ピーナッツくん『Tele倶楽部』制作秘話、全曲解説超ロングインタビュー

#7「skit」

──skitはイラストレーター/映像作家の野良いぬさんがセリフを入れられていますね。

ピーナッツくん 『Tele倶楽部』のロゴは野良いぬさんにつくってもらったんですけど、さきほども言ったように当初は「ニートtokyo」のVTuber版をつくりたいと話して、ロゴを依頼したんです。

でもその企画がなくなってしまって……申し訳ないなっていう気持ちもありつつ、野良いぬさんは声も良いからやっていただこうと。 ──なるほど。アルバム制作よりだいぶ先にロゴができていたんですね。

ピーナッツくん そうナッツ!

──まさにアルバムタイトルの通りにテレクラでのやり取りが収録されていますね。テレクラといえば、「エヴァ」総監督の庵野秀明さんがテレクラに潜入するドキュメンタリーが有名です。90年代の作品ですが、あれを彷彿させるというか。

ピーナッツくん 『Tele倶楽部』というテーマ自体は、それを知る前に考えていたものなんですけどね。それは周りにも言われて、そうなんだと思って──はい、影響されてます(笑)。

──ピーナッツくんのご主人様の兄ぽこさんも「エヴァンゲリオンを超えたい」と仰ってましたもんね。

兄ぽこ それだけは二度と言わないでください(真顔)。

#8「KISS」

──「skit」から8曲目の「KISS」への流れがすごく美しくて。一気に世界観に引き込まれました。

ピーナッツくん 嬉しいナッツ!

──本当にすごいなと。「zakkyobuilding」の流れも踏まえて、ディープな方向に舵が切られていきます。ピーナッツくんがやりたいこと──「KISS」という。何故この曲でおめがシスターズ(おめシス)に客演を依頼したのか、少し驚きました。

ピーナッツくん そうですね(笑)。この曲は最後まで誰にやってもらったら良いかわからなくて。かなり思案した末、おめシスはVTuber友だちの中で一番連絡を取っているから、まあ、おめシスには一回お願いしてみるかと。

──他の人たちに比べると、少し雑な振りですね!?

取材はサウナでも行われた

ピーナッツくん いえいえ、もちろん真摯な気持ちで依頼したナッツ!

でもぼく自身、この曲がどう完成するのか読めていなかったんです。おめがシスターズに参加してもらうことで、どういう方向に転がるのかも見てみたかった気持ちもあります。それでおめシスに依頼して、返ってきて、足してみたら──当初はもっと悲しくて、切実な感じの雰囲気だったんですが、2人の声で良い感じの抜け感が生まれました。

──たしかに、シリアスになりすぎていない、絶妙なニュアンスが出ていますね。

ピーナッツくん 最初はもっと切実で、等身大の「苦しさ」を前面に出した曲だったんです。けれど、おめシスの2人に引っ張られて、コメディとしてもある種楽しめるようになったナッツ(笑)。

──おめシスを普段から観ている人からすると、なかなか異色の楽曲だと思います。おめシスは本当に歌唱力が高いから、てっきり歌うのかと思ったら声のサンプリング的な使い方で。
白日 / King Gnu by おめがシスターズ
ピーナッツくん 彼女たちのガチ歌は本当にすごいじゃないですか。それを依頼するのは逆にちょっと違うというか。ぽこピーとおめシスの関係性ってそんなガチでもビジネスでもなく、なんかわちゃわちゃやっちゃうみたいな感じなんです。

ぼくに対しても「そこまで好きではありません」みたいな感じのニュアンスを出していただいて。それぐらいドライに留めてもらいました。ある種、おめシスには枷をつけた状態で参加してもらったナッツ。

#9「未来NEXTメシ」

──「未来NEXTメシ」はボカロP・やながみゆきさんとの楽曲です。これは「feat.」ではなく「VS」という表記でのコラボレーションになっていますね。

ピーナッツくん 「VS」はやながさんからの提案だったはずです。やながみゆきとピーナッツくんでバチバチに戦いましょうと。disとかではなく、闘争心をもってこの曲をつくろうという意味合いで「VS」になったナッツ。

