韓国のメタバース民は女性アバター少なめ 「VR国勢調査」韓国版を無償公開

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韓国のメタバース民は女性アバター少なめ 「VR国勢調査」韓国版を無償公開
韓国のメタバース民は女性アバター少なめ 「VR国勢調査」韓国版を無償公開

「ソーシャルVR国勢調査:韓国(2022)」公開

2021年にメタバースの生活実態調査を明らかにするために実施された「ソーシャルVR国勢調査2021」(以下「VR国勢調査」)。その韓国ユーザーへの追加調査を実施した「ソーシャルVR国勢調査:韓国(2022)」を、5月31日にレポートとして無償公開。

調査・報告は、「VR国勢調査」同様に、「バ美肉」論文の学術賞受賞で話題のスイスの人類学者・ミラ (リュドミラ・ブレディキナ)さんと、筆者であるメタバース文化エバンジェリスト・バーチャル美少女ねむとで行った。

韓国はゲーム大国であり、元々ゲーミングPCを持っているユーザーが多い。近年メタバース人口も急増していることから、その生活実態を知りたいという声が多く挙がっていた。

韓国のメタバース住人の中では、人間型アバターが優勢ながら女性アバターの比率がやや低いなど、他地域とは異なる独自の文化があることが明らかになった。

ソーシャルVR国勢調査:韓国(2022)

「VR国勢調査」は、仮想現実(VR)における人類の新たな生活空間「メタバース」として注目されるVRChatをはじめとしたソーシャルVRの生活実態を明らかにするため、全世界のユーザー1,200名のデータを分析した大規模調査。

ただし、日本・北米・ヨーロッパ以外の地域別データに関しては、データ数が少なく行動比較が難しいという課題があった。

アジア圏の中でも特に韓国は、ゲーム大国であり近年ソーシャルVRユーザーの数も急増していることから、その利用実態に興味があるという声がアンケートで多く寄せられた。

今回、韓国ユーザーの協力により韓国を対象に追加調査を実施し。メタバースへの理解と議論の加速のため、今回もレポートを無償公開することとなった。

・目的:韓国におけるソーシャルVRのユーザーの生活実態を明らかにするため。
・対象:VRヘッドマウントディスプレイを用いて、ソーシャルVR (VRChat、Rec Room、Neos VRなど)を直近1年以内に5回以上使ったユーザーで、韓国語話者の方
・方法:2022/4/3-4/8、 Googleフォームによる公開アンケート、韓国のVRコミュニティで情報拡散
・言語:韓国語で実施
・回答数:231

「ソーシャルVR国勢調査:韓国(2022)」結果サマリ

レポート1:ユーザープロファイル

・他地域同様にVRChatが最も利用されるソーシャルVRサービスだった。
・年齢は20代の77.1%に次いで10代が14.7%もおり他地域と比べて非常に若い。
・物理男性が93.9%と、日本(89%)以上に極端に物理男性に偏っている。
・総プレイ時間は500時間以上の利用者が半数を割っており他地域と比べやや少なめ。
・実名でなく仮名(キャラクター名)を使うユーザーが97%で、日本同様仮名文化が強い。

レポート2:アバター表現

・女性アバターの利用率が62.3%と、日本やヨーロッパほど極端に多くなかった。
・逆の性別のアバターを使う理由は「外見が好み」が81%と極端に多く、自己表現やコミュニケーションを理由にしている人は他地域より少なめだった。
・アバターの種別は「人間型」が過半数を超えており、日本やヨーロッパでトップの「亜人間」は26%とかなり少なかった。
・フルトラの利用率も利用意向も他地域と比べかなり少ない。

レポート3:音声表現

・音声表現については、「ボイチェン」「両声類」など加工音声を使っている人が他地域と比べ少なく、そのかわり「無言勢」が15.6%と比較的多い。
・加工音声を使う理由も地域では圧倒的一位だった「男声を女声に変換するため」がたったの27.3%と少なく、単に「いつもと違った声を出すため」とカジュアルな理由が多い。

