本楽曲は、JinmenusagiさんとDubbyMapleさんのダブルネームで2016年にリリースされたもの。
「はやい」は、JinmenusagiさんとDubbyMapleさんが運営するレーベル「業放つ」からリリースしている、いわゆるインディーズ楽曲である。
バトルにおけるビートの使用を巡ってはこれまでにも何度か取り沙汰されたことはあったが、今回、アーティストが直接禁止を宣言するに至った。
2人はなぜ、「はやい」の使用を禁止したのか?
編集:新見直今後の国内の全てのMCバトルの大会において「はやい」のビートの使用を一切禁じます。
— LEEYVNG / JMSG (@Jinmenusagi) September 30, 2020
※現段階で映像・DVD化されていたり、そのリリースの過程にあるものを除きます。
これは自分とDubbyMapleの総意です。何卒宜しくお願い致します。#Jinmenusagi#DubbyMaple#業放つ https://t.co/HItFjCy27m
バトルビートは使用許可の申請がないことがある
中毒性のある軽快なフックとハイテンポなビート、エンジン音のサンプリングが心地いい楽曲「はやい」。数々のMCバトル大会で人気のバトルビートとしても愛されており、近年は定番曲の一つとなっている。
例えば「はやい」がビートとして採用されている「U-22 MCBATTLE 第4次予選」の百足 vs MC龍のMCバトルは、YouTube上で130万回以上の再生数を誇っている(この大会は「はやい」の使用許可が得られている)。
これまで、バトルイベントでのビートの使用について許諾の連絡があったのは、バトルイベントのオーガナイザーとそこでプレイするDJの2人のみだったという。
「現状、『はやい』のビートをバトルイベントで使用してよいか許可を求めてくださったのはたった2人。某バトルイベントオーガナイザーとそこでプレイするDJの方のみです」(Jinmenusagiさん)
また、DubbyMapleさんによれば、バトルビートとしての使用は許可取りがされないケースがあり、黙認や本人が把握していないケースもあるという。
「やっぱり自分の知らないところで知らないヤツらに自分が生み出した作品が勝手に使われ、それによって大きな得をしている人間がいるって、面白くないです」(DubbyMapleさん)
ただし、運営やバトルDJがビート使用の許諾を得ている大会や、オリジナルビートのみを利用する大会も存在する。
無断使用では、二次利用の収益も得られない
もちろん、許諾なく使用された楽曲によって発生した収益は、権利者であるはずのアーティストには支払われない。「はやい」のビートがレ◯プされまくってるマージンがDubbyMapleに一銭も入ってないの、胸糞
— LEEYVNG / JMSG (@Jinmenusagi) September 20, 2020
バトルイベントのみでなく、その様子を収録したDVDの販売やYouTubeで発生した収益も還元されず、権利者であるはずのアーティストが正当に収益を得ることができていないことがある。
「現実のバトルイベントのみではなく、映像化されYouTubeなどで公開されれば視聴数に応じて収益が発生しますし、DVDなどでも売上が発生します。配信も同様です。これに対して権利の問題が発生しないほうがおかしいです」(Jinmenusagiさん)
「同人やサンプリング、オマージュ、マッシュアップ等々あげたらキリがない『黙認』の文化。それがなければ育たないアートやそのシーンが沢山あることも事実。それについては僕も十分に理解しているつもりです。ともあれ、今回の件の要点は『還元』です。それが今まで全く無かったから禁止にしました」(DubbyMapleさん)
さらに、DubbyMapleさんはビートメーカー/プロデューサーが抱える深刻な現状について、このようにも語っている。
無許可での楽曲使用や収益の還元がないこと、さらにそうしたビートメーカーへのリスペクトに欠ける振る舞いが今後も続いていくことを懸念し、今回2人はビートの使用の禁止を発表したという。これは僕個人の考えで、全体ととらえないで欲しいですが、日本におけるビートメーカー、プロデューサーって他の国に比べてスポットが当たる機会が少ない様に感じます。
以前某SNSで、僕の大好きなビートメーカーの方が「自分がプロデュースした曲がクソ程バズってる状況をパソコンの前でカップラーメン食いながら見てる」的なことを言っていました。
これが現状だし死ぬほどリアルです。ぶっちゃけ同じ状況のビートメーカーは少なくないと思います。
僕はウサギ(Jinmenusagi)がそういう現状を深刻に受け止めてくれたから、まだ救われているほうですね。DubbyMapleさん
クラブでのDJプレイは容認する方針
一方で、クラブでのDJプレイについてはこれまで通り容認するという。それについてはむしろ喜ばしいことです。ありがとうございます!
— LEEYVNG / JMSG (@Jinmenusagi) October 1, 2020
今回のことはあくまで、バトルビートとしての使用についてです。 https://t.co/pNJMJhnn2T
「正規の方法でInstrumentalを購入された方がリミックスやマッシュアップをつくることには何ら不快感を抱きませんし、むしろそういった用途のために公開されています」(Jinmenusagiさん)
また、クラブでのDJプレイはあくまで一過性のもので、二次利用が発生するケースも少ないため、バトルイベントと一緒に考えることはできないと話す。
ラップしてくれる人が居るからビートが映える。
ビートを作る人がいるからラップができる。
本当はwin-winなハズ。
お互いに「還元」し合う事が出来ていれば。DubbyMapleさん
カルチャーの行く末を見守る
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