「見ず知らずだった私たちから、まだ見ず知らずのアナタへ」というコンセプトを掲げ、オーディション「ヨルヤン」を勝ち抜いた面々で結成。ちなみに発音は「見ず知らず」ではなく「親知らず」と同じ。
2021年1月にデビューして以降、映画やテレビドラマの主題歌など数々のタイアップに抜擢。1年間の集大成となる1stアルバム『現在地未明』が、3月16日(水)にリリースされた。
大原きらりさん、作山由衣さん、実果さん、ゆゆんさん、よせいさん。今回は彼女たちがDECO*27さんとつくり上げてきた音楽にフォーカス。
ボカロPの楽曲を歌う彼女たちにとって、近年メジャーシーンからも熱い視線が注がれるボーカロイドや歌い手は、どのように映っているのだろうか? まずは“お父さん”と慕うDECO*27さんとの関係性から、mzsrzというグループに迫っていこう。
【画像】ボーカルグループ・mzsrz撮り下ろしカット(17枚) 取材・文:満島エリオ 編集:都築陵佑 撮影:宇佐美亮
目次
「DECO*27はお父さん!」の真意
──率直にうかがいたいのですが、みなさんにとってプロデューサーであるDECO*27さんはどんな存在でしょうか?よせい みんな共通だと思うんですけど……
一同 お父さんのような存在です!
──お、お父さん!?!?!!?
よせい 最初の段階でDECO*27さんが「僕は、mzsrzの父親のような存在だと思ってる」って言ってくださったんです。その瞬間からDECO*27さんは私たちのお父さんになりました(笑)。
一同 (笑)。
よせい お父さんと言いつつ尊敬の念しかないですよ。私たちもDECO*27さんのいちファンです。
──DECO*27さんを知ったきっかけは何でしたか?
大原きらり 私は小学生の頃に遊んでいたニンテンドー3DSのゲーム『初音ミク and Future Stars Project mirai』がきっかけです。そのテーマソングがDECO*27さんの「ゆめゆめ」だったんです。めっちゃ可愛い曲なんですよ。当時、その曲が大好きで繰り返しゲーム内のPVを観ていて。
「ゆめゆめ」がすごく刺さって、改めて「いいな」と思った時にmzsrzのオーディションがあって……という感じです。
ゆゆん 私も小学校4年生くらいの時にYouTubeでボカロ文化に出会って、いろいろ聴きはじめる中でDECO*27さんの曲に出会いました。
「妄想税」か「毒占欲」のどっちかだったと思うんですが、そこからDECO*27さんの曲を漁ってプレイリストをつくって、ずっと追いかけています。
このオーディションも、課題曲がDECO*27さんの「インベーダー」だったので「これは歌わないと」っていう使命感で(笑)。
その時はDECO*27さんの曲とはわからないまま、「歌い手っていう文化があるんだ」って思ってました。その後に、今でもずっと大好きな「ハートアラモード」っていうめちゃくちゃ可愛い曲に出会って、そこからDECO*27さんの曲を全部聴きました。
でも、聴いてみたら知っている曲がいくつもあって、潜在的に耳にしていたんだなって。初めてしっかりボカロを聴いてみて「いい曲ばかりだな」と思いました。可愛いのもあればすごく速い人間離れした曲があったり、いろんなジャンルの曲があって、音楽観が広がりました。
2000年代生まれにボカロ・歌い手はどう映る?