──この曲は「ひみつのMIXTAPE」収録曲とも純粋な新曲とも違って、先行して配信リリースされていた楽曲です。やながみゆきさんと曲をつくろうとなった経緯も気になります。

ピーナッツくん もともとぼくがやながさんの曲がすごく好きで。有名な「My Name Is 初音ミク」もそうですし、初音ミクでトラップをつくる姿勢に衝撃を受けました。それから何年か経って、一方的にお願いしたら引き受けて下さったんです。

──これはぼくも本当に好きな曲です。初音ミクとピーナッツくんが、自らのご主人様をdisり倒すというテーマも革新的でした。

ピーナッツくん そのテーマ設定も、やながみゆきさんの発案なんです。やながさんがゴリゴリの自虐ラップみたいなものを持ってきてくださって。

ぼくらの、バーチャルYouTuberと呼ばれる人たちの存在のベースには、やはり初音ミクちゃんがいると思うんです。技術的な部分もそうですし、バーチャルなキャラクターを当たり前に人々が愛する土壌をつくったという点において、初音ミクちゃんは先駆的な存在で。

「VTuberとして音楽をやるにあたって、初音ミクを無視するわけにいかない」という勝手な思いがあったナッツ。それをやながさんにぶつけたら熱意が伝わって。「やりましょう」と言ってくれました。
ピーナッツくん vs やながみゆき - 未来NEXTメシ (prod. yanagamiyuki)
──他の楽曲とはだいぶ作り方が違いますね。ピーナッツくん発ではなく、テーマ設定も含めてやながさんの存在がかなり大きな部分を占めている。

ピーナッツくん 実際、本当に刺激的だったナッツ。「VS」という表記ですが、この曲に関してはプロデュース・やながみゆきなんです。実際、ラップ部分のディレクションもかなりもらいました。「こういう感じにやった方がいいですよ」っていうのをすごく教えてもらって──やながさんはヒップホップや音楽の知識量がハンパじゃない。楽しかったナッツね。

──やながさんとの出会いが、ピーナッツくんがアーティストとしてレベルアップするきっかけにもなったんですね。これまで音楽の師匠みたいな人はいなかったですもんね。

ピーナッツくん そうなんですよ。音楽もそうですし、キャラクターに対する考えも。ご主人様がぼくに馳せる思いと、やながさんが初音ミクに馳せる思いを議論して。その話し合いがすごい面白くて、超楽しかった思い出です。なかなかそんなことを話せる人はいなくて、意気投合したナッツ!

──今後もやながみゆきさんとの曲も楽しみにしています。

#10「Peanuts in Wonderland」

──この曲は、新曲で唯一フィーチャリングなしの楽曲ですね。

ピーナッツくん hookでチャンチョが歌ってるんですけど、表記忘れで!

──表記忘れなんですか(笑)? じゃあfeat.チャンチョですね。この曲はアルバム全体を通して聴くと他と異質な曲になっている気がします。

ピーナッツくん まあでもチャンチョもピーナッツなんで。合唱・合体曲みたいな位置づけです。

『Tele倶楽部』っていうコンセプトを練る前に、ピーナッツくんのおとぎ話的みたいなことを、バーチャルという側面から歌うのはどうだろうか、というコンセプトがちらっとあったんです。その時に生まれた曲なんです。

──『不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)』の引用というか、オマージュになっていますよね。

ピーナッツくん そうです。『ウエストワールド』っていう海外のドラマを見て──近未来の話で、広大なディズニーランドみたいところがあって、そこにロボットが配置されてるんですよ。本当に人間と見た目がそっくりなアンドロイドで。

そこに遊びに行った人間は、ロボットたちを殺しもしていいし、どんな犯罪行為をどれだけやってもいい。都度、ロボットたちは修復されて、また新しい物語を生きるという話なんです。
Westworld - Official Trailer
ピーナッツくん ある日、「私はロボットだ」とロボットたちが自覚することで話が動き出すんですけど、それのきっかけが『アリス・イン・ワンダーランド』的な展開で、引用されてるんですね。改めて『アリス』ってそういう話だったんだという発見もあって、サイバーパンク的な文脈で『アリス』を使ってみました。

