1ヶ月で約1,000万回ものダウンロード要求がある
──インターネット上には、どのくらいのアダルトビデオが違法にアップロードされているのでしょうか?長井(同社権利部担当者) 正規品を販売・配信すると、わずか数時間後には違法コンテンツがネット上にアップロードされます。すべてのアダルトビデオの違法コンテンツを把握しているわけではないので、正確な数を計測するのは難しいですが、正規品の数だけ違法コンテンツが存在すると考えてもらえればいいと思います。
だから、これだけの件数が実績としてあっても、違法アップロードに対しての削除率はまったく追いついていなくて、いまだに市場全体の試算で年間億単位の被害がでています。
──それだけ多くのアダルトビデオが違法にアップロードされているということですね。
河合(専門企業担当者) そうですね。長井さんが言ったように、最近は新作の発売日当日に違法にアップロードされる悪質なケースが多く、AVに限らず、コンテンツを保有する企業の方々からの相談もとても多くなっています。
弊社が監視している一握りの新作タイトルだけで、例えば2015年8月を見てみると、Torrentにおいて1ヶ月で約1,000万回のダウンロード要求があり、実際に約16ペタバイト(標準CS/BS録画で約1,416,000時間分のデータ量)のダウンロードが行われました。
Torrentだけでなく、サイバーロッカー、違法動画サイト、FTP、Perfect Darkといった他のP2Pも含めると、違法ダウンロードの容量は1ヶ月で300ペタバイトにも達します。ただ、これはあくまで弊社が監視しているCAさんが権利を有するタイトルだけの数値なので、AV全体で見ると、実際の被害はもっとあると思います。
──違法にアップロードされるのは、どのようなサイトなんでしょうか?
河合 有名どころでは、スウェーデンのTorrent検索サイトです。
このサイトには多くのTorrentファイルがあるため、違法コンテンツを探し始めると誰もが一回はたどり着くと思います。ほかにも、不特定多数にファイルを配信することを目的としたオンラインストレージサービス・サイバーロッカーに違法にアップロードされたリンクをまとめたブログや、FC2動画などの動画共有サイトが挙げられます。
長井 弊社では、専門業者から報告を受けた後、たとえば動画共有サイトであればサイト運営者に削除要請を行い、個人でアップロードしていれば個人情報開示請求を進め、警告を行います。
一方、無数に溢れるTorrentファイルを発見した場合は、ダウンロードするユーザーに対して違法ファイルを完全にダウンロードできないようにする妨害措置をとっており、現在はほかの抑止方法も検討して対策しています。
サイバーロッカーは企業が運営しているため、削除要請すると企業が対応してくれます。しかし、Torrentは違法行為を行っている個人がアップロードしているため、削除要請を行ってもほとんどが無視される状態です。そのため、侵害の規模が大きく、優先して対策を行っていく予定です。
──そもそも、どうやって違法コンテンツを発見するんでしょうか?
長井 弊社の作品は、DMM.R18に独占配信しているので、それ以外でネット上に存在するデータは、すべて違法コンテンツという判断をすることができます。ですから、どのファイルが違法なのかは意外とすぐに判断することができます。
河合 違法コンテンツの中にも一定の「ルール」が存在していて、ある程度のファイルの命名方式が決まっているのです。弊社では、その命名ルールを全方位的に把握しているので、違法コンテンツの検知システムのアルゴリズムに組み込んでいます。
日本よりも、韓国や中国からの被害が大きい
──日本だけでなく、世界規模で見た時、アダルトビデオの違法行為による被害はいかがでしょうか?長井 アダルトビデオだけでなく、映画や音楽など、日本のコンテンツは世界中からとても人気があります。中でもアダルトビデオはアジアにおいて圧倒的な人気があり、その分違法行為の被害に遭いやすいのも事実です。
実際に、世界規模で違法ダウンロードの状況を見ると、最も違法ダウンロードの要求が多いのは、実は日本ではなく韓国からとなっています。その次に中国、日本と続きます。
河合 これは、アジア諸国ではインターネットのスピードやISP※2のバンドウィズ※3制限がないことであったり、違法行為に対する取り締まりが弱いことが原因ではないかと思います。
実は国ごとに違法コンテンツのジャンルの隔たりがあって、アジア諸国では日本のアダルトビデオ、日本では国内で生産されたアニメや漫画、音楽、一方ブラジルではゲームソフト、インドではソフトウェアといった具合です。
もちろん日本のアニメや漫画も海外から被害を受けていますが、アダルトビデオも海外から莫大な被害を受けています。
だからこそ、我々としても他のコンテンツと比べて遜色のない違法行為対策を積極的に行い、被害縮小を目指しています。
長井 国内外問わず、違法アップロード者や違法ダウンロード者が違法行為を行ったという証拠を集めること自体はとても簡単です。
ただ、国によって法律が違うため、著作権者の言い分が通らなかったり、時効の期間などが異なったりと、国や法律の違いが障害になることもあります。
とはいえ、我々も海外の法律を勉強しつつ、現地で権利関係に強い弁護士と契約して、計画的に対策を進めているので、国外での違法行為も抑止できると思います。
※2 インターネットサービスプロパイダの略称。インターネット接続を提供する企業
※3 帯域幅のこと。複数の訪問者が同時に閲覧できるデータの総量
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1件のコメント
AOMORI SHOGO
コンテンツ業界でもアダルトは表沙汰になりにくいから大変なんだなあ・・・
あとは個人撮影でFC2にアップしてビジネスしてる人とかもいるからライバルも多いのかも