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連載 | #35 ポップなまとめ記事をつくってみた

2020年の日本のヒップホップ名曲15選 若手や女性の躍進も目立つ上半期

2020年の日本のヒップホップ名曲15選 若手や女性の躍進も目立つ上半期

「Zoom」

POPなポイントを3行で

  • 2020年のヒップホップを振り返る
  • 日本語ラップの名曲を15曲選出
  • YouTubeも目立つ多様なシーン
記念すべきオリンピックイヤーのはずが、前代未聞の状況に立たされている2020年も、もう半分が終わろうとしています。

新型コロナウイルスの流行や、Black lives matterの議論紛糾など、予想だにしなかった問題と歴史的に抱え続けてきた問題の噴出で社会が揺らいでいます。

人類がかつてない状況を迎えているなか、ヒップホップシーンでも、漢 a.k.a. GAMIさんの逮捕やブライアンさんのbeefなど、衝撃的な出来事が起きましたね。

今年リリースされた名曲たちをKAI-YOU編集部の独断と偏見で、ヘッズたちの反響などもふまえてご紹介していきます。

変化の年となった2020年に相変わらず、ストリートを含むポップカルチャーを追いかけてきたKAI-YOUが選ぶ珠玉の楽曲たちをどうぞ

目次
1:kZm - TEENAGE VIBE feat. Tohji (Prod. Chaki Zulu)
2:Awich - 洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS (Prod. Chaki Zulu) 
3:ZORN / Have A Good Time feat. AKLO
4:AKLO - カマす or Die feat. ZORN
5:ralph - Selfish (Prod. Double Clapperz)
6:AYA a.k.a. PANDA - あの頃から今
7:日本のラッパーって・・・ 下手じゃね? 真似できない踏み方を見せるぉ 
8:Moment Joon - TENO HIRA
9:4s4ki - NEXUS feat.rinahamu
10:Red Eye & OVER KILL (FUJI TRILL & KNUX) - THUG LIFE
11:レオタードブタとヤギ・ハイレグ -サイコショッカー!
12:GeG / I Gotta Go feat. kojikoji, WILYWNKA & Hiplin
13:TAKABO - SUIYORU
14:Zoom - valknee, 田島ハルコ, なみちえ, ASOBOiSM, Marukido, あっこゴリラ
15:crystal-z Sai no Kawara

2020年 これだけは知っておきたい日本語ラップ15選!

1:kZm - TEENAGE VIBE feat. Tohji (Prod. Chaki Zulu)
ヒップホップクルー・YENTOWNに所属するラッパーのkzmさんのセカンドアルバム『DISTORTION』に収録された一曲。

肩の力の抜けたフロウに曲名通り10代の青春を載せたkZmさんのバースと、畳みかけるように青く弾けるような全能感を歌ったTohjiさんのバースが合わさった疾走感のある一曲。

『DISTORTION』にはYENTOWNのMonyHorseさん、LEXさん、Daichi Yamamotoさん、5lackさん、BIMさんといったヒップホップシーンで活躍するラッパーに加え、RADWIMPS野田洋次郎さんや小袋成彬といった大物アーティストも参加しており、Apple Musicの総合アルバムチャート1位も獲得した注目のアルバムです。
2:Awich - 洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS (Prod. Chaki Zulu)
YENTOWNに所属する沖縄出身のラッパー・Awichのアルバム『孔雀』に収録されている一曲。

個人的には見たこともない昭和のVシネを幻視するような、レトロで危ない雰囲気のするビートに、これまた昭和的なノイズ混じりの声で戦後から現代にいたるまでを織り込み「バカばっかだ全く」と切り捨てるのが痛快です。

ダーティーな衣装をまとった三人が出演するMVも色気満点で最高です。
3:ZORN / Have A Good Time feat. AKLO
そのキャリアは長いですが、2020年で勢いのあるラッパーといえば、ZORNさんは外せません。

2019年には、父親として家族のことを歌うラッパーとして、アメトークのようなテレビ番組でも紹介されたZORNさん。

昭和レコードから独立し、OZROSAURUSMACHOさんとの「REP」やAKLOさんとのこの「Have A Good Time」などワイルドでパンチのある曲を連発しています。

特にこの「Have A Good Time」はまずイントロのベースとMVの音ハメが気持ちよくて初めて聴くいた時は本編に行く前にここだけでリピートしちゃいました。

歌詞も、「表参道のオープンカフェよりお嫁さんとの醤油ラーメン」のようなZORNさんのこだわる"固くて飛距離の有る韻"が最高です。
4:AKLO - カマす or Die feat. ZORN
東京生まれメキシコ育ちで、3つの言語を操るハーフのラッパー・AKLOさん。

