写真やイラストなどの画像素材だけでなく、ビデオ素材、ベクター(注)やテンプレート、モーショングラフィックス、オーディオ、果ては3D素材まで、映像制作に必要なあらゆる高品質な素材が1つのサイトに集約されている。
(注)点の位置や線が数値で表されたデータ形式。デザインをそのままにサイズの変更ができ、各パーツごとに点で分かれているためアレンジがしやすい。
提供する素材は現在、およそ2億7000万点。さらに世界中の9万人を超えるコントリビューターが、現地で撮影した素材をアップしており、その数を伸ばし続けているという。
アドビによると「最近のトレンドとして、映像業界でストック素材を使うケースが増えている」とのこと。その背景にはコロナ禍によって撮影が難しくなっていること、さらに企業活動や個人でも映像制作の裾野が広がっていることが挙げられる。
今回は需要の高まるストックフォトサービスについて、アドビ監修のもと「Adobe Stock」の特徴やライセンスの形態を解説。
さらに、実際の使用者としてAdobe Stockを日々のクリエイティブ制作で活用しているというAdobe Creative Residency Community Fund認定・モーションデザイナーのG2さんにもお話をうかがった。
執筆:ヒガキユウカ 編集:小林優介
目次
Adobe Stockの登録方法 無料でも画像素材や4K/HDの動画素材も利用可能
まずはサービスへの登録について。Adobe Stockは30日間無料でサブスクリプションプランを体験できる。またプリペイドのクレジットパックで必要な素材の数に応じてクレジットを購入することも可能だ。さらにAdobe Stockには、Adobe IDを発行すれば使える無料素材もある。・Adobe Stockホームページの「今すぐ開始」ボタンから登録すると、通常アセットが月10点利用できる年間サブスクリプションプランに登録でき、初月は無料で利用可能
・画面右上の「料金プラン」ページに遷移すると、年間サブスクリプションプラン、月々プラン、クレジットパックから選ぶことができる。前項の30日間の無料体験版が含まれるプランもある。
一般的なストックサービスでは、無料素材の解像度が低い、点数が極端に少ないなどの制限をかけていることも多い。アドビによると、Adobe Stockには無料素材でも2021年9月現在で57万点の写真、イラスト、ベクター、4K・HD動画素材が用意されている。しかも、無料素材のクオリティについては有料素材とまったく差がないという。
またAdobe Stock最大の特徴は、なんといってもアドビの展開するソフト群とのネイティブ連携。
特に動画編集ソフトのPremiere Proでは、ソフトの中から直接Adobe Stockの素材を検索でき、プレビューデータを挿入・使用が確定してライセンスを取得すればそのまま本番データに反映できるので、非常に効率的に作業ができる。
BGMなどのオーディオ素材も同様に、プレビューデータでは途中にウォーターマークのボイスを挿し込んだりせず、音質を下げることで区別しているそう。
音がぶつ切りになったりもせず、正規データと同じテンポで動画を作成することができる。
G2「無料素材を豊富に用意してくれているのは、クリエイターからすると本当にありがたいですね」 G2「ですが、クライアントのいる制作で使うのであれば無料であることは重視していないです。それよりもライセンスがしっかりとしている方が重要なので、予算と相談しながらその範囲内で使う素材を選ぶようにしてます。
ストックのものも含めて素材を組んで、クライアントに確認してもらってから、購入して一括で差し替えることが多いですね」
Adobe Stock、3種類のライセンスの違い
商用で動画をつくっている人であれば、素材のライセンス項目は常に意識しているだろう。しかし、サービスによっては素材提供者が素材の用途を設定できるものもあり、サービス側の定めたライセンスの基準と各素材の基準が異なっているケースもあるという。G2「ライセンスの範囲って絶対に間違ってはいけなくて、ライセンス範囲を超えた使い方をしていると、損害賠償になることもあるので」
成果物の用途によって必要なライセンスの範囲は変わってくる。Adobe Stockでは、3つのライセンスが用意されている。
ライセンスは、素材のサムネイルをクリックすると選択できるようになる。通常ライセンス:もっとも基本のライセンス。無料素材もこのライセンスが適用される。一般的なWeb制作、オンライン広告での用途であれば、よっぽどの事がない限り、このライセンスの素材で対応可能。
強化ライセンス:素材の50万回以上のコピーまたは表示が可能。