──ピーナッツくんのリリックはよく映画が引用されていますもんね。今後の活動や先は見えない、どうなるかわからないという曲になっていると思ったのですが。「ぼくらはどこへ向かっているんだろう」というような。

ピーナッツくん それもあるんですが、今、別に心地いいんだけど──それで良いのかなという葛藤があるナッツ。チャンチョが、hookで「Good bye my society 心地よい泥にまみれたいな」と歌っているんですね。

それで快楽に「溺れちゃうよ、このままじゃ」みたいな感じの曲になってると思います。このアルバムの物語の中でも、ちょっと闇堕ちしそうな危うい部分があるかもしれないナッツ。

──今作は自己言及的な曲は少ないですが、ピーナッツくんの自我が表出している気がします。前作『False Memory Syndrome』のテーマを少し感じさせるような。

ピーナッツくん たしかに、ちょっと立ち位置がよくわかんないですね、この曲(笑)。本当はもっと長くて、2番もあったんですが削ったんです。どういうメンタルで書いたのか──みんなにとってのピーナッツくんを、前作は結果的に上手く提示できたと思うんです。でも今作は、みんなにとってのピーナッツくん像を少し裏切る形になっちゃうかもしれない。そう考えてこの曲はできたナッツ。

ピーナッツくん自身の意思、やりたいことが出てきちゃって。それは必ずしもみんなの気持ちに寄り添えるか分からないものナッツ。そんな背景があったと思います。

──なるほど。この曲は「zakkyobuilding」と同じくチャンチョさんもラップされていますが、チャンチョさんのラップスタイルっていうのは高速系になったのでしょうか? 今作では通して畳み掛けるラップになっているなと。

ピーナッツくん いや、キャラクターごとのスタイルを固定させるようなことは考えず──「そうですね、そうなっちゃいましたね(笑)」って、チャンチョは言ってます。

──チャンチョさんのラップかっこいいです。お話を聞いて、改めてすごく聴き込みたい曲になりました。

チャンチョ ありがとう(小声)。

#11「SuperChat」

──11曲目の「SuperChat」これはトラップメタル(Trap Metal)的な、また別の方向から最新のビートを試されていますね。最近、若い子の間で流行っているジャンルです。

ピーナッツくん めちゃめちゃシャウトしてるナッツ。

──この楽曲は、過激すぎてぽんぽこさんからアルバム収録や配信を嫌がられるほどだったと。

ピーナッツくん そうナッツ! 基本的にぽんぽこさんは音楽制作に関してはノータッチなんですけど、「SuperChatっていう曲、何て言ってんの?」って急に聞かれまして。説明したら「そんなん言うたらあかんわ!」「なんてこと言うてんねん!」って激しい関西弁で怒られたナッツ😭

──ぽんぽこさんは、ピーナッツくんにとって身近な一番最初に曲を聴かせる人ですよね。評価というかフィードバックをもらったりもするのでしょうか。

ピーナッツくん ある程度できたら、「ちょっと聴いて」みたいにお願いすることは多々あるナッツ──それでボツになった曲もいくつかあります。「ちょっと違うな」とか「それダサいんちゃう?」みたいなことを言われて。

少し落ち込んで床にのめり込んでしまったピーナッツくん

──(笑)。でもこの曲はカッコいいから収録できた。これも「ひみつのMIXTAPE」に先行収録されていて、ファンの間ではすでに話題になっていましたね。

ピーナッツくん 意外にVTuberの方々からも「あの曲よかった」「SuperChat最高!」みたいに言ってもらえて。さすがに直截的すぎて反感を買うかなと思ってたんですけどね。

──むしろよくぞ言ってくれた! という感じなのかもしれませんね。YouTubeの投げ銭機能「スーパーチャット」はある種、近年のVTuberビジネスの代名詞として浸透しています。そういう状況への批判でしょうか。

ピーナッツくん シーンへのdisというよりも──ぼく自身もスーパーチャットの支援をいただいて活動している身分なので、当然自己批判にもなっています。自分を除外した曲ではないということだけは言っておきたいナッツ! ちゃんとリリックには自分も登場していますし!