AKLOさんのバースで「近道無し培ったスキルでただ上げてくステージ」と歌う通り、堅実に実力で評価を得てきた二人のセルフボースティング的な曲。

「OK, Here We Go Again」を軸に韻と歌詞が展開していく手堅くもハイクオリティな構成が確かな実力を感じさせます。
5:ralph - Selfish (Prod. Double Clapperz)
持ち前の独特なフロウとダークで注目を浴びる新進気鋭のラッパー・ralphさん。

教会の讃美歌を思わせるような荘厳な声をバックにテンポの速いドラムが入ったビートに抑揚を強くつけずに高速のフロウががっちりとハマっていて鋭い歌詞と裏腹に聞き心地が物凄くいい不思議な曲です。

リリースされると「JapanViral 50」のプレイリストにランクインした必聴の一曲です。
6:AYA a.k.a. PANDA - あの頃から今
2018年に解散したS7ICK CHICKsのメンバー・AYA a.k.a.PANDAさんがこれまでの道のりを振り返る一曲。

明るくも落ち着いたトロピカルなビートに、静かに過去の道筋を振り返る歌詞が確かに未来への希望を感じさせてくれます。

そこにMVのかつてのライブの映像が加わると、歌詞では具体的に言及されていないこれまでの道筋に質感が加わりまた違った情感を味わえます。
7:ブライアン/日本のラッパーって・・・ 下手じゃね? 真似できない踏み方を見せるぉ
2020年、ある意味日本のヒップホップシーンで最も話題を呼んだのは、ブライアンさんかもしれません。

かねてからYouTuberとして活動しながら、度々ラップも投稿していましたが、3月に日本のヒップホップシーン全体にbeefを仕掛ける動画を投稿。

高いスキルとキツい下ネタで煽り力の高いそのフリースタイルは瞬く間に反響を呼び、動画は6月現在760万回以上も再生されています。

更にZeebraさんなども反応したことから、「#打倒ブライアン」とつけてアンサーラップを投稿するムーブメントが発生。これには晋平太さんも参戦し、さらに盛り上がりを見せました。
8:Moment Joon - TENO HIRA
韓国人ラッパーのMOMENT JOONさんが、差別問題に対するスタンスを提示する一曲。

差別という構造に関心を持ち、抵抗することの象徴として歌われているように感じる「見せて手のひら」はとても優しい響きで聴いていてグッと胸に響きます。

伝説のイベント「さんピンCAMP」の主催でもあり、反レイシズム運動などにも参加していた故・ECDさんへの思いを吐露する2バース目は、MVバージョンだとMOMENT JOONさんのライブでの肉声になっており、彼の背負っているものの重さがより伝わってきます。

世界的に波及した#Black lives Matter運動の最中である今こそ、今一度聴きなおすべき一曲ではないでしょうか。
9:4s4ki - NEXUS feat.rinahamu
ラッパーの4s4kiさんが、アイドルグループ「CY8ER」の苺りなはむさんとフィーチャリングした一曲。

映像作家のマザーファッ子さんが監督をつとめるMVは、夢かわ系の雰囲気を持つ2人が厳つい四駆の前で歌う、ゴリゴリのHipHopなテイストとのギャップも面白いです。

加えて、色合いや柄、小物が二人の夢かわさを裏打ちしつつも、それが画角や風などの演出でストリート的なカッコよさに早変わりするファッションも最高です。

「NEXUS」が収録されているアルバム『おまえのドリームランド』では、Rin音さんやAnatomiaさん、Gokou Kuytさんのような若手ラッパーだけでなく、フーチャーベース界からgu^2さん、Gigandectさん、maeshima soshiさん、Snail’s Houseさん、そしてこの曲をプロデュースしたKOTONOHAUSEさんのようにジャンルレスに気鋭のクリエイターが集結しています。
10:Red Eye & OVER KILL (FUJI TRILL & KNUX) - THUG LIFE
第16回高校生RAP選手権の覇者である若手ラッパー・Red Eyeさんと、ダークなサウンドを得意とするプロデューサーユニット・OVER KILL(FUJI TRILL & KNUX)が手を組んだ一曲。

曲全体を通して上の世代に対してかますDisは、大きなタイトルも獲った確かな実力と自信に裏打ちされていて痛快です。

上の世代を鎖に繋がれていると言い切り、「結局この町揺らすのあんたじゃない」と世代交代を宣言する曲とマッチしたストーリー性あるMVもカッコイイです。
interview: Red Eye
KAI-YOUでは「高校生RAP選手権」優勝直後のRed Eyeさんにインタビューしているので、あわせて是非チェックしてみてください。
11:レオタードブタとヤギ・ハイレグ -サイコショッカー!
VTuberのピーナッツくんが展開するショートアニメ「おしゃれになりたい!ピーナッツくん」に登場するレオタードブタさんと、ラッパー/トラックメイカー/VTuber(?)のヤギ・ハイレグさんによるユニット「レオタードブタとヤギ・ハイレグ」の新EP「ODIN」からの一曲。

