「ゆれる」は、もう書けない
──スタジオに入っている間は具体的にどういう作業されているんですか?田我流 そうだな、まず歌詞を書きます。とにかく最初は音楽にまつわることやって。あとはメールのやり取りだったりとかの事務作業ですかね。まぁそんな感じですよ。アッという間に一日が飛んでいく。あ、もう一週間終わったんだみたいな。 ──そういう忙しい日々の中で田我流さんがチルしてるな、と思える瞬間ってどんな時ですか?
田我流 今日ここに来る間とか、車の窓から木が芽吹いているのが見えて、「やべぇ、めっちゃきれい」みたいな。ちょっと落ち着きましたね。音楽を聴きながら来たんですけどそれも良い感じで、俺の中のポエジーが湧き上がってる。最近は移動の時間が落ち着く瞬間ですね。
──そういう時に聴いている音楽を教えてほしいです。あるいは最近のお気に入りの楽曲などあれば。
田我流 最近は、これからリリックを書こうと思っているビートが多いのかな。とにかく時間がないので、ないなりに。移動中のドライブの間、車窓からの景色を見て色々……こういうのかな、ああいうのかなと楽曲のイメージを膨らませています。
やっぱり何か書きたい、次の曲をつくりたいという思いがあるから聴いてしまうんでしょうね。エモい瞬間ありますよ、今グッときてるぞっていう。そういう瞬間を忘れないようにして曲の中に落とし込んでいく。それが最近の自分にとってのホットな音楽ですね。
──こうやってうかがっていると、家族ができたことが田我流さんにとっての一大変化なのだなとわかります。ただ同時に、田我流さんの変わらない部分の方をなぜだか強く感じてしまう。それこそクラシックである「ゆれる」にしても、日常のふとしたチルな瞬間から「ポエジーが湧き上がっている」としか思えない楽曲なわけで。
田我流 (「ゆれる」の)歌詞はよくできたリリックですよね。風通しの良さもあるし、奇をてらってないというか…ガチガチにつくり上げた自分像ではない。普通に日々思っていることがたまたまリリックの中に集約された。ちょうどいいバランスで歌詞の中に収まったんですよね。なんらかの核心に触れた楽曲なのかな。すごいナチュラルで、今書こうとしてももう書けないですね。
田我流 良い時間が流れてたってことなんじゃないかな。ただ、その瞬間を取り戻そうとすることは良くないことだと思いますね。あれはそもそも偶然できた曲なんです。
元々は大学生がつくったすごいレアなレコードから拾ってきたジャズのスタンダード楽曲、キース・ジャレットの「My Back Pages」をビートに書いていたリリックで。それを半年くらい書いては消し書いては消してという感じだった。
その頃、EVISBEATSさんのところに行った時に「このビートではめられる人がいないんですけど、気に入ってるんで何かないですか」と言われたんですよ。じゃあ書いている曲をちょっと乗っけるかと。それで乗っけたのがそのリリックなんです。
だから狙って書いたわけではない。そこがまた良かったんでしょうね。つくらされた感半端ないですけどね、神に。あ、やられちゃったな、まあ良いか、みたいな(笑)。 ──(笑)。楽曲は言うまでもなく、MVがまた素晴らしい。楽曲の魅力を余すところなく伝えていますよね。
田我流 自分ではなんとも言い難いですけど、あれは一回つくってイマイチだなと思って、もう一回撮り直したんですよ。
静岡に釣りに行って、マジで2日間まったく釣れずに帰ってきた。その時一緒に行ったのがPVを撮っている友達。それで「この間のイマイチだったから、今から撮り直そう」という話になって、朝だったからめっちゃ顔腫れていて、豆みたいな顔してるんですよ(笑)。
だから本当にノリでつくったというか。やっぱり直感ということですね。タイミングというか。
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