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連載 | #3 「ニコニコ超会議2022」特集

「ボカロの仕事は絶対やりたかった」tamimoonが描くファッショナブルな初音ミクたち

「ボカロの仕事は絶対やりたかった」tamimoonが描くファッショナブルな初音ミクたち

イラストレーター・tamimoonインタビュー

ボーカロイド(VOCALOID)文化の祭典「The VOCALOID Collection ~2022 Spring~」(通称:ボカコレ2022春)が4月22(金)~25日(月)に開催される。

2020年に始まったボカコレは早くも4回目を迎え、今回は4月23日(土)から4月30日(土)に行われる「ニコニコ超会議2022」と同時期での開催となる。

今回、「ボカコレ2022春」のキービジュアルを担当したのは、気鋭の若手イラストレーター・tamimoonさん。キービジュアルは初音ミクGUMIv flower可不を描いた4つのバージョンが用意されており、ボカコレ参加者はそれぞれのイラストを動画素材やサムネイルに使用することもできる。

tamimoonさんは、2020年頃から本格的に活動を開始したイラストレーター。若い女性を中心に人気を集め、この春には画集『IDENTITY』を発売し個展も開催、名実ともに時代をけん引する人気作家の一人だ。 肌の血色感、アンニュイな視線、トレンドを押さえた服装。tamimoonさんの描くファッショナブルな女の子たちは、今にも語り掛けてきそうな実在感を持っている。今回はtamimoonさんにインタビューを行い、彼女のルーツやボカロに感じる魅力について聞いた。

取材・文:ヒガキユウカ 編集:小林優介

目次

絵とボカロが好きだった子供時代

──tamimoonさんが絵を描き始めたきっかけを教えてください。

tamimoon 小さい頃から、絵ばかり描いている子でした。特に動物や魚を描くのが好きで。兄の影響で『週刊少年ジャンプ』を一緒に読むようになってから、人物も描くようになりました。特に『BLEACH』の朽木ルキアちゃんや、『家庭教師ヒットマンREBORN!』のクローム髑髏ちゃんが好きだったのを覚えています。

『REBORN!』は作者の天野明先生の絵がすごく綺麗で、見ていると「自分も描きたいな」と思わされました。

──最初はアナログで描かれていたんですか?

tamimoon はい。中学生の頃に初めてペンタブを買ってもらってからは、デジタルで描くようになりました。

──そこから、どんな経緯で今のスタイルになっていったんでしょうか?

tamimoon 私が中高生の頃は、イラストや漫画という趣味が今ほどオープンにしづらかったんです。今だと『鬼滅の刃』とかが流行って、みんなが絵を描いたりコスプレしたりして、「漫画が好き」と言っても受け入れられやすくなってると思うんですけど。それこそ、ボカロも小学生の頃から好きだったんですけど、周りに言えなくて隠していました

特に高校からは周りの友達の趣味に引っ張られた部分もあって、絵に対する興味が薄れていた時期があって。その頃にファッションが好きになったんです。そこから徐々に「やっぱり絵を描くことも好きだし、ファッションイラストを描きたいな」と思うようになりました。

──高校卒業後は、イラストや服飾の学校に進まれたのでしょうか?

tamimoon イラストや服飾とは全く関係ない学校に進みました。とはいえ、昔からものづくりが好きだったこともあり、クリエイティブ系の進路に進んだので、今と通ずるものはありますね。

──その間に、インターネットでイラストを発信する経験はありましたか? tamimoon ありました。といっても、「髪型や服装が可愛いな」と思った友達の絵を描いて、Twitterに上げる程度だったんですけど。身内の友人に向けて発信していたものが、思いのほか多くの人に見てもらえるようになって。そこから絵のお仕事をいただけるようになっていった感じです。

