田我流インタビュー「時代はガチでILL」だからこそ必要なもの

「時代はガチでILL」だからこそ

──まさにその通りだと思います。同時に直感を受け取り、夾雑物抜きでそのままフォーカスするのって、それ自体すごい難しい気もします。スマホもありますし、世界は情報であふれていますよね。田我流さんは、独自の直感の受け取り方、回路の開き方みたいなものってあるんですか?

田我流 あるんじゃないですか、やっぱり。リリックでもそう言ってますけど、直感は才能だと思うので。だからそれが結果として、その人のセンスなんじゃないですかね。例えばサッカーとかもそうじゃないですか。もちろん戦術とかシステムは、チームメイトのチームプレイを円滑に進めるための基盤であり要ですけど。ただ、そこそこのレベルまでいくと直感で動いているんだと思うんですよね。最後はインスピレーションというか。

──まさにアートの核心に迫る話ですね。「Idea」の制作に関して、もう少し掘り下げてうかがいたいです。

田我流 「Idea」は話が来てすぐ、とりあえず仮のビートでつくっておいて、リリック自体は1日2日で書きました。アートがコンセプト()と聞いて、俺が思うアートをそのまま書いた。そんなに時間はかからなかったと思いますね。ただ、ウッドベースやトランペットを生で弾いてもらっているので、全部で3週間くらいですかね。

チルというコンセプトも取り入れてほしいということで、「You gotta chill,時代はガチでILL」と入れています。

※CHILL OUTのメーカーである合同会社Endianが協賛をつとめる、ミューラルアート(壁画)プロジェクト「MURAL ONE LINE」。田我流の「Idea」は、同プロジェクトのタイアップソングでもある

──ここでいうチルには、どういう意味を込められているんですか?

田我流 どうなんですかね。アートの方にフォーカスしていたので、そこまで意識していないかもしれないです。チルって「ワサップ?」みたいに色々な使い方ができるから。気が立っているやつに落ち着けよって意味で「チル、メン?」とも使うし。なんとなく、ゆったりして気持ちいいってことなんでしょうけど。

──辞書的な、単語が持つ意味はもちろん理解できます。ただ、ここでは“ILL”という言葉とライムで響き合っているわけですが、ここまでチルという単語が市民権を得たのって、まさに「時代はガチでILL」故なのかなという。 田我流 反動ですよね。社会が病みすぎてますもん(笑)。アンビエントが流行っているというのも無関係じゃないと思いますけど、みんな疲れているじゃないですか。

こっちが望んでもないのに延々と誰もがLINEで即レスを求められるじゃないですか。どこでもWi-Fiがあるせいで何でもかんでもレスしなきゃいけなくなっちゃって。早過ぎますよね。なんだったら原稿もデータも全部送られてくる。いま見たくないんだけど……みたいなものもどんどん。それでもこなさないと積もっていくから、結果としてやらざるを得ない。

騙されているんじゃないですか、俺らみんな。価値観も刷り込まれているし。子供たちとか相当すごい早さで生きてくことになると思うし、目が悪くなるのも早いだろうし。どうなっちゃうんですかね?

──だからこそ「直感」の持つ意味が大きい気がします。楽曲「Idea」はチルでいることを保つ、ILLにならないためのガイダンスと言えるかもしれません。

自分に嘘つかない。

──個人的な興味からもうかがいたいのですが、田我流さんは、アーティストとして意識していること、努力していることってありますか。

田我流 あんまり自分に嘘つかないこと。ステージの上で思ってないことは言わない。“圧”とかを勝手に感じ取ってタイミング的に言っちゃうことってあると思うんですよ。そういう瞬間を削っていくというのは、昔からずっと心がけていますね。そこで嘘を吐くと、どんどん自分じゃない何かになっていってしまう。多少、鈍臭くても良いからそっちを選ぶようにしています。

──ありがとうございました。最後に、田我流さんには夢はありますか? 話せること、話せないことあるかもしれませんが、ざっくばらんにうかがいたいです。

田我流 いくつかあります。話しても良い夢は……単純に、あの、今の情勢もあるし難しいのかもしれませんが、ずっとロシアに釣りに行きたいと思っています

一応俺の調べた限りだと、日本の上の方、東北や北海道で釣れる魚はほぼ全部釣れるらしいですよ。一番興味ある、大国中の大国。すぐそこ、北海道の宗谷岬から見えるのに俺らロシアのことマジで何も知らないんですよ。あんなでかいのに謎に包まれすぎてるのも意味不明ですし。

人間がめちゃくちゃあったかいって話は聞きますけど。情に熱くて一度仲良くなると、すごくよくしてくれるって。行ってみたいですね。ロシアに行けば、今起こっていることももっとわかるんじゃないですかね。 

──素晴らしい答えです。質問する段階で、どんな夢も予想していませんでしたが、それでもまったく予想外のアンサーでした。 田我流 直近でやりたい夢もあるんですけど、言いたくないというか、いま口に出したらなくなっちゃいそうだなっていう。もうちょっと先ですかね。それは、野望です。

──なんだか、田我流さんの目には具体的なヴィジョンが映っているみたいですね。楽しみにしています!

「CHILL OUT MUSIC」特設サイト
田我流: Interview まだ、直感だけで生きれるんじゃないか?

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