──ピーナッツくんは楽曲の中で度々VTuberシーンやVTuber業界をdisしてしまう癖があると思うんですけれど、どうしても出てきちゃうんですね。

ピーナッツくん そうなんです。でも、ぼくだけじゃなくて意外にみんなが思っていることだと思うナッツよ。

──この楽曲、ビートもカッコいいですが。

ピーナッツくん これはType Beatです。それで、ミックスがやながみゆきさんナッツ!

──やはり、やながさんのミックスは良いですね。迫力と不穏さがすごいです。

ピーナッツくん 本当に怖い感じに仕上げてくれるんです。ぼく自身「こんなシャウトしてたっけな?」って思うくらい。

──「SuperChat」で紹介されている話はリアルなんでしょうか。「あいつは住んでる9LDK」とか、気になるリリックがいくつか散りばめられています。

ピーナッツくん ぼ、ぼくらはバーチャルなんで、その辺はちょっとあんまり言えないナッツ!

──ピーナッツくんも車が買えたという認識であっていますか?

ピーナッツくん 車って言ってますけど、比喩表現で。本当は三輪車ナッツ!

#12「ぼくは人気者」

──この曲がアルバムの最後のトラックになるのかなと勝手に思っていたんですが、そんなこともなく。「ひみつのMIXTAPE」の中でも印象的でした。集大成的な歌詞の内容になっていると思ったのですが。

ピーナッツくん そうですね。昔からの仲間であるヤギ・ハイレグのビートです。たしかに集大成ではあるものの、それはぼく個人の集大成であって、アルバムのフィナーレではない、と思っています。

──すごく良い曲です。「狂ってる I’m like a クレしん」というリリックもですし、ピーナッツくんの世界観が全開に出ています。

ピーナッツくん ちょっと牧歌的なビートで。ちょっと前作を彷彿とさせるような感じがいいですよね。

──前作収録の「Drippin' Life」の続編のような。ヤギ・ハイレグさんの名前も、ぽんぽこさんやコモラさんも出てきて、周りの仲間をみんなアゲていくぜ、みたいな曲ですね。
ピーナッツくん『Drippin' Life』Official Music Video
ピーナッツくん そうです。アゲられたら良いなと。ラッパーっぽいメンタルをぼくがやったらこういう楽曲になりました

──ピーナッツくんに、ちゃんと仲間意識みたいなものがあるのかと、少しビックリしたというか。個人主義者なところがあると勝手に思っていたので。すごく明快に仲間への感謝を歌っていて。

ピーナッツくん ちゃんと感謝とかリスペクトはしてるナッツ!

このアルバムに関しても、ぽんぽこさんの普段の頑張りがなければつくれていませんし、ぼくのアニメとか、音楽だけではまだ全然活動できませんから。ちゃんとそういうことをやらないと……という気持ちはあったナッツ。

──すごく大団円を感じる曲です。でも『Tele倶楽部』の最後の曲ではなく。

ピーナッツくん 違います。たしかに前作だったらこれが最後だったかもしれません。ここから、この先の世界に行くナッツ。

#13「ペパーミントラブ」

──その先の世界の1曲目が「ペパーミントラブ」です。この名取さなさんが歌っている箇所のリリック、本当にピーナッツくんの作詞なんですか?

ピーナッツくん はい、ぼくが書いたナッツ。

──完全に女の子目線で書いていて、すごいです。

ピーナッツくん いやいや。それは名取さなちゃんの歌唱力による説得力というか、さなちゃんパワーだと思いますよ。

──名取さなさん、本当に上手いですね。歌唱部分も、歌というよりほとんどラップに近いですし。ラップもできるんだと感動しました。

ピーナッツくん そうですね。なんかこう不意に、油断して聴いていたら急に現れる感覚というか──油断してたらドンッと来る衝撃が欲しくて、それが実現できたナッツ。でも全然、歌唱のディレクションなんてしてなくて。送られてきた歌声がそのまんま使われてる感じなんです。
名取さな - PINK,ALL,PINK!
──今回のアルバム全体通してなんですけど、直接会ってのレコーディングはされていないんですか?