レポート4:VR恋愛

・恋愛経験率24.7%、恋人ができた人は21.1%と、他地域と比べて圧倒的に少ない。
・恋をする時「相手の物理的な性別は重要でない」が75.4%と、日本や北米とほぼ同等。
・恋人がいる人のうち「複数の恋人がいる」人が46%と他地域より多かった。

調査チーム : Nem x Mila

調査チーム : Nem x Mila

調査チーム「Nem x Mila」は、VTuber研究ユニット。VTuberやメタバースが人類に与える影響を調査するため、様々な実験的な活動を行っている。
バーチャル美少女ねむ
日本のメタバース文化エバンジェリストにして、世界最古(自称)の個人系VTuber。HTC公式VIVEアンバサダー。VRChat・Neos VR・バーチャルキャスト・cluster等、各種ソーシャルVRのヘビーユーザーでもある。自身の体験とVR国勢調査を元に解説書『メタバース進化論(技術評論社)』を出版。

ねむのコメント:韓国ユーザーのプロファイルとしては、VRが一般的になって日が浅いため総プレイ時間がまだ短いこと、ゲーミングPCが一般的なためか他地域よりも若いユーザーが多いことが非常に特徴的でした。同じアジアの国だからか、匿名性へのこだわりなどの特性は、全般的に日本と似た傾向が見られました。一方で他地域(日米欧)と大きく違う結果が出て印象的だったのが、女性アバターの利用のほとんどが単純なファッション目的だったり音声を女性化する人が少なかったりと、メタバースで自由な性別を選ぶ意識がかなり低そうだったことです。「バ美肉」カルチャーの強い日本と比べて低いのは当然として、欧米と比べても低いのは驚きました。また、フルトラへのこだわりが薄いのも特徴でした。改めて、国によってメタバースの文化が大きく異なることがわかり、非常に興味深かったです。

ミラ(リュドミラ・ブレディキナ、Liudmila Bredikhina)
スイス・ジュネーブ大学の人類学者(修士課程終了)。日本のVTuberやバ美肉などの現象が人間のアイデンティティやコミュニケーションに与える可能性について着目し、様々な研究レポートを発表。「バ美肉」に関する論文でジュネーブ大学のジェンダー分野の学術賞「プリ・ジャンル」を受賞。

ミラのコメント(※ねむによる和訳):これまで私達は大規模なユーザーへの定量調査を実施することでソーシャルVRの基本的な理解を深めてきました。今回、既存のデータと韓国のユーザーを比較することで、アジア、ヨーロッパ、アメリカという異なる社会文化環境における共通点を見出すことができました。既存の「ゲーム」文化によって、若年層(20代、77.1%)がVR機器にアクセスしやすいことがわかりました。また、いわゆる「無言勢」のプレイヤーが多い(15.6%)ことも興味深い点です。人類学者として、既存の社会文化的現象がソーシャルVRへのアクセスや利用にどのような影響を与えるのか、興味深く感じています。今後明らかにしていきたいのは、韓国において代替的な在り方を創造・交渉する上で、一体どのような技術が共通の興味によるコミュニティを生み出す戦略になっているのかということです。

「バ美肉」に関する論文、学術賞を受賞 ジュネーブ大のジェンダー分野で

「バ美肉」に関する論文、学術賞を受賞 ジュネーブ大のジェンダー分野で

「バ美肉(=バーチャル美少女受肉)」。バーチャル世界で美少女になる日本発の文化で、バーチャルYouTuber(VTuber)やVRSNS「VRChat」などの普及によってすっかりネット上で浸透した概念・文化だ。

あくまでネット上での普及に留まっていたその文化についての研究が、このほど、学術賞を受賞した。

スイスの人類学…

kai-you.net
特別協力:mamadora 엄마뇽
韓国のソーシャルVRユーザー。VR国勢調査に興味を持ち韓国版の追加実施を提案。韓国ユーザーへのアンケート回答の呼びかけ・データ集計・グラフ作成に協力した。韓国ユーザー向けに韓国語版のレポートも公開した。
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