マスターオブトルクの魅力を語る! #2
テーマは「デジタルVSアナログの対決」!
ただアニメをつくるといっても、土台がなければできません。作品の核となるテーマや、つくり手のこだわりは、どのような点だったのでしょうか?牧野 お話をつくるときに絶対に持たなきゃいけないのはテーマ性。そして我々はバイクメーカーなので、「バイクの動きに関しては嘘をついちゃいけない」と考えまして、この2点は監督にお願いしました。
下山 オートバイファンが観ても、ちゃんとオートバイらしさが表現されているアニメ。それはかなり難しいチャレンジでした。
牧野 テーマは「デジタルVSアナログ」を軸に考えました。今の時代はデジタルが主流ですが、やはりアナログの部分は残ると思うんです。
バイクは人と一体化することではじめて成立する乗り物なんですね。そういう意味では非常にアナログです。雨が降ったら濡れるし、冬は寒いですし、夏は熱いですし。
野島 アナログだ!
牧野 そこに魅力がある。人間の感性に響くというのが、我々オートバイメーカーとしてのこだわりなんです。
アニメなのに派手なアクションよりもリアリティを優先しているですって!? ちょっと真面目すぎるぜ、ヤマハさん(泣)!
しかし、ここまでバイクの動きにこだわり抜いたアニメは他ではなかなかお目にかかれないかもしれません。
果たしてアナログはデジタルに勝つことができるのでしょうか?
バイク屋としてのこだわり/アニメ屋としてのこだわり
「乗り物が大好き!」という声優・野島さんのちょっとマニアックな質問により、ガチなバイクの話にさしかかっていきます……!野島 バイクが止まるときのサスペンションのCGの動き……。物理的な動作の再現も大変だったんじゃないですか?
下山 めちゃくちゃ大変でした(笑)。
牧野 ふつうのアニメの場合、オートバイが出てくるシーンって我々からみるとタイヤがグリップしないで滑ってるんですね。サスペンションも動いてない。
オートバイの基本的な動き方で、曲がるときはまずフロントブレーキを中心に減速します。そうすると前が少し沈み込むんです。ノーズダイブして1回サスペンションがあがりながら曲がるんですよ。その時にアクセルを開けるとリアサスペンションが沈み込むんです。
ノーズダイブして1回サスペンションがあがりながら曲がるんですよ。その時にアクセルを開けるとリアサスペンションが沈み込んでトラクションがかかって……っていうのが基本的な動きなんです。
これがちゃんと表現されてないと気持ち悪いんですよ。 一同 (笑)
バイクに詳しくない方には呪文のように聞こえたかもしれません……。
牧野 真希奈がバイクで止まるシーンがあるんですけど、普通アニメではだいたい「キュキュキュキュキュー」ってブレーキ音がするんですけど、でもそれは整備不良なんですよ。
「バイクの整備不良」という発言には笑ってしまいましたが、アツくて深すぎるバイク愛には感服です!
そして、この『Master of Torque』、アニメなのに制限速度も守るし、信号ではきちんと一時停止する。
バイクが激走するチェイスシーンも他の車が走っていない建設工事中の首都高に設定するなど、なんともお行儀が良すぎます……! そんなツッコミどころを見つけるのも本作の楽しみ方となっています。
デザインへのこだわり!
アニメ本編で主人公・騨が勤める企業「ヒューガ・コーポレーション」では、一部の選ばれたプロアスリートだけがもつ特殊な技能を、普通の人間の肉体にも発揮させてしまう、情報端末と人工筋肉繊維からなる新型パワードスーツ「マリシエル・マーキナー」が密かに開発されています。アニメを観ていない人は、僕が何を言っているかわからないと思いますが、そういう設定なのです!
下山 スーツのデザインには、『宇宙戦艦ヤマト2199』でメカデザインをされている玉盛順一朗さんに参加していただいていまして。玉盛さんは自らバイクショップに行って、スーツを試着して自分で着てみて、インナープロテクターなども実感されて「強くなった気分になった(笑)」とか、いろんな取材をされてデザインに参加いただきました。
牧野 人間ってバイクに乗ると恐怖心が絶対に湧くはずなんですよ。もし筋肉が増強されてコンピューターによってある程度シミュレーションされた走り方ができて、国際A級の世界チャンピオンの走り方ができるウェアを着たとしても、心のブレーキがかかっちゃうんですね。我々は「ビビリミッター」と呼んでるんですけど。
榎本 ビビリミッター!
牧野 恐怖の「ビビり」ですね。それが最終的にはテーマにもなってきて、そこがデジタルの限界で、精神的な部分まで介在しないとダメなんだろうなというところで登場人物の日向光太郎がビビリミッターを解除する。
荻野 シーズン1の最後では、解除しすぎて飛んでっちゃいましたけど(笑)。
かなりデザインにこだわった末に、ハードSFのような世界観となった本作。ちょっと骨太すぎる感じもしますが、ここまで硬派なアニメも最近では珍しいかも!
日本を象徴する道の一つ・国道246号
本作には現実世界に存在するさまざまな道がステージとして登場します。みなさんは東京の三軒茶屋や渋谷から神奈川県を経由し、富士山の麓、静岡県の沼津市に至る国道246号線をご存知でしょうか? 牧野 欧州の人から見た場合、日本というのは非常に明るくて美しいイメージを持ってるそうです。走ったことのない首都高とかをゲームの世界で走っているから。そこに対する憧れとか、彼らの持っている「東京像」「日本像」というのがあるそうなんです。
下山 ストーリーとは別に、タンクに映り込むきれいな夜景の光が流れるシーンがつくりたいと話していました。
牧野 国道246号線は、東京から箱根を通って富士山まで行って、沼津へ行くんですけど、これは日本を象徴する道の一つだと思うんです。そこを背景にオートバイが走るシーンをうまく表現したいと思いました。
一説には「日本でバイクが最も行き交う道」とも言われ、日本のライディングシーンを語るには欠かせないこの国道246号線を舞台に、物語の謎が隠されているという富士山麓を目指すことになります…
シーズン2で急に萌えキャラが登場!
このアニメのおもしろい点は、シーズン1とシーズン2で、ちょっと違った雰囲気の作品になっているところなんです。硬派なシーズン1の雰囲気を払拭するように急に「妹キャラの女の子」が登場します!「会議で揉めた」という、このキャラクター「鳥見楓花」にも注目です! 下山 キャラクターデザインには劇場アニメの『銀河鉄道の夜』や、TVアニメ『タッチ』でキャラクターデザインをされました大ベテランの江口摩吏介さんに参加いただいたり、ライトノベルで表紙や挿絵を描いている遠矢大介くんにも参加してもらって、いろんな方向性のものをつくりました。
牧野 シーズン1は、従来のオートバイが好きな人たちにきちんと「いいね!」と言ってもらえるような骨太の作画であるとかシーンをお願いしました。
結果的にはもう少し若い層への共感を得たいというところもあり、シーズン2では骨太な部分を捨てずに共感できる年齢層を下げるというトライをしてます。
座談会は後編へ続く…
シーズン1 (コンプリート版) -Master of Torque- Yamaha Motor Original Video Animation
また、いまだ多くの伏線を残す謎多き本作について、声優陣から監督の下山さん、エグゼクティブプロデューサーの牧野さんへ質問を投げかけます。
後半もアニメの世界観が倍以上楽しめる座談会となりそうなので、気になった人は、ぜひともアニメ本編をチェックしてみてください!
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