結論から書こう。田我流は“チルい”。
今回のインタビューのオファーをもらった時、リラクゼーションドリンク・CHILL OUT(チルアウト)のコラボレーション企画なのだと説明を受け、もっともな人選だと頷くほかなかった。
企画の説明を受けずに、例えば「日本のヒップホップで一番のチルな楽曲は何か」と聞かれたとしたら、まず最初にEVISBEATS feat. 田我流の「ゆれる」が脳裏に浮かび、当たり前すぎるから別の楽曲にしようと余計なことまで考えてしまいそうだ。それほど、田我流というアーティストとチルという語の持つイメージの親和性は高い。
とはいえ、田我流を愛聴してきた立場から掘り下げれば、そのイメージはそれほど単純ではない。
2011年に公開され、田我流の存在を世に知らしめた傑作映画『サウダーヂ』はおよそチルと対極的な世界、ディストピアのリアルを克明に描き出したものだったし、それに連なる傑作アルバム『B級映画のように2』にしても、革命前夜のような焦燥が炎立つ一枚だった。
持ち味のグルーヴ感こそ今に通底するが、当時の田我流とチルはことさら密接なイメージを持つ語ではなかった気がする(もっとも当時はまだチルという語に今ほどの一般性はなかった。この言葉を語源とした単語が、三省堂の新語大賞になるなんて誰が想像しただろう?)。
「田我流はいかにしてチルなイメージをまとったのか」……そんなことを考えながら臨んだインタビューだった。 だが、いざ田我流に対峙すると、そんな疑問はいとも簡単に氷解した。
昔から猥雑な東京と一定の距離を置き、地に足をつけて等身大のリリックを綴ってきたヒップホップアーティストが、たゆまぬ活動の結果として家族をつくり、然るべき地点に到達したのだ。高名な武術家が見かけの威嚇的な筋肉を手放し、柔らかくしなやかな脱力を身につけるように。田我流 - Idea(Music Video)
リラクゼーションドリンク・CHILL OUTが始動した「CHILL OUT MUSIC」に名を連ねた稀有なラッパー田我流が書き上げた「Idea」は、果たしてどんな楽曲なのか。
まだ桜が散って間もない頃。オフィスビルに囲まれた公園で、走り回る子供たちの声を聞きながら、いつの間にか田我流が持つに至った「チル性」を浮き彫りにするシチュエーションでのインタビューとなった。
田我流 最近は……朝7時前とかに起きて、子供が登校するから、それと一緒に自分も動き始めますね。8時くらいからスタジオ作業を始めるのかな。
子供は、自分が迎えに行く日もそうじゃない日もありますけど……大体夕方の17時ぐらいまで作業して、ご飯つくる時はつくって食べて、風呂立てて……そういうことを一通りやって、子供が寝た後に(自分の制作の)宿題がある時はもうちょっとやるかなぁ、という感じです。
今はやることが昼に集中しているので、どうしても朝型の生活を送っています。
──想像すると絵的に素敵ですね。
田我流 料理は“一手間”が大事って言いますけど、手間をかけた分だけ美味くなる。あといきなり自己流にするのではなくて、レシピがあったとしたら初めはまずレシピ通りつくっています。その(基本のレシピの)良いところを学んで、分量のバランスを勉強する。そこから、ダシとか他の食材のハーモニーで、調味料の代用をできるかどうかを考えたり。
お金をかければ美味いかと言われたら「?」だし、安くても美味いものはつくれる。季節の食材、ダシ、スパイスで、どうつくるのか。美味いって言って食べてくれたら嬉しいですよね。料理はビートに似ているし、音楽に似ている。超楽しいですね。めっちゃ、リラックス、リフレッシュ、チルです。 ──なんだか料理のお話で、田我流さんの本質というかインタビューの核心に触れてしまったような気がします(笑)。生活と制作が地続きにあるということもわかりました。
田我流 ほんとですよね(笑)。
今回のインタビューのオファーをもらった時、リラクゼーションドリンク・CHILL OUT(チルアウト)のコラボレーション企画なのだと説明を受け、もっともな人選だと頷くほかなかった。
企画の説明を受けずに、例えば「日本のヒップホップで一番のチルな楽曲は何か」と聞かれたとしたら、まず最初にEVISBEATS feat. 田我流の「ゆれる」が脳裏に浮かび、当たり前すぎるから別の楽曲にしようと余計なことまで考えてしまいそうだ。それほど、田我流というアーティストとチルという語の持つイメージの親和性は高い。
とはいえ、田我流を愛聴してきた立場から掘り下げれば、そのイメージはそれほど単純ではない。
2011年に公開され、田我流の存在を世に知らしめた傑作映画『サウダーヂ』はおよそチルと対極的な世界、ディストピアのリアルを克明に描き出したものだったし、それに連なる傑作アルバム『B級映画のように2』にしても、革命前夜のような焦燥が炎立つ一枚だった。
持ち味のグルーヴ感こそ今に通底するが、当時の田我流とチルはことさら密接なイメージを持つ語ではなかった気がする(もっとも当時はまだチルという語に今ほどの一般性はなかった。この言葉を語源とした単語が、三省堂の新語大賞になるなんて誰が想像しただろう?)。
「田我流はいかにしてチルなイメージをまとったのか」……そんなことを考えながら臨んだインタビューだった。 だが、いざ田我流に対峙すると、そんな疑問はいとも簡単に氷解した。
昔から猥雑な東京と一定の距離を置き、地に足をつけて等身大のリリックを綴ってきたヒップホップアーティストが、たゆまぬ活動の結果として家族をつくり、然るべき地点に到達したのだ。高名な武術家が見かけの威嚇的な筋肉を手放し、柔らかくしなやかな脱力を身につけるように。
まだ桜が散って間もない頃。オフィスビルに囲まれた公園で、走り回る子供たちの声を聞きながら、いつの間にか田我流が持つに至った「チル性」を浮き彫りにするシチュエーションでのインタビューとなった。
取材・文:山田文大 撮影:yukitaka amemiya 動画:古見湖 編集:新見直目次
料理は音楽に似ている
──早速ですが、まず最近の日々の生活についてうかがわせてください。田我流 最近は……朝7時前とかに起きて、子供が登校するから、それと一緒に自分も動き始めますね。8時くらいからスタジオ作業を始めるのかな。
子供は、自分が迎えに行く日もそうじゃない日もありますけど……大体夕方の17時ぐらいまで作業して、ご飯つくる時はつくって食べて、風呂立てて……そういうことを一通りやって、子供が寝た後に(自分の制作の)宿題がある時はもうちょっとやるかなぁ、という感じです。
今はやることが昼に集中しているので、どうしても朝型の生活を送っています。
──想像すると絵的に素敵ですね。
田我流 料理は“一手間”が大事って言いますけど、手間をかけた分だけ美味くなる。あといきなり自己流にするのではなくて、レシピがあったとしたら初めはまずレシピ通りつくっています。その(基本のレシピの)良いところを学んで、分量のバランスを勉強する。そこから、ダシとか他の食材のハーモニーで、調味料の代用をできるかどうかを考えたり。
お金をかければ美味いかと言われたら「?」だし、安くても美味いものはつくれる。季節の食材、ダシ、スパイスで、どうつくるのか。美味いって言って食べてくれたら嬉しいですよね。料理はビートに似ているし、音楽に似ている。超楽しいですね。めっちゃ、リラックス、リフレッシュ、チルです。 ──なんだか料理のお話で、田我流さんの本質というかインタビューの核心に触れてしまったような気がします(笑)。生活と制作が地続きにあるということもわかりました。
田我流 ほんとですよね(笑)。
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