初めて絵の仕事をいただいたのは2020年の1月です。その年の8月にKADOKAWAさんから「作品集を出しませんか?」と声をかけてもらいました。

──それが先日発売された『IDENTITY』ですね。

tamimoon はい、ちょっと時間がかかっちゃったんですけど。そのお話をきっかけに、絵に対して「全力を注いで頑張ろう」って思えるようになりました

──先日まで個展も開催されていて、現地は急遽整理券が配布されるほど大盛況でした。今は、ご自身的にも「イラストで食べていくぞ」というモチベーションが高いんでしょうか?

tamimoon個展「IDENTITY」会場

tamimoon そうですね。イラストだけでなく自分が伝えたいこと、好きなことを表現し続けたいと思っています

最初は自分の気持ちが追いつかない部分も正直ありました。周りからいただく評価もそうですし、急にどんどんいろんなお仕事をいただけるようになって……「自分でいいのか?」と不安な部分も大きかったんですけど、周りに引っ張ってもらっていく中で、自分の心もだんだん追いついてきました。

──先日、tamimoonさんのイラストに登場する女の子たちが所属するモデルエージェンシー「tamimoon」を設立されましたよね。こちらも、今おっしゃったような気持ちの変化の現れなんでしょうか?

モデルエージェンシー「tamimoon」所属モデルたち(左からYUKI、RIKU、NANA、JUN、RIN)/画像は公式サイトより

tamimoon これについては、私は活動する上で「自分がやりたいことをやること」と、「誰もやっていない新しいことをやること」を大切にしていて。ブランドをやられているイラストレーターさんはいましたけど、モデルエージェンシーをやっている方は、私は見たことがなかったんですよね。

もともと私が描いていた女の子ですごく人気な子たちがいて。実在する子のように自分も大事にしたいし、みんなに好きって思ってもらいたくて。私が前に出る形も嬉しいんですけど、それ以上に彼女たちが活躍していって、より愛される女の子になってほしいと思っていたんです

──非常にユニークで先進的な取り組みだと思います。女の子ごとにモデル依頼の窓口も開いていらっしゃいますが、実際に企業さんから「この子を起用したい」という依頼は来ていますか?

tamimoon そうですね。「この子でお願いします」ということもありますし、設立前にいただいたお仕事でも「こういう取り組みをやる予定なんです」とお話しすると、皆さん「あ、それならぜひこの子でお願いしたいです」と言ってくださっていました。今もモデル宛の依頼は増えているので、「やってよかったな」と感じています。

念願叶った「ボカコレ2022春」アートワーク

──先ほど「小学生の頃からボカロが好き」とおっしゃっていました。当時はどんな曲が好きでしたか?

tamimoon 小学生のときに初めて自分で買ったCDが、kzさんの『Re:Package』というアルバムで、それがすごく思い出深いです

当時のボカロ曲には、ボカロならではの良さがあふれているんですよね。ボカロだからこそ歌える歌や、初音ミクちゃんだからこその歌詞がすごく衝撃的で、どハマりしていました。

『Re:Package』/画像はAmazonから

──当時はどんな形でボカロに触れていましたか?

tamimoon ニコニコ動画で見てましたね。もうニコニコ動画大好き小学生でした。周りの友達はボカロを知らなくて……知ってたけど隠してたのかな?(笑)。いずれにしても当時はまだ知っている人は知っているレベルの文化だったので、一人でこそこそ楽しんでいました。

──では今回のボカコレアートワークはずっと待ち望んでいたお仕事だったんですね。

tamimoon 本当に嬉しかったです! 2020年頃にミクちゃんのファンアートを描いたことがあったんですけど、それ以降「お仕事をもらうまでボカロは絶対描かないぞ」と決めていたんです。絶対にボカロのお仕事が欲しかったので。 ──そうだったんですね。なぜ、描かないと決めていたんでしょうか?

tamimoon 私の中では、ファンアートや二次創作に怖さを感じる部分があったんです。もしミクちゃんを描くとしたら、tamimoonらしくファッショナブルに描きたかった

でも、みんながそのキャラクターに持ってるイメージを損ねてしまったらどうしよう…と不安になってしまって。公式で描いたら「ちゃんと会社からOKが出てるもの」って安心して見ていただけるかなと思い、その機会をずっと待ち望んでいました

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