ピーナッツくん 『Tele倶楽部』ですからね。遠隔でバーチャルな制作でないと意味がないというか、リアルじゃないなと。

──「ペパーミントラブ」というタイトルは、どういう意味合いでつけられたのでしょうか。

ピーナッツくん 焼肉屋さんとか行った後に、ペパーミント味の飴とかもらうじゃないですか。バーチャルな恋の歌なので、リアルな概念よりもあっさり消えちゃうような──けれどある種の爽快感がある──それで「ペパーミントラブ」です。

これは最初から、とにかくさなちゃんに歌ってほしいという経緯でつくった曲なんです。さなちゃんって、歌もうまいし絵も描けるし、何でもできるんですけど、何かもっと象徴的な意味で「名取さな」が存在するだけで華がある。絶対にアルバムのラインナップに入って欲しかったナッツ。

──なるほど。ピーナッツくんというか、兄ぽこさんの恋愛観も感じられる曲になっているのかなと。

ピーナッツくん とにかくさなちゃんが可愛い曲ナッツ!

#14「Unreal Life」

──そして最後を飾るのが「Unreal Life」。feat.はホラー系VTuberの市松寿ゞ謡さんです。タイトルからも客演からも、個人的に一番楽しみにしていた曲でした。あの市松さんと、一体どんな曲をつくるのかと。これは100 gecsのような「Hyperpop」文脈のビートですよね。

ピーナッツくん いやぁ、本当にビートがやばくて……! この楽曲もnerdwitchkomugichanのビートです。このベースは生で弾いてるらしくて。とにかくベースの音がすごくて。ミックスはYacaさんですけど、「とりあえずベースで殺してください」とオーダーしました(笑)。
100 gecs - money machine
──VTuberシーンだけでなく、ヒップホップ全体で観てもかなり尖ったビートになっていると思います。どういう経緯で決まったのでしょうか。

ピーナッツくん これもnerdwitchkomugichanが送ってくれた、ビートのストックみたいな中にあって。ただ、そのビート集自体は「今回、こういうコンセプトでやろうと思ってるんです」と話していて。それでぼくの意図を汲んでくれた状態のビートが何個かあって、その中の一つなんです。

音楽シーンの中でも最先端なHyperpop的な文脈もあるし、何よりも『Stranger Things(ストレンジャー・シングス)』みたいな前奏がすごく良くて。

──この前奏は素晴らしいです。緊張感とワクワク感がすごい。

ピーナッツくん それを聞いて、「これだな」と。

ぶっちゃけると「Unreal Life」というのは、そのまま「Unreal Engine」の楽曲なんです。

──ピーナッツくんにとっての「Unreal Engine」は何か特別な意味合いがあるように感じます。今回はMVに関しても、ジャケットに関しても、わざわざピーナッツくんを新たにモデリングし直してまで「UE4」で制作されていますよね。

ピーナッツくん ぼくの活動自体がインディペンデントというか個人制作/自主制作で行える範囲でやっているんですが──そういう活動形態の限界というか、現代における一番の集約先が、ゲームやゲームエンジンだと思っているナッツ

特に3DでVTuberをやってるぼくらからしたら、なおさらそう感じることが多くて。これも『Cyberpunk 2077』をプレイして思ったことんですけど(笑)。「ゲーム、ヤバい」「ゲームってヤバすぎないか」と改めて思って。

大好きな映画より、もっとすごい体験ができる感覚を強く感じたナッツ。「マジ、ゲームだな」って。そういう、バカっぽいレベルで感じてしまって。

──ピーナッツくんの活動の行く先というか、今見えている先端が「Unreal Engine」にあったんですね。

ピーナッツくん そうですね、「Unreal Engine」。もちろん他のゲームエンジンもそうですが。

──それでまさに、VTuber活動を行いながら、自主制作でゲームを開発して絶大な支持を受けた市松寿ゞ謡さんが参加されていると。ピーナッツくんは「ニートtokyo」の取材でも「先端を走るVTuber」として、市松さんの名前を挙げていました。

