オタクという言葉が生まれる以前、1978から1980年。テレビの構成作家、京都精華大学非常勤講師となった自分の土台にもなったのはアニメと特撮だった。これはその回想録の3回目。
アニメ好きのお姉ちゃんの通う女子校の文化祭にも足を運び、漫研をたずねサークル誌も購入。同人文化というものも覗き見ました。話で伝え聞いていた『海のトリトン』ファンクラブの会報である「TRITON」をはじめて読んだのもこの時です。 中学2年の秋。在籍していたバスケット部では、各種対抗戦に向けての練習が日々続いていました。もちろん、うわべだけは真面目な中学生だったオレとしては、練習を休むこともなかったので、毎日の放課後、土日とひたすらバスケット部の練習に参加していたはずです。
そんな中で、なぜここまで熱心に「アニメ」に夢中になる時間があったのか、今となってはよくわかりません。ただ、今も覚えているのは、無我夢中で知識を詰め込もうとしていたことです。「これまで知らなかったこと」と「今、生まれてくる新たなこと」。アニメには、それがありました。
この頃、ゲームセンターのメインの客層は、いわゆる「不良」少年たち。中学では、出入りすることを固く禁止されていたんです。でも、何しろ我が家は繁華街のど真ん中でしたので、一人でふらふら覗きに行くことに抵抗はなかったのです。
見た瞬間「ブロックくずし」以上の衝撃が走りました。何しろ、それまでは「棒」と「点」を頭の中でラケットと、壁のような何かに見立てる必要があったわけですが、今回は、見事にキャラクターとして動いているのです。
中学生にとって1プレイ100円は、とても気軽に遊べる金額ではありません。アニメの本を手に入れるには、小遣いだってぜんぜん足りないくらいなのです。それでも、あのモニタに浮かぶインベーダーの美しさと、コンピュータ音の未来感には抗えませんでした。日に日に目に見えて進化するビデオゲームもまた、アニメと同じように、テレビや友達からは得られない「情報」のひとつだったんです。
「今、富野監督がつくってる、機動戦士ガンダムはとにかくすごいに違いない。なんといってもキャラクターデザインは安彦さん。知ってる? ライディーンや、ザンボットの人だよ? 見て、このキャラクター!」
確かに、掲載されていた「現在製作中」のガンダム紹介記事のデザインは目を引くものがありました。「安彦さん」という、名前だか苗字だか判別できないスタッフ名を、当たり前のように話題に出されたのもショックでしたが、何より印象に残ったのは、そこに掲載された白くて、見たこともないスマートなロボットのデザインだったのです。「すげえ!! ふくらはぎがある!!」それが、自分とガンダムとのファーストコンタクトでした。
それでも、正直そこまで期待していいかは、まだ疑問がありました。お姉ちゃんのお墨付きだからすごいには違いないだろうけど(何しろ洗脳済みなので)、肝心のガンダムは、相変わらず鎧武者のような見てくれだし、何より「手に銃を持っている」。これは、ザンボットの時から感じてた違和感なんです。個人的には「ロボットなんだから、銃なんか内蔵されてるのが効率的じゃないの? ましてロボットが人間のように、刀剣をふりまわすなんて子供っぽすぎない?」と思っていたからです。 秋に、テレビではじまった『銀河鉄道999』にも『宇宙戦艦ヤマト2』にもなぜか乗りきれませんでした。たぶん「刺激」が足りなかったんです。
そして迎えた年末。夏に予約した『マニフィック』創刊号が、忘れた頃に届きました。アニメ以外への目配せもあり、池田憲章の特撮コラムあり、(『キャプテン・フューチャー』の)コメット号のペーパークラフトありと野心的な内容だったんですが、白黒ページがメインで総ページ数は60ページ程度。新番組の紹介なんか、アニメージュの方が詳しいじゃないか!
