インディーアニメ隆盛の功罪とは? 「BATEN KAITOS」対談

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展示会の見どころと新たな謎

続けて、今回の展示の見どころについて問われたWabokuさん。基本的に世に出ることのない設定画や、完成した映像からではわからない主人公の刺青といったテクスチャの貼り込み具合、劇中では黒くて潰れたりと見えにくい部分などを展示で楽しんでもらいたい、と話す。

また、小さなポストカードのような形で並べられたイメージボードを指して、「BATEN KAITOS」第二弾にもつながるような設定や描写など、MVでは補完できなかった要素もあると発言。ほかにも、MVでも描かれていた黒板は、さらに文字要素を足して再現されているのだという。なお、ここで書かれている文字はWabokuさんオリジナルの言語で、アルファベットをもとにアラビア文字などのフォルムを混ぜてつくっているそう。

展覧会でも展示された黒板

Wabokuよくよく見ると文法らしき形式があって、一応頑張れば解読できるはずです。ただ、解読できても何のためにもならない文章が書いてあるということだけは伝えておきます(笑)」

そして、トークテーマは次なる第2弾について。この場で第2弾の公開が9月1日(水)となること、そしてその楽曲には再びMyukさんの「シオン」が起用されることが発表され、会場からは大きな拍手が上がっていた。

合わせて、キービジュアルも先行公開。

「BATEN KAITOS」第2弾キービジュアル

第1弾の後半に登場した赤髪の男(クマソ)を中心に、エミシと呼ばれる人造人間の頭がたくさん転がっている衝撃的なビジュアルだ。

Myukさんは第2弾となる「シオン」について、「この曲もEveさんに作詞作曲を手がけていただき、また『BATEN KAITOS』に携われて光栄な気持ちでいっぱいです。『シオン』はキービジュアルと違ったような穏やかな曲調ですが、この曲の中でどんな風にこのビジュアルが動いていくのかが本当に楽しみです」と期待感をあらわにする。

Waboku「第2弾はビジュアルを見た通り、このクマソという男にスポットを当てた内容になっています。その内容については楽曲が決まる前から考えていたのですが、初めて『シオン』を聴いた時に曲調や歌詞、Myukさんの歌唱などがまさにクマソのバックボーンに合致するというか、『このキャラクターを歌で表したらこうなる』という予期せぬマッチ具合に驚きました。曲を聴いた時に、強いイメージが思い浮かびましたね」

「BATEN KAIOS」第1弾キービジュアル

Myukさんが展示されたイメージボードの中にある「主人公とクマソのイラスト」について、「『魔法』を見た時は、主人公とクマソは敵対してるのかな? と思ったんですけど、今回の展示を見た後に第1弾のキービジュアルを見ると、実はクマソが女の子を守ってるのかも?って思えて……」と言及。

これに呼応する形で、Wabokuさんは「クマソが敵なのか、味方なのか……また、『魔法』の中の回想シーンなどを補完する要素が第2弾につながってきます」と期待感を煽る。

さらに、Myukさんが「ゴールドバニーちゃんは第2弾に登場しますか?」と聞くと、Wabokuさんはたっぷりと間をとってから「……出ます! 今回も可愛いです」と断言。会場からは大きな拍手が上がる一幕も。

赤髪の男・クマソ

「“伝える”ことに苦労した」アニメ制作における個人と集団

冒頭でも書いた通り、「BATEN KAITOS」はこれまで個人作家として活動してきたWabokuさんが、大手アニメスタジオであるA-1 Picturesと共に手がけるプロジェクトである。

現在ではアニメーションMVが盛り上がり、個人のアニメーション作家の活躍も目覚ましいが、トークショーではこれまで個人として活動を続けてきたアニメーション作家がアニメスタジオとタッグを組むというプロジェクトの裏話にまで話が及んだ。中でも、Wabokuさんはスタジオのアニメーターに“伝える”ことに苦労したのだ、と話す。

