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インディーアニメ隆盛の功罪とは? 「BATEN KAITOS」対談

インディーアニメ隆盛の功罪とは? 「BATEN KAITOS」対談
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POPなポイントを3行で

  • Waboku × Myuk対談
  • 「BATEN KAITOS」展を開催中
  • 語られた、自主制作アニメ隆盛の光と陰
これまでEveさんの「お気に召すまま」やずっと真夜中でいいのに。の「秒針を噛む」「ハゼ馳せる果てるまで」といったアニメーションMVで人気を博してきたアニメーション作家・Wabokuさんが、数多くの人気作を手がけてきた実力派アニメーションスタジオ「A-1 Pictures」とタッグを組んだアニメMVプロジェクト「BATEN KAITOS」(バテンカイトス)。

連作のアニメMVが展開されるという「BATEN KAITOS」第一弾には、シンガーソングライター・熊川みゆさんの音楽プロジェクトであるMyukの「魔法」が選出され、その第一弾MVが今年3月に公開された。同曲の作詞作曲は、先述の通りWabokuさんとも交流の深いシンガーソングライターのEveさんが務めている。
Myuk – 魔法 (Official Video) / Waboku × A-1 Pictures “BATEN KAITOS”
現在、この「BATEN KAITOS」プロジェクトの一環として、Wabokuさんによる絵コンテやイメージボード、A-1 Picturesが手がけた設定画、原画などを展示した『SPAGHETTI PRESENTS JUNCTION #002 BATEN KAITOS powered by ZONe』が、東京都渋谷区の複合的カルチャー発信スペース・SPAGHETTIにて8月9日(月)まで開催中だ。

本稿では、8月1日に同展示会場で行われた「Waboku×Myuk トークショー」の模様をお伝えする。

また、トークショー後には、Wabokuさんに、現在新たな局面にさしかかっているインディーアニメ・自主制作アニメーションシーンへの期待と不安、その胸中をうかがった。

取材・文:穂先 求

目次

「BATEN KAITOS」は、Wabokuへのラブコールから始まった

Wabokuさん(左)とMyukさん(右)

『SPAGHETTI PRESENTS JUNCTION #002 BATEN KAITOS powered by ZONe』展示会場で行われたトークショーは、ソーシャルディスタンスを保った上で、およそ20人ほどの観客で満員となっていた。

万雷の拍手で迎えられ、登壇するWabokuさんとMyukさん。特にMyukさんは初めてのトークショー出演ということで、登場時には少し緊張の色もうかがえる。

まず初めに、Wabokuさんから「BATEN KAITOS」プロジェクトの経緯について語られた。 本プロジェクトは、A-1 Picturesを擁するアニプレックスがWabokuさんに「A-1 Picturesと一緒にアニメーションをつくらないか」と声をかけたことがきっかけでスタートしたという。その後、連作でのMVプロジェクトという形式や第一弾楽曲が「魔法」となることが決定。そこからWabokuさんがイメージボードを描き、作品の世界観などが固まっていった。

Wabokuさんが描いたイメージボード

Waboku「作詞や作曲を手掛けるEve君とはいつも一緒にやっていましたが、今回、彼が力強い女性ボーカルであるMyukさんに楽曲を提供するということで、僕にとってはいつもとは毛色が違うアーティストの方になります。そういった意味でも曲自体に新しさを感じていたので、アニメーションもいつもどおりのことをやるのではダメだな、という緊迫した雰囲気がありました(笑)」

一方、Myukさんは「魔法」が「BATEN KAITOS」プロジェクトに選ばれたことや実際の映像を見て感じたことを、次のように語る。

Myuk「『魔法』という曲は、私のイメージの中では"静寂"や"夜"、"孤独"といったイメージでした。でも、Wabokuさんによる『BATEN KAITOS』の映像を見ながら聴くと、明るい場所に飛び出していくような開放的なイメージに曲が変わっていて、本当に『映像ってスゴい!』と感激で言葉になりませんでした」

