ピーナッツくん『Tele倶楽部』制作秘話、全曲解説超ロングインタビュー

『フォルメモ』を経て変化した音楽制作との向き合い方

ピーナッツくん 取材はVRChatにて行われた。

──今作は、客演やスタッフに様々なクリエイターが参加していらっしゃいますが、それはVTuberを紹介するインタビューメディアみたいな企画から出発しているのが関係しているのでしょうか。

ピーナッツくん たしかにそれもあります。まず、今回のアルバムは「VTuberから目を背けないアルバムにしよう」と思ったんです。ぼく自身もVTuberですし、それでたくさんのVTuberにお声がけしたナッツ。

──VTuber外からの客演もいらっしゃいますが、女性VTuberが多く参加していて、ぼくが視聴した感じだと、前作は非常に「ピーナッツくん」という存在に対してシリアスでクリティカルなテーマを込めていたなと思ったのですが、今作はピーナッツくんが女性VTuberさんと公にいちゃつくためのアルバムなのかなっていう風に思ったんです。

ピーナッツくん その通りナッツ(笑)!

──その通りなんですか(笑)。

ピーナッツくん 最大の匂わせをしようと。匂わせプンプンでいこうっていうアルバムコンセプトになってるナッツ。

──最新のトレンドを踏まえたビートで高い完成度になっているのはもちろん、曲によっては前作にも増して批評的なリリックになっています。同時に、全体としてはふだんの配信で見られるような、VTuber同士の絡みみたいなものも純粋に楽しめるアルバムにもなっているのかなと思ったんです。

ピーナッツくんやその創造主である兄ぽこさんの知られざる世界観みたいなものを前面に押し出したのが前作『False Memory Syndrome』だったと思うんですが、本作はその作品性とも離れています。何か理由があるんですか?

慎重に言葉を紡ぐピーナッツくん

ピーナッツくん バーチャル世界やバーチャルYouTuberというものの意味を、ぼくなりに解釈しようと思って考えていたんですけど──結果、何をしたって良くないか? と。

実際にVTuberに恋してる人たちがたくさんいて、ぼくらはバーチャルな存在だけど、バーチャルな恋もできる。でもそれって実際の思いとして、本当に恋らしい。もうとにかくバーチャルなんだから、好きな事しちゃえっていう気持ちが出てきたナッツ。

──いわゆる「匂わせ」とか「てぇてぇ」みたいな振る舞いって、男性VTuberが女性VTuberに行うのはタブー視されているようなきらいもあります。そういう部分にも踏み込んでみた、ということでしょうか。

ピーナッツくん ぼくはキャラクター的にネタとしてなぜかそれが許されているポジションにいるので、こういう表現も面白いのかなと思ってやったナッツ!

──そうですね(笑)。今回は2ndアルバムですが、レオタードブタとヤギ・ハイレグの音源も含めれば、ピーナッツくん関連楽曲として、もうすでにかなりの作品をリリースされています。前作に比べて、制作はスムーズに進行しましたか。

ピーナッツくん いや、前作より全然難しかったナッツ。多くのヒップホップアーティストがそう言うように、一作目は自己紹介的なことが結構言えると思うんですけど、二作目はそこから一歩抜けた感じを出さないといけない

それに前作は本当に右も左もわからずやってたんで、むしろ勢いで曲をつくれた感じがあったんですけど、今回は「いや、前の方が良かったな」と考え込んでしまうことが多くて。表に出ていないボツ曲もたくさんあるナッツよ

前作は自分のありのままのサウンドでいけたんですけど、ちょっと今回は時代も経て、音楽シーンのトレンドも変化している。そういうことを考えちゃうとなかなかつくれなくて。

ヒップホップは「キャラもの」としても楽しめる

──前回はピーナッツくんファミリー、ほとんどピーナッツくんのラップで構成されているアルバムでしたが、今回お友だちのVTuberや、外部のクリエイターを客演や制作陣に招いています。それはどのような考えでフィーチャリングされたんですか。

ピーナッツくん 客演のアーティストがたくさん参加しているアルバム・楽曲って、ヒップホップ特有のものですよね。

同じビートの上でその人が何をどう歌うかっていう面白さや期待──言っちゃえばそれはVTuberのような「キャラもの」を楽しむ感覚にも近いとぼくは思ってるナッツ。ヒップホップが持つキャラクター的な要素を、VTuber兼ラッパーのぼくが過剰に表現してみたらどうなるのか、という実験の側面もあります。

それで普段から慣れ親しんでいるピーナッツくん世界の住人だけじゃなく、本当にキャラの立ってるいろんな人たちを呼んで、豪華で過剰な客演アルバムみたいなものを目指したナッツ!

──たしかに、そういう「キャラもの」として聴くと、あまりヒップホップに詳しくない人も楽しめるかもしれません。キャラが立ってるというのは前提で、今作で招いたシンガーやクリエイターたちはこういう人が良かったとか、何か共通項はありましたか?

ピーナッツくん まず、みんな連絡が取りやすい人たちっていうのと……(笑)。

でも、もちひよこさんの曲(#2「School boy」)は本当に、これを歌って演じてくれる人、誰がいいんだろうなっていう悩みはあったナッツ。露骨に匂わせてる変な歌詞だし、ラップだし──でも腹を括って、ぽんぽこ氏経由でお願いしました。
ピーナッツくん - School Boy feat.もちひよこ
──まさかの直接の依頼じゃないんですね(笑)。

ピーナッツくん はい。そもそも基本的にぼくからの直接連絡ではないナッツ!

──さすがです。でもまさに今作は組み合わせの妙や歌詞で「てぇてぇ」感を前面に出している一方で、更にVTuber業界に対して攻撃的な楽曲も複数収録されているなと思いました。

ピーナッツくん 本当はコンセプト通り忠実に「てぇてぇ」楽曲だけで一貫した構成したかったんです。でも何か特別な意図があってというわけではなく(攻撃的な曲も)できてしまった。なぜか出てきちゃったという感じなんです。そういう楽曲は入れるか本当に迷ったナッツ。

だけど、その落差を楽しんで欲しい。ぼく自身VTuberに対して、大好きな気持ちと、ちょっとどうなのかなって思う気持ちが混在しています。それを全部入れないと、ちゃんとVTuberに向き合っていないというか──今の自分と向き合ってるとは言えないなと思って収録しました

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4件のコメント

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onda

恩田雄多

>匿名ハッコウくん(ID:6508)
コメントありがとうございます。KAI-YOU編集部の恩田です。
ご指摘いただいた件、大変失礼いたしました。
先ほど修正いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:6508)

記事が潰れて読めません

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:4645)

こういう全曲解説は読みたいと思ってもなかなか読める機会が無いので、踏み込んだ質問をしてくれたKAI-YOUさんと、それに答えてくれたピーナッツくんに心から感謝しています。
何度もアルバムは通して聴いていますが、改めてもう一回聴き直そうと思います!

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