ピーナッツくん 実際、かなりリスペクトしています。

一時期、VTuberの知り合い各自に「もうゲーム実況する時代は終わった」と言ってたんです。「ゲームを遊ぶんじゃなく、『ゲームで実況される』側に回らないと終わるぞ!」みたいな話を上から目線でしていて(笑)。

──どこで言ってるんですか、それ。面白いです(笑)。

ピーナッツくん なんか誰かに説いてた気がするナッツ……。そんな話をしていたら、市松寿ゞ謡ちゃんは、もうすでにやっていると。本当に凄すぎる。
HorrorGame【GOHOME】Trailer
GOHOME挿入歌【はい、そうです。】市松寿ゞ謡
──かなり多才な方ですよね。ゲーム開発のクオリティもそうですし、映像表現や音楽も。それでいて、自分の道を進んでいるというか、いわゆるVTuberシーンの真ん中にいるわけでもなく。

ピーナッツくん そうなんですよね〜。本当にカッコいい存在です。

──そういうインディペンデントな創作活動で、ピーナッツくんと共鳴するものがあるように思います。

ピーナッツくん いえいえ……単純に市松寿ゞ謡さんの作品群は本当に、制作のペースをも含めて、VTuberシーンの中でも圧倒的にクオリティが高いと思っています

今回のアルバムを通してバーチャルについて考えてきて──自分自身ができることや体験してきたことを提示したわけですが、もっと今後の未来を見据えるような曲が欲しいなって思ったんです。

そう考えてUnrealな世界、新しい世界が楽しみだねと市松さんと歌ってみました。

──希望的な楽曲なんですね、これは。

ピーナッツくん 希望的でもあるけど、でもどっちかと言うと──これまでのまとめ的なリリックでもあると思うんです。結局バーチャルなんだよ、という諦めと現実でもある

他の楽曲では、関係性みたいな部分で局所的な物語を展開していたんですが、「Unreal Life」ではそこから一気に、宇宙空間ぐらい広がるイメージで。

ぽこピーファンがつくったワールド「POKOPI_CINEMA」でのインタビュー風景

──たしかに、いきなり話の規模感が変わっています。よりSFチックで、空間もそうですが、時間まで取り込んだ観念的な話というか。歌詞も散文的で、抽象化されていて難解でもあります。

ピーナッツくん そうです。想像力として、大きな広がりを持たせたかった。バーチャルであることの虚無感もあるナッツ──けれど、そこでぼくらは奔走するしかないという決意でもあるナッツ。

──なるほど、たしかにそういう意味で未来につながっている。『クイーンズ・ギャンビット』と『遊戯王』の引用もありますね。

ピーナッツくん 結局、お前動いてねえじゃん、と。寝たきりで、想像の世界で、結局1ヶ所で続けてきた話なんだ、という。だから「Unreal Life」なんです。

ぼくは今作でこの「Unreal Life」が一番気に入ってるナッツ。歌詞だけじゃなくてラップについても。今の音楽シーンを見ていても、ラップっぽいラップというか、8小節/16小節みたいな綺麗な形式的なラップだと、なかなか通用しないと思うナッツ。

今はもうメロディをつけれて当たり前で、同時に交錯した流れというか、聴いたことのない転調をするとか──そういう音楽的なテクニックの部分でもかませたと思ってるナッツ

──全曲すごいですけどね。ピーナッツくんのラップは常々、メロディアスに動き回るなあといつも思います。

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4件のコメント

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onda

恩田雄多

>匿名ハッコウくん(ID:6508)
コメントありがとうございます。KAI-YOU編集部の恩田です。
ご指摘いただいた件、大変失礼いたしました。
先ほど修正いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:6508)

記事が潰れて読めません

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:4645)

こういう全曲解説は読みたいと思ってもなかなか読める機会が無いので、踏み込んだ質問をしてくれたKAI-YOUさんと、それに答えてくれたピーナッツくんに心から感謝しています。
何度もアルバムは通して聴いていますが、改めてもう一回聴き直そうと思います!

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