既にストーリーをクリアして、ポケモン収集や対戦に興じているプレイヤーも多いのではないでしょうか。今作では、ポケモンシリーズで初めてとなる出現ポケモンの制限が行われ、発売前から賛否を含めて大きな話題となりました。
シリーズの大きな転換点となった今作。
シリーズの原点である『赤・緑』から最新作までリアルタイムでプレイしてきた筆者がプレイして感じたことを、ガラル地方のポケットモンスターの魅了を、レビューとして語っていきたいと思います。
筆者:ぬにっち(@nunipoke) 編集:米村智水(@tyonemura)
ガラル地方には出会いがたくさん
先に触れたように、今作は全890種類のポケモンのうち、選ばれた400種のポケモンのみがガラル地方に生息するポケモンとして登場します。残りの490匹は残念ながらクリア後でも一切登場することはなく、何か大型アップデートが行われるか、次回作以降での再登場まで目にすることができなくなりました(筆者が大好きで毎回パーティーに入れていたワタッコも出てこない!)。
さて、半分以下の400種に削減ということで、ポケモンシリーズの魅力が半減されたのかといいますと…筆者がプレイを通して感じるところとして、むしろ今作は出現するポケモンの種類がよりどりみどり、これまでの作品以上にたくさんの出会いを楽しめる作品に仕上げっているのではと感じています。
シリーズ過去作品では、クリア後に追加で出現したり、過去シリーズから送ることでゲットできるポケモンが多くを占めていましたが、今作では新発見の81種含めて400種すべてのポケモンに、旅の道中で出会えるチャンスがつくられています。
体感として、次々と違った種類のポケモンと遭遇し、新発見のポケモンが序盤から終盤まで途切れることがなく現れた点は多くのプレイヤーが評価していたところかと思います。 その代名詞が「ワイルドエリア」。今作ではシンボルエンカウントとなったポケモンが草むらで群れをつくっている様子が見られたり、パーティーよりふた回り以上レベルの高い進化ポケモンが突如として現れたり、たくさんの突発的な出会いをワイルドエリアでは楽しむことができました。
偶然の出会いでパーティーを強化する
広大なワイルドエリアでは、非常に多くの種類のポケモンがその日の天候などの影響を受けながら出現します。また、ワイルドエリアの目玉要素、マックスレイドバトルでも、本来はストーリー終盤でしか出会いないような珍しいポケモンをストーリー最序盤でゲットできるチャンスがあるのも、今作ならではのポイントです。つまり、出会いが偶然なのです。 これまでのポケモン作品では、丁寧にレベルデザインされたポケモンたちがストーリーの進行に合わせて登場してきました。今作のように、偶然の出会いでパーティーができあがり、プレイヤーごとの選択によってパーティーが大きく変わってくるのは今作ならではの面白さだと感じました。
また、今作では「れいとうビーム」や「じしん」など強力な技が軒並みわざマシン(使っても無くならないアイテム)から削除され、「わざレコード」(一回だけの使い切り)という新しいアイテムで覚えることができるように。
このわざレコードも、ワイルドエリアやマックスレイドバトルでランダムに、いくつでも入手することができるのです。初めてのジムバトルで、れいとうビームを覚えたメッソンを使う! なんて攻略も可能です。わざレコードをどのポケモンに使うか、なんて悩みながらパーティーを強くしていくことが一つの楽しさに感じました。
ワイルドエリアの戦利品でパーティーを強化してまた次なる戦いに赴く。「ハックアンドスラッシュ」と呼ばれるゲーム性に近い楽しみ方ができるのが今作のポイントの一つになっているのではないでしょうか。
『ポケットモンスター ソード・シールド』は登場ポケモン削減という岐路に立って、改めてポケモンの楽しさを再構築した作品であるように思います。
「ポケモンバトル=競技」というストーリー