Waboku「僕自身、歌詞や曲調などからMyukさんの言ったような"夜"や"孤独"といったイメージも感じていました。ただ、それだけでなく楽曲からはどこか新しいものに向かおうとしている人の心情に近いものがあると思ったんです。

本作の『海の上に列車が走っていて、その上に街がある』『上と下の世界が巨大な水柱によってつながっている』といった設定については、もともとすごくスケールが大きなものをつくるのが大好きだったので、そのイメージを採用しました」

「BATEN KAITOS」の世界では海の上に列車が走っていて、その上に街がある

Waboku「それと、『BATEN KAITOS』を始める当時、実は自分の中でひとつ、アニメーションMVをやり切ってしまったような感覚を抱えていました。僕はそういった自分の心情が画に出てしまう人間なのですが、『一度まっさらにしたい』という気持ちが"多くのものが沈んでしまった海"というビジュアルに表れていますね。

ずとまよ。(ずっと真夜中でいいのに。)の『ハゼ馳せる果てるまで』から『BATEN KAITOS』くらいまでは、そうした『一回、海に沈めてもう一度やり直したい』といった気持ちを引きずってたのかなって」
ずっと真夜中でいいのに。『ハゼ馳せる果てるまで』MV
「一度海に沈んでしまった世界の中でまた新しく何かを始めていく」というイメージは実際の作品にも色濃く表れており、「BATEN KAITOS」プロジェクトの第一弾に相応しい仕上がりになっている。

本作の奥行きのある世界観について、Wabokuさんは「"水に沈んだ世界に電車だけが動いている"といったような設定の作品はほかにもあると思うんですが、本作独自の特色として入れたかったのが"世界をつなぐ水柱"の設定でした。この世界の中で、みんなが等しく影響を受ける障害のようなものとして描いています。これを土台として、そこから世界観をつくっていきました」と話す。

BATEN KAITOS独自の特色「世界をつなぐ水柱」

主人公となる女の子のキャラクターデザインについては、楽曲「魔法」からの影響を公言している。

Waboku「結構ほかのアニメーションMVも同様で、すごく抽象的なんですけど……楽曲を聴いた時に、歌詞や曲調なのかわからないけれど、キャラクターが思い浮かんで来ることがあります。『魔法』は"新たな旅立ち"というイメージから、まず活発なキャラクターにしたいと感じたんです。肌の血色が良くて、コントラストをつけて見栄えを良くするために髪の毛を白くして、また動きやすい格好をしていて……というふうに決まっていきました」

ここでMyukさんが「曲を聴く前には主人公像は違っていたのですか?」と質問。実は全然違っていたのだ、と答えるWabokuさん。当時の画も残っているそうで、どこかで公開したいとも話していた。

初期キャラクターデザイン資料

また、「魔法」の主要人物であるウサギの「ゴールドバニー」について、Wabokuさんは自身のこれまでの作品には"人間と、違う存在のコンビ"が登場しており、本作ではその非人間の枠をゴールドバニーが担当することになったと語る。ゴールドバニーがお気に入りだというMyukさんから、数ある動物の中からウサギが選ばれた理由について質問が飛ぶ。

Waboku「『BATEN KAITOS』を始める時に、せっかくこんな大きなことをやるのであれば、ファンタジーだけど日本の要素は絶対に入れたいと思いました。それで古いものなどを読み漁った時に、この映像に合った日本の動物として"かぐや姫の月とウサギ"というのが思い浮かんだんです」

主人公とゴールドバニーは、同じ言語で会話できているのか、といった質問を繰り出すMyukさん。これに対して、Wabokuさんは「非常に難しい問題だけれど、僕の中ではこの世界自体が"人間"と"獣"という分け方をしていない。見た目こそ違うけれど、人種が違うくらいの認識だと考えている」と回答。

さらに、まったくゴールド感がないにもかかわらず「ゴールドバニー」という名前になっている理由については、Wabokuさんがかつて育てていたサボテンの品種名由来である、といった豆知識も明かしていた。

「ゴールドバニー」

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