編集者たちの思いなどは、後日知ることになりますが、当時そんな事情がわからない中学生にとっては、かなり期待はずれの内容だったんです。創刊号は、テーマがしぼりきれない同人誌、という印象でしたね。
1978-3 アニメ、インベーダー、ロックからまんが専門誌へ
ファン心理というものは恐ろしいもので、なんでもかんでも知りたくなるんですね。コロムビアから出ていた「テレビまんが主題歌のあゆみ」という4枚組BOXセットのLPレコードを購入したのも、この時期でした。うっすら記憶に残っていたものから、見てもいなかった古いアニメの主題歌まで歌えるようになったのは、このおかげです。アニメ好きのお姉ちゃんの通う女子校の文化祭にも足を運び、漫研をたずねサークル誌も購入。同人文化というものも覗き見ました。話で伝え聞いていた『海のトリトン』ファンクラブの会報である「TRITON」をはじめて読んだのもこの時です。 中学2年の秋。在籍していたバスケット部では、各種対抗戦に向けての練習が日々続いていました。もちろん、うわべだけは真面目な中学生だったオレとしては、練習を休むこともなかったので、毎日の放課後、土日とひたすらバスケット部の練習に参加していたはずです。
そんな中で、なぜここまで熱心に「アニメ」に夢中になる時間があったのか、今となってはよくわかりません。ただ、今も覚えているのは、無我夢中で知識を詰め込もうとしていたことです。「これまで知らなかったこと」と「今、生まれてくる新たなこと」。アニメには、それがありました。
9月14日 には『銀河鉄道999』が、そして10月14日には 『宇宙戦艦ヤマト2』『新・エースをねらえ!』が放送開始された。また、10月7日には『野性の証明』が公開され、角川映画ブームがやってきていた
もうひとつ、この年に直撃されたのが、ビデオゲーム「スペースインベーダー」の登場でした。事前に雑誌で存在は知っていましたが、最初に見たのは、近所のゲームセンターに置かれたアップライト筐体だったと思います。この頃、ゲームセンターのメインの客層は、いわゆる「不良」少年たち。中学では、出入りすることを固く禁止されていたんです。でも、何しろ我が家は繁華街のど真ん中でしたので、一人でふらふら覗きに行くことに抵抗はなかったのです。
見た瞬間「ブロックくずし」以上の衝撃が走りました。何しろ、それまでは「棒」と「点」を頭の中でラケットと、壁のような何かに見立てる必要があったわけですが、今回は、見事にキャラクターとして動いているのです。
中学生にとって1プレイ100円は、とても気軽に遊べる金額ではありません。アニメの本を手に入れるには、小遣いだってぜんぜん足りないくらいなのです。それでも、あのモニタに浮かぶインベーダーの美しさと、コンピュータ音の未来感には抗えませんでした。日に日に目に見えて進化するビデオゲームもまた、アニメと同じように、テレビや友達からは得られない「情報」のひとつだったんです。
スペースインベーダーのブームは嵐のように巻き起こりました。年の暮れには、喫茶店にテーブル筐体が登場し、祖父や叔父に連れて行ってもらい、その場限りのこづかいをねだってプレイさせてもらいました
最後にアニメ好きの友人の家に行った時のことは、今でも記憶に残っています。アニメージュ最新号を見ながらのお姉ちゃんとの会話でした。「今、富野監督がつくってる、機動戦士ガンダムはとにかくすごいに違いない。なんといってもキャラクターデザインは安彦さん。知ってる? ライディーンや、ザンボットの人だよ? 見て、このキャラクター!」
確かに、掲載されていた「現在製作中」のガンダム紹介記事のデザインは目を引くものがありました。「安彦さん」という、名前だか苗字だか判別できないスタッフ名を、当たり前のように話題に出されたのもショックでしたが、何より印象に残ったのは、そこに掲載された白くて、見たこともないスマートなロボットのデザインだったのです。「すげえ!! ふくらはぎがある!!」それが、自分とガンダムとのファーストコンタクトでした。
それでも、正直そこまで期待していいかは、まだ疑問がありました。お姉ちゃんのお墨付きだからすごいには違いないだろうけど(何しろ洗脳済みなので)、肝心のガンダムは、相変わらず鎧武者のような見てくれだし、何より「手に銃を持っている」。これは、ザンボットの時から感じてた違和感なんです。個人的には「ロボットなんだから、銃なんか内蔵されてるのが効率的じゃないの? ましてロボットが人間のように、刀剣をふりまわすなんて子供っぽすぎない?」と思っていたからです。 秋に、テレビではじまった『銀河鉄道999』にも『宇宙戦艦ヤマト2』にもなぜか乗りきれませんでした。たぶん「刺激」が足りなかったんです。
そして迎えた年末。夏に予約した『マニフィック』創刊号が、忘れた頃に届きました。アニメ以外への目配せもあり、池田憲章の特撮コラムあり、(『キャプテン・フューチャー』の)コメット号のペーパークラフトありと野心的な内容だったんですが、白黒ページがメインで総ページ数は60ページ程度。新番組の紹介なんか、アニメージュの方が詳しいじゃないか!
編集者たちの思いなどは、後日知ることになりますが、当時そんな事情がわからない中学生にとっては、かなり期待はずれの内容だったんです。創刊号は、テーマがしぼりきれない同人誌、という印象でしたね。
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Takayoshi Saito
構成作家/インタビュアー。テレビ、ラジオ、イベントの企画、構成。BMSKコンサルティングの研究員としてブランディングコンサルタントと、その一貫でアートディレクションも生業にしています。その他ゲームの企画、シナリオ、キャラクター研究家。京都精華大学、非常勤講師。オタクの学校@模型塾、講師。アクトオンTV「つくろうプラモNAVI」ナビゲーター。
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