YouTubeが、2023年8月に始動した「YouTube Music AI インキュベーター」を日本でも開始した。
これは、YouTubeの音楽分野での生成AIへの取り組みに、アーティストなどが情報提供を行うプログラム。参加者にはGoogleのAI研究部門であるGoogle DeepMindが開発した音楽生成モデル「Lyria(リリア)」の早期アクセスが提供される。
日本では第1弾として、「初音ミク」で知られるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の協力が発表された。
生成AIの音楽を巡るプラットフォームとレーベルの動向
YouTubeは2023年8月、AI音楽原則を発表。「私たちが責任を持ちながら、このテクノロジーを大胆に受け入れる必要があることは明らかです」とAIの活用に積極的な姿勢を打ち出していた。
この試みには、UNIVERSAL MUSIC GROUP(ユニバーサル ミュージック グループ)のアーティストやプロデューサーも参加。
今回の日本展開でも、ユニバーサル ミュージック グループの日本法人と、緊密な連携によりパートナーシップを継続していくと発表している。
YouTubeは2023年11月に、生成系AIを利用したコンテンツにはその開示を義務付ける新たなガイドラインを発表。
一方のユニバーサル ミュージック グループは2024年1月、TikTokと生成AI技術への対応などを巡り、契約交渉が決裂したことを明かしている。
Googleの開発した音楽生成AI「Lyria」
「Lyria」は、2023年11月に発表されたGoogleの音楽生成AI。
楽器とボーカルを備えた質の高い調和のとれた音楽の生成、アレンジ作業、そして出力される楽曲のスタイルや奏法に関する細かな設定を行える。
例えば、プロンプトにアイデアを入力するだけで、ジャンルを融合させたり、ビートをメロディに変えたり、ボーカルにサウンドトラックを添えることができるという。
「Lyria」を活用できるツールセット「Dream Track」から、音楽のジャンルやモデルとなるアーティストを選択し、YouTubeのショート動画などの楽曲を作成できる。
なお「Lyria」によって生成された楽曲には、AI生成であることを示す透かしが埋め込まれる。
YouTubeは、アーティストやクリエイターの想像力を広げ、創造的なプロセスを強化するのに役立つAI機能の可能性を探るとしている。
AI歌声合成ソフトではない「初音ミク」の行方
対して、クリプトン・フューチャー・メディアが現在展開する初音ミクの最新版「初音ミク NT」は、いわゆるAI歌声合成ソフトではなく、収録した音声波形を切り貼り・加工して合成する仕組みのソフトである。
2020年のリリース当時、ITmediaの取材(外部リンク)に対し開発者の佐々木渉さんは、AI歌声合成ソフトについて「操作性と自然さのバランスという意味で、見習わないといけない部分が多くあると思います」と評価。
その一方で「人間の歌声を再現するAI歌声合成ソフトが、生のグランドピアノの音色を目指すようなものだとしたら、われわれは初音ミク NTでエレクトリック・ピアノを目指しているともいえます」ともコメントしていた。
あれから約3年、Synthesizer V、CeVIO AIなど、機械学習ベースの歌声合成ソフトは凄まじい成長を遂げている。
その中で、ボーカロイドの代表的存在である初音ミクは、果たして今後どのよう方向性に舵を切るのか──今回の発表を受け、そこにも注目が集まる。
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