拡張ライセンス:商品、テンプレート、他の製品で再販を目的としてアセットを使用できます。
G2 「ライセンスの判別に関しては、正直アドビさんはとてもわかりやすいです。サイトによっては一括で書いてあるだけだったり、プラン毎の比較表がわかりにくい所にあったりするので。
極端な例だと、拡張ライセンスでチェックを入れて検索した素材が通常ライセンスしか使えなかった、というケースもあるぐらいで。その点、アドビさんは素材ごとにパっと見られるのでありがたいですね」 いま、世の中全体で権利やロイヤリティに対する意識が高まっている。予期せぬトラブルを避けるためにも、クライアントの存在する映像制作の場合、G2さんは毎回拡張ライセンスを選んでいるという。
G2 「通常ライセンスで済む場合であれば良いと思うのですが、企業で使う場合、制作した動画をインターネットで公開したり、メルマガに載せたり、いろんなシーンに活用しますよね。
僕としては納品した映像の拡散・閲覧数や二次利用まではなかなか把握できないので、保証を買うという意味で、最初から拡張ライセンスのほうがいいと考えています」
Adobe Stockに高品質な動画・写真素材が揃う理由
映像制作においては「イメージ通りの素材を確保できるかどうか」が、最終的な成果物のクオリティを大きく左右する。求めている素材がなかなか見つからない場合、素材探しに膨大な時間を費やすこともあるとG2さんは話す。
2億7000万点を超える素材から、クリエイターがイメージに合致する素材を見つけられるように、Adobe StockではアドビのAI・機械学習技術「Adobe Sensei」を組み込んでいる。
撮影者がつけたタグだけだと、人によって表記の仕方が違ったり、言語の壁によって、なかなか検索で見つけられないこともある。しかし、Adobe Stockでは、タグの情報だけでなく素材をAIで読み込んで検索ワードを判別しているため、探している素材がヒットしやすくなっている。
他にもクリエイター視点での検索機能を多数備えている。コピースペースのある素材、構図、被写界深度の深い/浅い素材など、クリエイティブワークに使いやすい素材の検索も可能だ。 G2「あとアドビさんは、日本の素材が増えているのがありがたいです。僕がフリーランスとして開業したてのころは全体的に日本の素材が少なくて、日本の企業の映像をつくりたくても使える素材を探すのに苦労してました」
アドビとしても日本人が映った素材の拡充には注力していたそうで、コントリビューターともコミュニケーションを取り素材数を増やしてきたという。
では、Adobe Stockに素材提供してくれるコントリビューターには、どんな人たちがいるのだろうか。
アドビによると、コントリビューターとして活動している人は、趣味で写真の作品を撮りたい人、これからプロのコマーシャルフォトグラファーになりたい人、すでに第一線で活躍している人など様々だという。
また、個人以外に法人のパートナーも存在しており、世界中のコントリビューターから毎週平均200万点ほどの素材が寄せられている。
さらに、コントリビューターになる人には全員、米国本社で作品の審査が行われているため、アドビとしても自信を持てるクオリティの素材を掲載しているとのこと。
Adobe Stockは素材バレを回避する動画クリエイターの味方
ここでG2さんから、「ストック素材バレ」の話が飛び出した。クリエイター同士だと、どこのサービスの素材を使っているのか、あらかたわかってしまうそうだ。G2「同業者同士だと、どこのストックサービスの素材を使ったかという、”ストック素材バレ”がたまにありまして、バレると少し恥ずかしい気持ちになるので、色を変えたり形を少し変えたりすることもあります。素材数が多すぎて、そもそも特定しづらいのも、アドビさんの良いところかもしれません」
そういった需要にこたえるため、検索パネルの左側に『まだ発見されていないコンテンツ』というフィルターが用意されている。これを使うと、まだ発見されていない、新しい素材や眠っている素材などが発見でき、素材がかぶらないようにすることができる。もちろん反対に、よく使われている素材で絞るフィルターも存在している。 近年、動画制作における1つのトレンドが、ベクター素材やモーショングラフィックス素材を利用する需要の高まりだ。
去年2020年以降、世の中の動画需要の増加に伴って、ベクター素材のダウンロードも伸びているという。アドビによると、After Effectsなどでアニメーションをつくる人たちが活用しているという。