──実果さんのお話にもありました「歌い手」は、DECO*27さんの楽曲を歌うという意味では近い部分もあると思います。みなさんから見た歌い手文化について教えてください。 ゆゆん 私は、歌い手の向日葵さんの歌い方や歌声すべてが自分の理想で、そこから追いかけるようになりました。私が中学3年生の時に向日葵さんがアルバムを出したんですけど、それもひたすら聴いて、歌声を吸収して真似したりしてます。
よせい 歌い手の中には顔出しをしていない方もいらっしゃると思いますが、歌だけで表現してるのがすごいなって。
私たちは表情とか身振り・手振りでも表現できるんですけど、それを声一本で勝負してるのはすごく素敵だなと思います。
実果 私にとっては、歌い手やボカロ文化が音楽の中心だったので、顔を出さないで歌うのが普通だと思っていたんです。なので、自分が顔を出しているのは今でも不思議というか、抵抗もありました(笑)。
でも、表情からしか伝わらないものってあると思うし、いろんなアーティストさんのライブ映像を見るようになって、アイコンタクトしてるところとか、本当に楽しそうなところとか、泣きそうな顔をしているのを知って、「これもいいな」と思うようになりました。
──ちなみに、同級生やお友達の方も、ボカロや歌い手をメインで聴いている方が多いんですか? 実果 いたはいたんですけど、昔は「何それ……?」と言われることが多くて、「これは言っちゃいけないんだ」って思って隠したり。仲いい子とか知ってる子とは話すくらいですね。
よせい そうなんだ……。何を聴くのも自由なのにね。
ゆゆん 私も小学生の頃はそこまでオープンにしてなかったです。高校生になってから趣味が合う女の子たちと出会って、そこではオープンに話すようになったんですけど。
小・中学生の時はそういう時期なのかわかんないですけど、ボカロ文化とかアニメとかに否定的な考え方の人が多かったです。
大原きらり 私はメロディが好きであればオールジャンルになんでも聴くタイプなんですけど、その中でも特にアニソンやボカロ曲が好きで。
でもみんなが言ったように、周囲からそういった文化の見られ方はそんなに良くなくて、「好き」って言えない時期もありましたね。
──皆さんの世代だともっと一般的に浸透しているものかと思っていたので、少し意外でした。
ゆゆん でも、TikTokとかの影響もあって、最近は「その(ボカロ)曲知ってる!」って言われることが増えました。とはいえ、聴かない子には全然聴かないって言われます。 作山由衣 私はもともとボカロ曲もJ-POPもK-POPもたくさんの曲を聴いていたので、ボカロに偏見を持ったり否定的に思ったことは一度もなかったです。
あとは、最近ボーカリストやアイドルがボカロPとコラボして曲を出すことも多いですよね。私たちもDECO*27さんにプロデュースしてもらっているので、ネットカルチャーがメジャーシーンと融合して、新しいものが世の中に発信されていっていると感じます。
「できるまで導くから」DECO*27の優しさで涙
──ここからは、DECO*27さんとのエピソードを聞ければと思います。デビュー曲「夜明け」制作時には、DECO*27さんがmzsrzのメンバーそれぞれにインタビューを行ったそうですが、具体的にどのような話をされたのでしょう?──レコーディングではどのようなディレクションがありましたか?
よせい 最初の段階では、DECO*27さんは、まずは、私たちに一人一人が自分の解釈でその楽曲にアプローチしてほしいという考えもあり、曲に関する説明をしないんですよね。
リハーサルとしてそれぞれの解釈で2、3回通して歌って、それから本番の歌を録るってなったときにはじめて、DECO*27さんが歌や曲に落とし込んだ解釈やアドバイスをいただいて歌い方を調整していくっていう流れでした。
なので「夜明け」に限らず、レコーディングの最中には新しい発見がありました。(他のメンバーに向けて)あるよね?
ゆゆん ある! 私の場合、アルバムにも収録されている「フィルター」の歌詞で、<なかった>の「か」の部分をエッジボイス(声帯が閉じた状態で出る声)で発声していたんです。
大原きらり それで言うと私は、「フェーダー」の<待ちに待った未来は>からはじまる歌い出しが、「今までこんな小っちゃい声で歌ったことないわ」と思うくらいで、安定しづらくて震えちゃったりしたんですよ。でも、DECO*27さんが「今の震えめっちゃいいよ」って言ってくれたんです。
作山由衣 DECO*27さんは具体的な歌い方というよりも、「ここでは曲の主人公は怒ってるから怒ってる風に」のような歌のディレクションをよくしてもらうことが多いです。
「インベーダー」の時に、「やんちゃなさくちゃん(=作山由衣さん)を出してって言われて、キャラクターをイメージさせるような指導」のおかげで、表現の幅が広がりました。
実果 私は「夜明け」の時に、うまく歌えなくて泣いてしまったのが申し訳なくて…。そうしたら「やりたいことができるまで導くから」ってDECO*27さんが言ってくださって。「成長したいな」って思いました。また申し訳なくて謝ったら、「じゃあ歌で返して」ってこれまた素敵な返しがきて。本当にかっこよかったです。
──それ以外にDECO*27さんとのやりとりで印象的だったことはありますか?
ゆゆん レコーディングの休憩中に、よせいと一緒にDECO*27さんが作詞を担当したAdoさんの「踊」を歌ってたんですよ! そしたらいつのまにかDECO*27さんが見ていて(笑)。
──ど、どういう状況ですか……?
よせい 私たちが歌ってたら足音も立てずにいらっしゃってて、「え、いる!」みたいな感じで冷や汗かいたよね。でも、めっちゃノリながら見ていてくださってて。
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