『MANKAI MOVIE「A3!」』監督×舞台演出対談 2.5次元を牽引「エーステ」映画化の舞台裏

『MANKAI MOVIE「A3!」』監督×舞台演出対談 2.5次元を牽引「エーステ」映画化の舞台裏
『MANKAI MOVIE「A3!」』監督×舞台演出対談 2.5次元を牽引「エーステ」映画化の舞台裏

『MANKAI MOVIE「A3!」~SPRING & SUMMER~』松崎史也さん(左)と倉田健次さん(右)

POPなポイントを3行で

  • 『MANKAI MOVIE「A3!」』監督×舞台演出対談
  • 2.5次元舞台を牽引するエーステが映画化
  • 松崎史也と倉田健次に聞いた役者の成長
舞台演劇や役者をテーマとしたイケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』を舞台化した作品、MANKAI STAGE『A3!』(通称・エーステ)が実写映画化されるというニュースは、2.5次元業界でも大きな話題となった。

借金まみれで潰れかけの貧乏劇団・MANKAIカンパニーを舞台に、ひょんなことから主宰兼「総監督」を任されることになったヒロインと、個性豊かな役者たちが懸命にひとつの芝居をつくり上げていく姿は、ものづくりをする人だけでなく、今この時代を生きる多くの人の心を打つ物語だ。

作中の劇団は春組、夏組、秋組、冬組という4つのユニットに分かれており、2018年の初演からこれまで開催された『エーステ』の公演・ライブはすべて即日ソールドアウト。近年の2.5次元ミュージカルを牽引するプロジェクトのひとつに数えられる。

12月3日(金)に公開される『MANKAI MOVIE「A3!」~SPRING & SUMMER~』では、新生MANKAIカンパニーのはじまりである春組と夏組のストーリーを描いており、2022年3月4日(金)には秋組と冬組が登場する第2弾『MANKAI MOVIE「A3!」~AUTUMN & WINTER~』も公開。劇団員を育成する“監督”には、映画の観客を抜擢し、登場人物たちが語りかける新感覚エンターテインメントが展開される。

エームビ”こと『エーステ』の実写映画で監督・脚本を担当した倉田健次さんと、舞台シリーズすべての演出を手掛け映画にも舞台演出監修として携わる松崎史也さん。MANKAIカンパニーの“監督”に最も近い立場の二人から見た、『エーステ』の魅力や役者たちの成長とは──。

文:玉尾たまお 企画:ugiko 取材・編集:恩田雄多 ヘアメイク:依田陽子 スタイリスト:小田優士

目次

『A3!』はものづくりに関わる自分たちも通ってきた物語

『MANKAI MOVIE「A3!」~SPRING & SUMMER~』

──舞台作品である『MANKAI STAGE「A3!」』(以下『エーステ』)の映画化を聞いたときの率直な印象を教えてください。

松崎史也 2.5次元と呼ばれる演劇が置かれている環境で、『エーステ』が担っているものをある程度自覚している中でのお話だったので、業界や俳優、応援してくださるお客さまにとって素敵なお話だなと思いました。

正しいタイミングで、あるべき機会がきたなと。もちろん単純に「こんなことあるんだ! すげえ!」って思う部分もあったんですが(笑)。

倉田健次 僕はこれまで映像だけに携わり、2.5次元という舞台に触れたことがなかったので、お話をいただいて初めて『エーステ』を拝見したんです。こういう世界があるんだっていうまっさらなところから、内容やこれまでのお客さまとの関係を知って、すがすがしく誠実なストーリーだなと思いました。

その映画化で担当することに気持ちのいい責任感を感じましたし、このタイトルならそれを背負うことができるなと。

──映画の予告映像が解禁されたとき、松崎さんが「倉田監督の“エーステ愛”がすごい」というツイートをされていました。具体的にどういった点に愛を感じたのかを教えていただけますか? 松崎史也 今、倉田監督が「これまで2.5次元に触れてこなかった」とおっしゃいましたが、そうは思えないくらいこの映画には理解と愛が溢れているんですよ。