これまでとは違う今作ならではのゲーム性に触れましたが、ここからはストーリーにも触れてみたいと思います。今までの作品では、旅をしながら世界に触れることがスタート地点でのおぼろげな目標でしたが、今回の旅の目的になっているのは「ジムバトル」そのものです。主人公は旅をしながらジムを突破するのではなく、ジムを突破するために旅をするのです。
ガラル地方ではポケモンバトルの観戦が大きなエンターテイメントになっており、新進気鋭のトレーナーたちがジムリーダーに挑戦する『ジムチャレンジ』が興行として成立しています。当然、ジムリーダーやその上に立つチャンピオンはスター選手として大衆の憧れの存在。 これは近年のe-Sportsの隆盛に大きな影響を受けているのかな、と筆者は推測しています。
競技としてのポケモンバトルに触れながら、少年少女が成長したり挫折したり…そういったスポーツ漫画のような展開が楽しめるのが、今作のストーリーになっています。
競技を通して存在を確立していくキャラクターたち
競技性が強く押し出された今作のストーリーでは、キャラクターたちもバトルを通して自分自身を認識し、周囲から認められて存在を確立させていきます。無敵のチャンピオンとしてみんなから広く認められているダンテ、そのダンテがライバルとして認めるキバナ。この関係性が琴線に触れたプレイヤーも多いのではないでしょうか。 主人公もジムバトルに勝ち上がるにつれ、若手の有望株としてみなから認められてゆく様子が多く描かれています。
一方で、バトルが弱く、夢を諦めたことを負い目に感じているソニア。主人公に敵わず暴走したビート。それぞれが一度挫折し、しかし最後は主人公とは違う形で認められ存在を確立することも、大人になった筆者に響いた今作の旅の一幕でした。
ストーリーの中心が主人公ではなく、「ジムチャレンジ」というスポーツイベントが軸になって物語が進むことで、今作のキャラクターたちはそれぞれの意思を持って動いているような、バックストーリーやキャラ同士の関係性を感じる場面が多く見られたように思います。
ホップとビートが主人公を差し置いてバトルを始めるシーンも、筆者お気に入りのひとつです。 そんなホップですが、周囲から「チャンピオンの弟」として見られ、バトルでは要所要所で負けてばかり。今作のライバルキャラとして主人公に次ぐ強さに成長するのですが、兄や主人公が強すぎて世間から彼自身を認められる描写がかなり少なめだったように思います。
うーん、プレイヤーである自分はホップが七転八倒する姿を見ながら彼を応援していましたが、よくよく考えるとホップを一番認めているのはプレイヤー自身なのですね。彼の成長がなによりも嬉しく、彼とバトルできる瞬間がすごく楽しい今作のストーリーでした。 お互いを認め合い、高め合うダンテとキバナのような関係性が、今回のライバル枠なのではと思っています。いかにもスポーツを主軸にした物語らしい関係性ですね。
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ぬにっち
ブロガー
ブログ「けつばんレポート」にて、ポケットモンスターの構築記事をトリプルバトル中心に執筆。「グリーンに学ぶトリプルバトル」「【雑記】ワタルは本当にチート使いなのか?」など、多数の人気記事を更新している。
連載
「ポケットモンスター」シリーズ最新作として、2019年11月15日に全世界一斉発売された『ポケットモンスター ソード・シールド』(通称『ポケモン剣盾』)。 本編シリーズ初のNintendo Switch専用ソフトとなっており、そのコンセプトはプロデューサーの増田順一さん曰く「最強のポケモン」とのこと。 「メガシンカ」「Zワザ」といった前作までの物語と対戦を大いに盛り上げたシステムは「キョダイマックス」として新たに継承され、大迫力の世界観を提示しています。 彩り豊かなポケモンだけでなく、ジムリーダーや主人公らのポケモントレーナーの人気も非常に高い作品に仕上がっています。 老若男女、世界的に愛されている日本発のポップコンテンツ「ポケットモンスター」最新作に、KAI-YOUでも様々な切り口から迫ります。
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