Waboku「今までの自分は、絵コンテなども『(最終的には)自分で描けばいいや』という感じですませてきました。しかし、本プロジェクトではアニメーターさんがメインで作画作業をされるわけで、自分が入れ込みたい演出や表情の変化をしっかりと相手に伝えることをこれまで怠ってきたな、と痛感しました。

今回、絵コンテも展示していて、自分の中ではわりと書き込んだと思っていましたが、実際につくってみたらアニメーターさんに伝えるためには足りない要素もあったんです。通常、力を入れたいカットは、絵コンテの中でもコマ数を増やして描いたりします。自分が力を入れたいカットであれば、その分、カロリーを使って人に伝える必要があったんです。それが十分にできていなかった反省もあったので、その反省は第2弾に活かしています」

「BATEN KAITOS」の絵コンテ。発言中のコマ数は、描かれた枠の数のことを指す

Waboku「アニメーターさんごとに『このカットで見せ場をつくりたい』とか 『アニメーターとしての自分を見せたい』といった考え方がいろいろあるので、それぞれのアニメーターさんをしっかりと理解しないといけないんだ、とも思いました。『BATEN KAITOS』では、絵を描く云々というよりも人間と関わることの難しさをすごく感じました

それでも、一緒につくっていくうちにお互いに相手のことがわかっていき、信頼関係ができていくと『あの人のために頑張ろう』とか『もっと良いカットにしていこう』みたいな力が働くようになることも、第2弾を制作する中で実感しています」

また、Wabokuさんのこれまでの作品を見ると、その独特の線が作家性の一端を担っていたようにも思えるだろう。今回、A-1 Picturesが作画を担当することで個人としての線が画面に載らないことについて問われると、「もともと僕の線を真似してもらうのはハードルが高いと感じていて、線以外の部分で自分の要素を出していくことに注力しました。ですから、僕自身は"自分の線"というものをそこまで重視していません。それでも、イメージボードなどから美術の方が寄せてくれたり僕の線を拾ってくれて、みなさんスゴいなと思いました……!」と答えていた。

サプライズと2人からのメッセージ

こうして「BATEN KAITOS」について深堀られたトークショーは最終盤を迎え、MyukさんとWabokuさんそれぞれからのメッセージが語られた。

Myuk「私自身も『BATEN KAITOS』の一視聴者、ファンとして今後の展開をとても楽しみにしています。次の『シオン』も歌わせていただけるということもあって、楽曲と出来上がった映像の答え合わせをするのも楽しみの一つかなって思います。私もみなさんと一緒に、今後の『BATEN KAITOS』の展開を楽しみに見ていきたいです」

そして、ここでギターが登場。特別に「シオン」の弾き語りが行われた。Wabokuさんも生で聴くのは初めてと話し、Myukさんも客前で歌うのは1年半ぶりと、なんとも貴重なミニライブだ。

弾き語りをするMyukさん

Myukさんの優しく、それでも力強い歌声が会場に響き渡り、観客たちは9月1日に公開となる新作への期待感をより一層強くしていた。

また、弾き語り終了後には、イベント数日前に誕生日を迎えたWabokuさんのもとに、サプライズでバースデーケーキが登場。Myukさんがバースデーソングを歌い、会場全体が手拍子をする中でなんとも多幸感に包まれる光景が展開されるのだった。そして、Wabokuさんからのメッセージでトークショーは締めくくられた。

Waboku「Myukさんの『シオン』を聴いていて、ちょうど今MVをつくっているので頭の中に映像が浮かんでいたんですけど、やっぱり良い。この曲を聴いて映像を見ていただけると、スッと入ってきてもらえると思います。9月1日まで『シオン』を聴きながら待っていただきたいです。

第1弾『魔法』では本当に謎が多すぎて、とりあえず今は謎のままで楽しんでくださいといった感じだったのですが、第2弾ではキャラクターのバックボーンに迫るようなことも描いています。『BATEN KAITOS』プロジェクト、さらに先があるかどうかも含めて、楽しみにしていただければと思います!」

展示会場の写真を見る 展示は東京・渋谷のSPAGHETTIにて、8月9日(月)まで開催中。

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