小説家・柚木麻子さんが4月22日(水)、代表作『BUTTER』の版権を新潮社から河出書房新社へ移動することを発表した。
声明では、両社の合意のもとでの円満な移動であるとしつつ、その背景として、2025年の『週刊新潮』に掲載されたコラムの問題に言及。
「作家として、自分にできる具体的なアクション」として、複数ある著作のうち一作の版権を移す決断に至ったと説明している。
世界的ベストセラー小説『BUTTER』とは?
『BUTTER』は2017年に刊行された長編小説。
連続毒殺事件の容疑者である女性・梶井真奈子と、彼女に取材する女性記者の関係を軸に、食/欲望/女性の身体/社会規範を描いた作品だ。
実在の事件をモチーフにしながらも、単なる犯罪小説にとどまらず、ルッキズムや女性の生き方をめぐる社会的圧力を描く作品として高く評価されている。
国内では直木賞候補となり話題を集め、文庫化後もロングセラーに。
日本国内の書店にて展開中の『BUTTER』日英リバーシブルカバー
さらに英語版『BUTTER』は英国の大手書店・Waterstonesの「Book of the Year 2024」を受賞するなど、日本国外でも大きな評価を獲得した。
現在は世界40か国以上で翻訳され、累計170万部を超える国際的なベストセラーとなっている。
差別表現で問題となった『週刊新潮』コラム
今回の版権移動の背景にあるのが、2025年に『週刊新潮』に掲載されたジャーナリスト・高山正之さんのコラムだ。
コラムの中で、在日コリアンの作家・深沢潮さんらを名指しし「日本も嫌い、日本人も嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」といった趣旨の記述がなされて問題に。
さらにタイトルに用いられた「創氏改名2・0」は、植民地支配下の朝鮮人に日本式姓名への変更を強制した歴史的政策を想起させるもの。差別的/人権侵害的だとして強い批判を受けた。
深沢潮さんは記者会見を開き、新潮社に謝罪と誌面での反論機会を求めた。その後の対応をめぐって最終的には新潮社との出版契約解消に至っている。
柚木麻子「出版というシステムの在り方を深く考え直した」
柚木麻子さんは声明の中で、新潮社への長年の感謝を述べつつも、「出版というシステムの在り方を深く考え直す契機の一つとなりました」と記している(外部リンク)。同時に、作家仲間である深沢潮さんへの新潮社の対応に疑義を呈している。
柚木麻子さん
版権移動後も、『BUTTER』は河出書房新社から文庫版として6月15日(月)に刊行予定。
声明で柚木麻子さんは、「出版の世界が、読者や作り手が安心して表現に向き合い、多様な文化や価値観を受け止められる場所であること」を願うと綴っている。
Ⓒ新潮社
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