ベクター素材は絵が描けない人でも動かすことができ、好きな色に変えることも簡単だ。ユーザーからも、「ダウンロードした素材を自分でカスタマイズして、さらに自由度高く動かすことができる」と評価されているようだ。 また、その他に最近の人気素材として注目されているのが、モーショングラフィックステンプレートだ。テンプレートをカスタマイズすれば、自分でAfter Effectsを使って高度なアニメーションをつくれなくても好きに動かすことができるため、YouTubeなどでオープニングやロード画面に活用されている例も多い。
「納期は絶対」G2さんがAdobe Stockを使う理由
G2さん自身も、Adobe Stockの利用で作業を効率化した一人だ。フリーのモーションデザイナーになって以降、様々な企業からの依頼で、Adobe Stockを活用している。G2「僕は実写の素材を使うことが多いです。自分で撮ろうとすると、ロケ地と人を押さえて、衣装やライトなども用意しなければならないので、予算が膨らんでしまうんですよね。ストック素材で見つけた方が圧倒的に安いですし、時間もかからないので、コスパは良いかなと思います」
逆に、ストックサイトを使う際に苦労したことについても聞いてみた。
G2「会社員時代、撮影の時間がとれなくて全部ストック素材でまかなわなきゃいけない案件を担当したことがあるんです。かつその内容が、『動物がこの角度で走っているカットと、鳥の瞳孔がパッと開いてすぐ戻るようなカットと……』という感じで、数の限られそうな素材だったんですよね。
そのときは1カット探すのに10時間ぐらいかけて、全部そろえるのに5人チームで2週間くらいかかったと思います。モニターを3台ぐらい並べて、海外のストックサービスにひたすら『bird eye』とか検索ワードを入れて。それに比べると、必要な素材がそろうまでの時間はかなり短くなりましたね」
画像素材ならライセンス次第では加工することで構図を調整することもできるが、動画素材ともなると、場面の連続性なども加味するとそういった調整は難易度が高い。
Adobe Stockでは、ビデオ素材をクリックして開かずとも、検索結果のプレビューにマウスオーバーをすることで簡単に映像を確認できる。 G2「確かにサムネイル画像ではよさそうだったけど、動かしてみたら違った、というのは結構あるあるですからね」
G2さんに今のAdobe Stockの利用状況を聞いてみると、「まずは専門性の高い個々のストックサービスを当たって、見つからなかったときに使うのが正直な意見です。アドビさんを前にして言うのもなかなか申し訳ないですが……」と本音が飛び出した。しかしアドビ側としては、それで問題ないという。
アドビによると、「アドビのストック素材だけを使って何かつくってほしいという狙いではありません。納期が厳しいとか、撮りに行けないとか、そういう事情があるときにAdobe Stockで補完いただけたらと思っています。クリエイターさんをサポートするツールの一つとしてご活用いただければ嬉しいですね」とのこと。
G2「まさに、納期は絶対なんですよね。どんなにいいものをつくっていても、1秒でも遅れたら0点。納期に間に合うクオリティの中で最大打点を出せるものを目指して制作しています。
そんなとき、ストック素材を買うことで10点上がるのであれば、絶対使った方がいいと思っていて。つくった成果物によってお客さんが利益を立ててくれないと、誰もハッピーにならないんですよね。そのためにコンテンツや、デザインや、クリエイティブというものがあると思っています。そこに対して点数を上げられるんだったら、お金がかかるにしても、素材を買うという選択は大いにありだと思います」
最後に、G2さんにAdobe Stockへの要望を聞いてみた。
G2「RAW素材がほしいです。ストックサービスに並んでいるのは加工された後のデータなので、こちらで色味を調整できないんですよ。だからいろんな素材を集めてくると、色がバラバラになってしまうんですよね。あとは、何のカメラを使って撮影されているかがタグ付けされていたら、とてもありがたいです」
アドビ「参考になります。担当に伝えておきます」
2億7000万点を超える豊富な素材と、高精度の検索機能。情報量と利便性の両面をバランスよく兼ね備えたAdobe Stockを活用すれば、きっと思い通りのクリエイティブが実現するだろう。
仕事で日常的に動画制作をする人や、自主制作で動画作品をつくる機会が多い人には特にオススメしたい。素材収集の精度や効率が上がることで、制作量やスピード、クオリティの底上げが叶うはずだ。
Adobe Stockの素材をチェックする
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