいれることができる「メルカリ」のポケモン販売に手を出す人もいるという。今回、「メルカリ」で実際にポケモンを購入したことがある人に話を聞くことができた。名前を田口さん(仮名)とする。

「悪いこととは感じつつも、つい手を出してしまった」

──「メルカリ」でポケモンを購入したのはなぜですか?

田口さん(仮名) 育てるのも好きなんですけど、仕事も忙しくて時間もない中で、ぶっちゃけめんどくさいと言えばめんどくさいので。対戦でも有利になるので、欲しいと思いました。

──田口さんは「メルカリ」でゲームデータの販売や購入が規約違反なのは知っていた?

田口さん(仮名) それは本当に知りませんでした。でもお金で買ったポケモンを使うことに、罪悪感はあります。

──購入したポケモンを教えてください。

田口さん(仮名) 色違いの5V(最遅)ゆうかんダダリンです! トリパのエースになりそうです(「トリパ」とは技:トリックルームを軸にした戦術を使うパーティーのこと。すばやさの遅いポケモンで構成される)

メルカリで購入したというダダリン。この画像と同じく、色違いだったようだ

──購入に際し、出品者とはどのようなやりとりがあるのですか?

田口さん(仮名) お金を振り込んでから、出品者とメッセージでフレンドコードを交換→時間を合わせて交換という流れです。ニックネームをつけ直してもらえないか相談もできました(※ポケモンのニックネームは育て親でないと変更できない)

──今後も利用しようとは思いますか?

田口さん(仮名) 厳しく規制されない限りは、今後もまた手を出しちゃうと思います。ただ心配なのは、このポケモンが「改造」でつくられたものなんじゃないかって。そうしたら多分、公式大会とかでは使えないですもんね……?

──さ、さあ・・・どうでしょう・・・?

「メルカリ」規約違反の上に、改造ポケモンも出回っていると思われるので絶対に利用しない

大事なことなのでもう一度書くが、「メルカリ」で実体のないもの、ゲームデータのやりとりを行うのは規約違反だ。

さらに──これは実際に買って確かめたわけではないので筆者の所感でしかないが──「メルカリ」で流通している理想個体ポケモンの多くは改造(チート行為)でつくられたものだと推察される。

「ポケモン 理想個体」のメルカリ上での検索結果

例えば、田口さん(仮名)が購入した理想個体の色違いダダリンなんて、とても2〜3時間で育成することはできない。1週間ぶっ続けでポケモンをプレイし続けても出るかどうか怪しいところだ。そんなポケモンを300円で販売するのは、どう考えても損益の辻褄が合わない(買うほうにとっては最高だが)。

改造されたポケモンのデータについては、「ポケットモンスター」運営側も幾度となく、大会に出場できない等の措置を施してきた。そういったリスクがある中、改造ポケモンを使うのは得策とは言えないだろう。

「ポケットモンスター」の対人戦は、シリーズを重ねることに複雑化し、戦術性が上がっている。それは本当にスリリングで、頭脳を使った対決が味わえる面白いゲームだ。

しかしその裏で「楽をして勝ちたい」という思いからか、ネット上で販売されるポケモンに手をだしてしまう人も増えている。正直、僕も自称中級者としてそういう人の気持ちがわからないでもない(勝つのは本当に難しい)。

ただし、自分で育てた自分の好きなポケモンで勝つ、それがポケモン本来の楽しみで、ほかのゲームではなかなか味わえない快感となっているはずだ。競技性の高まりとともに、『赤・緑』の発売から20年が経ってもさらに加熱していく「ポケットモンスター」。その文化を廃れさせるのも発展させるのも、プレイヤーの良識にかかっている。

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連載

『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』特集

「ポケットモンスター」シリーズ最新作として、11月17日に全世界一斉発売された『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』(『US/UM』)。 2016年にリリースされた『ポケットモンスター サン・ムーン』(『SM』)の続編となるだけでなく、これまでの作品の集大成となるような、さまざまな要素が明かされています。 老若男女、世界的に愛されている日本発のポップコンテンツ「ポケットモンスター」最新作に、KAI-YOUでも様々な切り口から迫ります。

2件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:2127)

時間がない社会人がポケモン対戦楽しみたいとなったらポケモン売買に手出すしかないと思うんだけどな
改造やってる側も正規ポケとしてレート対戦時に審査すりぬけられるよう調整したりだのそもそも技術必要だから正当な商売だと思うよ
マジコンとか規制で出来なくなったって聞くし誰でも手軽に出来る改造機が出来なくなったと仮定した場合の話だけども

surarox9

ナヌ

現在メルカリではアカウントの売買は容認されてますよ