ハイテンポな金属音が子気味良いトラックと、そのハイテンポなトラックを乗りこなすフローとそこに込められた病んだリリックが最高です。

病んだ中に見えるセルフボースティングとも違う、自己評価の低さからくるファクトとしての上昇の実感も面白くてヘビーローテーションしちゃいます。
12:GeG / I Gotta Go feat. kojikoji, WILYWNKA & Hiplin
変態紳士クラブのトラックメイカー・GeGさんが、クルーのWILYWNKAさんやシンガーソングライターのkojikojiさん、大阪の実力派シンガーHiplinさんをフィーチャリングした一曲。

GeGさんのメロウな音に、エモさに定評のあるkojikojiさんやHiplinさんの歌がマッチして、3月ごろの別れと始まりの季節を思い浮かばせてくれます。

中でもWILYWNKAさんのバースは、普通のビートとは違うメロディーの上で、転調に合わせて展開していくリリックと独白するかのようなフロウがエモさを掻き立ててくれます。
13:TAKABO - SUIYORU
とにかく勢いに乗っていると言われている謎のラッパー・TAKABOさんの一曲。

TAKABOさんというと映像では常にモザイクなどで目を隠している謎の人物ですが、「ASSHOKE」の衝撃のMVや「SUIYORU」での舐達麻の3人や、孫GONGさんなどの豪華な面子との共演などから、只者ではない感がヒシヒシと伝わってきます。

スローテンポで始まり、LAに対して「娘達の土産何が良いかわからん」と自分の日常をラップするのかと思いきや、2バース目で差別や偏見といったものへの考えを早口で畳みかけるのはMVのビジュアルもあって食らってしまいました。

そのバースの最後で、アメリカ人にはアジア人の区別なんかついていないだろということか中国語で「Wo Shi Huan Da Ma」と言っているのが、皮肉が聞いていて好きです。
14:Zoom - valknee, 田島ハルコ, なみちえ, ASOBOiSM, Marukido, あっこゴリラ
6人のフィメールラッパーが緊急事態宣言下の中、自宅からリモートで撮影して作られた曲。

ビジネスでのお固い利用法が注目されていたアプリ「Zoom」に、一早く投じられた一石で印象的でした。

きっかけはValkneeさんの「ラッパーらしいバカ曲コラボしない?」という一言。

Hookの「Zoom in on my face」に掛けて、Zoomの仕様で歌っている人がズームされるのが洒落が効いていて面白いのですが、画としての枠が変わらないままノータイムで各自の位置が入れ替わっていくのが視覚的にも斬新でした。
15:crystal-z Sai no Kawara 
6月10日に投稿される、瞬く間に大きな波紋を呼んだ一曲です。以下に書くことには曲の仕掛けに関して触れる部分があるため、ご注意ください。
lo-fi的な穏やかなビートに載せて、30代で医学の道を志し医大に通うための勉強を日々続ける男性の日常を歌っている曲かと思いきや、突如流れる医学部不正入試のニュース映像とスマホの録画映像。

曲中にはHookの「順調じゃなくていいから 天才じゃなくていいから 堂々巡り繰り返し 東京偉大なこの街」に隠された大学の名前や、MVの背景に移るお茶の水と順天堂大学など、様々なイースターエッグが隠されていると公言されています。

現在行われている裁判とともに、その謎が解明されていくと願っています。

2020年上半期のヒップホップを振り返る

2020年の上半期を賑わせた楽曲をピックアップしましたが、いかがだったでしょうか?

現在日本のヒップホップシーンは、多くのジャンル/スタイルが混在し、カオスな様相を呈しています。

ヒプノシスマイク』のヒットを追ってか、『Paradox Live』や『言霊少女』など、2次元コンテンツ×ラップという図式も増えてきました。

また、ストリートの面では注目を集めた若いラッパーたちが、精力的に活動する一方、ベテランも改めてクオリティの高い曲を出し続け、シーン全体が盛り上がりを見せています。

新型コロナウイルスによってライブ活動や楽曲、MVの収録がままならなくなった影響か、「Zoom」や「Sai no Kawara」、若干気色は違いますがブライアンさんのフリースタイルなど、インターネット上のコンテンツとして見られることを前提に作られた曲も印象的でした。

Black Lives Matterの世界的な流行もあり、ラッパーをはじめとするアーティストが個々人の政治・思想的意見を表明する場面も増えているように感じます。

その中、社会的、経済的なうねりがどのように楽曲に落とし込まれていくのか、下半期は様々な転換期になりそうだと思います。

2020年をかけてこの記事を更新していく予定です。コメント欄で、おすすめの曲などがありましたら是非教えてください!

ヒップホップ最前線

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん

重盛さと美さんに触れてないのは、何か意図があったんでしょうか?

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