違法行為のしやすい環境が整ってきている
──こうしてお金と手間をかけ、積極的に対策を進める中で、違法アップロードやダウンロード自体は、減っていっているのでしょうか?河合(専門企業担当者) ネットワークのスピードやPCスペックの向上、オンラインストレージサービスが安く使えるようになったことなどにより、数年前に比べて違法行為をしやすい環境が整ってきてしまい、減っているとは言い難いのが現実です。
しかし、我々もそれに負けるわけにはいかず、世界中の違法コンテンツをより迅速に正確に、特定と削除ができるように内部リソースの充実と強化を進めています。
また、サーバー環境の改善やネットワークの強化、Googleなどの検索エンジンとの連携も図っていて、現にGoogleは2014年3月に、違法コンテンツを提供しているWebサイトの表示ランキングを下げる施策を行ってくれています。
違法コンテンツをネット上から撲滅することで、正規版が全世界に流通し、海賊版や違法コンテンツのダウンロードユーザーが正規ユーザーへと移行する流れをつくっていければと思います
──対策をはじめてから、どのくらいの効果が得られているのでしょうか?
長井(同社権利部担当者) 2014年5月から2015年5月までの1年間に違法アップロードされた新作においては、Torrentのダウンロード阻止数は1億3,000万件以上、Googleなどの検索結果からダウンロードリンクを削除した件数は2,900万件以上、不特定多数にファイルを配信することを目的としたオンラインストレージサービス・サイバーロッカーのリンクの削除数は1千700万件以上など、かなりの違法コンテンツを削除できています。
金額に換算すると、サイバーロッカーとTorrentファイルの合計だけで956億円以上の損失を未然に防ぐことに成功しています。
違法アップロード・ダウンロードは罪になるということをわかってほしい
──違法コンテンツを検知し、削除しても、やはり違法アップロードを行う人がいなくならないとイタチごっこになるばかりですよね。長井 そうですね……。対策にかかる費用も年々増えていて、対策を始めた当初と比べると、かなりの人数が従事するようになりました。
河合 違法コンテンツを検知次第、すぐに個人を特定するようにはしています。多少の時間はかかりますが、一般に公開されている個人情報を利用して、本名やメールアドレスを特定できる場合もあるので、それだけで十分な特定材料になりえます。
また、TorrentをはじめとしたP2Pユーザーに関しては、簡単にIPアドレスや接続環境情報を割り出せるので、開示請求がなくても、早くて5分、長くても数日あれば個人を特定できます。
更に時間は掛かりますが、ISP等へ個人情報の開示請求も平行して実施していますので、特定するのはそこまで難しいことではありません。
長井 対策を行う側としては、いつまでも違法コンテンツの削除ばかりしていても根本を絶たないことには問題解決となりませんので、違法行為を繰り返す人自身を取り締まっていくしかない……という結論に至ります。
被害を補填する損害賠償や民事訴訟、再々の警告に応じない者には権利者の意向に沿って、容赦なく刑事告訴を進めていきます。
──損害賠償や刑事告訴については、前回のインタビューで積極的に手続きを進めているとうかがいました。
長井 そうですね。コンテンツだけでなく悪質なアップロード者やダウンロード者を取り締まっていくことで、違法アップロード・違法ダウンロードが「悪いこと」という理解を広めたいと考えています。
これは、現状、違法アップロードを許してしまっているプロパイダやサイトの運営元も同じで、コンテンツを守るには、コンテンツを創り、売る側だけでなく、ユーザーも含めた関わる全ての人の理解と協力が不可欠です。
これからも違法コンテンツの調査と削除を行っていきますが、どれか1つをやれば違法ユーザーが減るというわけではないのは身をもって体感しています。違法サイトの運営元、著作権者、法律関係者など、さまざまな業界が一致団結して、違法ユーザーを減らす努力をすることが、最も重要だと思います。
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1件のコメント
AOMORI SHOGO
コンテンツ業界でもアダルトは表沙汰になりにくいから大変なんだなあ・・・
あとは個人撮影でFC2にアップしてビジネスしてる人とかもいるからライバルも多いのかも