作品をつくるときの愛情って、技術的な出力でしか測れないんです。最初に脚本を読ませていただいたとき、作品の細部まで理解した上で、映像で表現するならどうすればいいかというところまで、きちんと考えてくださっていたのがわかったので「この方に担当していただいて良かった!」と心の底から思いました。

メディアミックスでは異なるアプローチがぶつかってしまうこともあるかと思うんですが、どれも共感できるところばかりだったので、これはもう「愛」だなと。

松崎史也さん

倉田健次 ありがたいですね。アニメや漫画などが原作になった映像はたくさんありますが、「これはちょっと違うな」と思ったり、制作サイドの意向が強いなと感じたりすることがありますよね。今回『エーステ』を映画化するにあたり、どうすればエーステファンが気持ちよくその世界に入れるか、違和感を覚えず映像化できるかをじっくり考えたんです

原作がある作品としてはもちろん、松崎さんや関係者の方々の愛情をどう表現していくかという部分には、たしかにいつも以上に神経を注ぎました。作品は、特にそういうことを考えないといけない気がしたんです。そんな力を持ったタイトルですよね。

倉田健次さん

松崎史也 そう思います。ファンが多いからという以上に、ゲーム自体が「つくり手がもがいて何かをつくろうとする話」だから。自分たちも確実にそこを通ってきているわけですもんね。

倉田健次 僕もそういう人生を歩んできた人間だし、他人事じゃないんですよ。いい加減なことをすると自分の人生も裏切ってしまうような、なんとも言えない使命感がありました。

──共につくり手のお二人が、役者や監督というつくり手を描くから、ということですよね。

松崎史也 はい。驚くような個性の登場人物もいますが、そうとも言い切れないんですよね。たしかにこういうやつっていい演技するよな……とか(笑)。

倉田健次 そうなんですよね。何かしらのバックボーンが演技に影響するのはよくあることですし、そういうことを描いている作品が原作なので、一筋縄ではいかないなと。

観客が“監督” 春夏・秋冬と変化する映画独自のカメラワーク

──『A3!』はTVアニメでは“監督”がキャラクターとして登場していますが、『エーステ』ではその役目を観客に委ねるのが斬新でした。舞台の映画化である『エームビ』でも、“監督”を観客・視聴者として描く演出は納得できたのですが、このあたりはどんな話し合いがあったんでしょうか?

倉田健次 『エーステ』のキャストが登場する映画化作品に、全身が映り込むような形で“監督”が出てきた場合、どうしてもひとりだけ浮いてしまうんですよね。ゲームと舞台では“監督”の表現の仕方が違いますが、どちらも“視点側”として存在しています。

ですが『エーステ』の演出を踏まえて、映画には登場人物として出さない方向がいいのかなというところから考えはじめました。そこからかなり模索したんですが……(笑)。

松崎史也 それを技術的に成功させているのがすごいんですよ! たとえば手や足とか、「いまここに“監督”がいるな」っていうのを観客にわからせた上で、破綻なく見せきっているのは本当に離れ業だなと思います。いや、本当に素晴らしい。

倉田健次 ありがとうございます(笑)。さじ加減が難しいところですが、ギリギリのバランスで成り立っているかなと。どのシーンでもそういうカットを入れすぎると、「“監督”の視点はこう」って限定されすぎて、観客が想像できる幅がなくなってしまう。

でも、どの場面でも“監督”が見守っているように見えてほしかったので、ファンの方や初めて観る方にも違和感なく観ていただけるようなバランスを模索しました。
『MANKAI MOVIE 「A3!」~SPRING & SUMMER~』本予告
──今回、松崎さんは舞台演出監修として参加されていますが、具体的にどういう部分で関わられたのでしょうか?

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