新世代の作家たちが、宇宙・AI・ポストコロナ・改変歴史などのテーマごとに書いた書籍化前の名作を14篇選出。
各作品のテーマに合わせた伴名練さんによるSF入門コラム14本と、「新しいSFを読みたい/書きたい人のためのガイド」も収録され、文庫本816ページにも及ぶ超大型企画となっている。
「日本SFの歴史を10年早めたい」新世代の傑作14選
『新しい世界を生きるための14のSF』は、『なめらかな世界と、その敵』で、2019年の年間ベストSF国内篇1位に輝いた伴名練さんが、「日本SFの歴史を10年早めたい」という意思のもと、未来を担う書き手たちの作品を集めたアンソロジー。衝突事故直前の車載AIが最後の審判を繰り広げる八島游舷さんの「Final Anchors」、恋人の死体を盗んだ女が超常の存在へ愛を問う斜線堂有紀さんの「回樹」、水戸黄門こと徳川光圀の命を受けた学者たちが和歌コンピュータを発明する夜来風音さんの「大江戸しんぐらりてい」など、新世代の作家たちによる書籍化前の傑作が14篇集められている。
表紙イラストは、日本画と現代のポップカルチャーを融合させたような画風で知られるイラストレーター・九島優さんが手がけている。
『新しい世界を生きるための14のSF』収録作一覧
八島游舷「Final Anchors」
車両衝突まで残り0.488秒。
AIによる「最後の審判」、開始。
斜線堂有紀「回樹」
ふたりで過ごした恋人の日々。
取調室でいまは、ひとり。
murashit「点対」
いや俺やってないですってマジで。
僕じゃなくて双子のアイツですよ。
宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」
小惑星衝突が迫る日々のなかで、
ぼくらは衛星構想コンテストを目指した。
高橋文樹「あなたの空が見たくて」
星海旅行で出会った地球人から
後日届いた、彼の最期の映像記録。
蜂本みさ「冬眠世代」
わたしたちは冬眠をする、最後の世代。
四季を生きる熊々の温かな物語。
芦沢 央「九月某日の誓い」
奉公先のお屋敷に不審な男が迫る。
操様の秘密を外へ知られてはならない。
夜来風音「大江戸しんぐらりてい」
徳川光圀の命を受けての和歌研究は
前代未聞の算術長屋を生み出した。
黒石迩守「くすんだ言語」
普遍的な意思伝達を可能にする中間言語。
その言葉は人と世界を侵食していく。
天沢時生「ショッピング・エクスプロージョン」
探せ。当店のすべてをそこに置いてきた。
増殖する商業施設をめぐる電脳冒険ロマン。
佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」
仮想空間でのスポーツが普及した日本。
俺は創のために、幻の卓球台に立つ。
麦原遼「それはいきなり繋がった」
あの感染症が広がった翌年のこと。
僕たちの世界に“向こう側”が現れた。
坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」
巨大な蜘蛛の巣に覆われた京都市。
それは彼女の遺した新世界。
琴柱遥「夜警」
子どもたちは今日も流れ星に祈る。
星はとても、恐ろしいものだから。 via Hayakawa Books & Magazines(β)
「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」伴名練
伴名練さんは、兼業作家として完全に覆面を貫き表舞台には一切姿を見せず、SNSなども行っていない謎の作家。大ヒットとなった作品集『なめらかな世界と、その敵』は、2010年のデビュー作『少女禁区』以来約10年ぶりとなる著作であり、初のSF短編集となった。 そのSF愛は、国内唯一のSF専門文芸誌『SFマガジン』を刊行する出版社・早川書房をして、「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」と言わしめるほど。
古今東西の埋もれてしまっている作品を発信するべく、アンソロジー「日本SFの臨界点」シリーズを自ら編集。「恋愛篇」「怪奇篇」や作家別傑作選などを次々に送り出し、2年間ですでにシリーズは5巻を数えるまでになっている。
SFを牽引する作家たち
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