にじさんじ「Nornis」1stライブレポ 3人の歌姫は徹頭徹尾アーティストを貫いた

町田ちま、戌亥とこ、朝日南アカネの一人舞台

朝日南アカネさん

物語の世界にいたかのような錯覚を覚えつつ、「ありがとうございます、2曲続けて聴いていただきました」という挨拶で、現実に引き戻される。このMCでは、前日の深夜に朝日南アカネさんが練習していた音が漏れていたエピソードも明かされ、トークになると途端にゆるい雰囲気に切り替わる3人がほほえましくもあった。

戌亥とこさんと町田ちまさんが退場し、ここからソロパートへ。朝日南アカネさんはダンスナンバー「Unchained」を振り付けつきでパフォーマンス。MCでは緊張していることをいじられていたが、曲が始まればその歌唱は堂々としたもの。ラップパートではイケボで魅せ、全員着席のグランキューブを熱く盛り上げた。

町田ちまさん

バトンを受け継いだ町田ちまさんが歌うのはもちろん「名前のない感情」。高音の伸びを評価されることの多い彼女だが、もう一つの強みは表現力。<本当のことなんて悲しいだけだけど><いつからこうなったっけ>では少し声を震わせるなど、感情を込めた歌で没入感を高めた。

下手からゆっくり歩いてきた戌亥とこさんは、「六道伍感さんぽ」でソロパートのトリを飾る。ゆったりとした曲調の中、衣装の裾としっぽがゆらゆらと揺れる。自身の仕草はリラックスしたものだが、低音から高音まで安定した隙のない歌唱でファンを魅了した。

戌亥とこさん

ステージに再び揃った3人が披露したのは、YouTubeにも投稿した「夜永唄」のカバー。ライブだからこそ聞こえる息継ぎやわずかな声の震えも情感を高め、ラスサビのユニゾンに心打たれた。

町田ちまさんがセンターのフォーメーションにつくと、ボカロ曲「PaIII.SENSATION」をダンス付きでカバー。EDMボカロを得意とする雄之助さんが2016年に投稿した楽曲で、原曲も初音ミク、GUMI、鏡音リンの3人ボーカル。2022年4月にプロセカこと『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』に追加されたことで再注目を浴びていた。

腕の振り付けひとつとっても、朝日南アカネさんは勢いがあって情熱的、戌亥とこさんは体に沿わせるセクシーな仕草、町田ちまさんは肩掛けマントが翻ってダイナミックに見えるなど、三者三様の魅力があった。

「Goodbye Myself」という名の奇跡

続いてはYOASOBI・Ayaseさんによるボカロ曲「シニカルナイトプラン」をカバー。ストリングスアレンジによって加わったバイオリンのスタッカートに体が揺れ、<嗚呼もうほんとうざったいや>から始まるラップの掛け合いに歓声を上げたい気持ちをグっとこらえる。

バイオリンの音が不協和音ギリギリの不穏なものに変われば、ケンカイヨシさんが手がけたオリジナル曲「fantasy/reality」。サビでは癖になる<La-da-di, La-da-da La-da-di, La-da-da>のフレーズに合わせて腕を回す姿が印象的だ。

ここまで圧倒的な歌唱とハーモニーで世界観をつくってきた3人。続くMCでは町田ちまさんが、前置きなく次が最後の曲であることをバラしてしまい、テイク2を行うなど知性担当らしからぬ一面も。 各曲の振り付けにも触れ、ダンスレッスンや練習時のエピソードなどを明かした。またそれぞれのチャームがついたマイクやライブ衣装を紹介し、バンド・ストリングスメンバーの紹介も行われた。

町田ちまさんの「最後の曲は、明日からのみんなが頑張ろうと思えるよう、背中を押してくれるような曲です。聴いてください」との紹介から、「Goodbye Myself」へ。 ピアノフレーズが感情を高めた直後、戌亥とこさんと朝日南アカネさんの安定した低音によるAメロ。町田ちまさんが高音で盛り上がりへと橋をかけると、3人でサビを合唱。

背後の映像に映る青空が切なさを高めるが、<まるで奇跡に出逢えたようだ>──これはまさに、私たちリスナーにとってはNornisの奏でるハーモニーのこと。公演は終わりに近づくが、それは悲しい別れではなく、明日からの日々を踏み出すためのもの。まっすぐ響く3人の歌声がそう思わせてくれた。
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