今週末の8月9日(金)から12日(月)の4日間にわたって開催される世界最大級の「コミックマーケット96」(C96)。今年は史上初の4日間開催や入場が有料になるなど、今までとは一味違ったイベントになりそうだ。
同人誌即売会は、もちろんコミケに限ったイベントではない。全国各地で、大小の同人誌即売会が日夜開催されている。
企業が運営しているものもあれば、ファン有志で運営されているものもあり、中には(良い意味で)とんでもない即売会というものも当然存在する。
実際にあった面白い「同人即売会」をまとめた『日本クソ即売会列伝』を刊行する花羅さんを直撃。
「否定的なことは極力抑えて前向きな提言を目指す」「男性向け・女性向けの枠、地方・都会の枠に囚われない評論を目指す」の2点をポリシーに、全国各地の即売会に赴いてはそれを評論している。
加えて、コンテンツツーリズムやアニメ聖地町おこしの研究・評論も行っており、セミナーなども開催している。
サークルの活動として同人誌即売会評論本を定期的に刊行している「STRIKE HOLE」だが、去年に刊行した同人誌即売会主催団体「SDF」が手がけた"これはひどい"と笑える同人誌即売会に焦点を絞った『SDFクソ即売会列伝』が話題に。
今年のコミケでは「SDF」に限らず、全国各地でこれまでに行われた「クソ即売会」を総力特集した『日本クソ即売会列伝』を刊行する。
花羅 中学生の頃、キャプテン翼・聖闘士星矢のオンリーイベントに、友人に連れられて参加したのが初めてですが、余り記憶に残っていません。事実上の初参加は、2000年頃、仕事の都合でコミックマーケットに参加したことです。人出の多さに舌を巻きましたが、これ以後、同人誌即売会というものに興味を持つようになりました。
──『クソ即売会』を取り扱うにいたった経緯を教えてください
花羅 同人誌即売会に参加するのが好きになり、日本全国、場所を問わず面白そうな即売会があれば、遠征して足を運んでいました。
艦隊これくしょんオンリー『砲雷撃戦!よーい!』や結城友奈は勇者であるオンリー『勇者部満開』など、同人誌即売会主催団体「SDF」のオンリーイベントにもちょくちょく顔を出していましたが、あそこは変わった即売会も多いです。それならば、SDFの変わった即売会をおもしろおかしく紹介してみようと。それが前著『SDFクソ即売会列伝』です。
──具体的に印象的だったものは?
花羅 印象的なSDF即売会は、瀬戸内海に浮かぶ離島・江田島にある標高402メートルの砲台山の山頂で開催された、艦隊これくしょんオンリー『砲雷撃戦!よーい!』という即売会でした。
いくらこの砲台山が、旧日本海軍ゆかりの史跡である「艦隊これくしょん」の聖地だからといっても、さすがに普通の主催は山のてっぺんで開催しようとしないでしょう。
砲台山までは公共交通機関も運行していなかったので、SDFは最寄りの港から山頂まで、無料の送迎バスをチャーターし対応しました。港から山頂まで、バスで20分もかかりました。
やっとの思いで到着したのは、砲台山にある旧海軍の史跡を今に遺す歴史公園。弾薬庫跡に机椅子を入れてサークルを配置しました。
弾薬庫は屋根付きだったので、雨天時でもサークルさんは安心して参加できるというメリットはあるものの、そこまで出費も手間暇もかけてまで山のてっぺんで即売会をやろうとする発想がいい意味で異常です(笑)。
そんな即売会に参加した我々も明らかに「頭おかしい」と言えるでしょうが…
もっとも、そんな場所で開催したにも関わらず、数十ものサークルが集まり、一般参加者も数百人規模。江田島の商工業者も、砲台山に屋台を出店させたほど盛況でした。
──なるほど、それは確かに「クソ即売会」の名に相応しいイベントですね…。そういったものをまとめた『SDFクソ即売会列伝』の反響はどうでしたか?
花羅 読む人読む人、腹抱えて笑ってくださいました(笑)。
脱力する方か、「頭痛くなってきた」と漏らす方が多い印象です。SDF主催の即売会にこの本を持ってサークル参加すると、なぜかスタッフの皆さんが率先して買いに来て下さいます(笑)。
──花羅さんが思う「即売会の魅力」を教えてください。
花羅 即売会は、主催という一個人のキャラクターに依拠する、属人的な性質の催事だと思います。そして、人それぞれ個性があります。主催が違えば、即売会の中身も大きく変わります。主催本人の個性に裏打ちされた即売会の雰囲気の違いを楽しめることが、即売会の魅力の一つです。
ほかには月並みですが、買い手さんや他サークルさんと直に交流できること。自分が苦心してつくった作品を手に取ってもらえる喜び。そういった部分も魅力です。
──これまで花羅さまが体験された中でもっとも衝撃だった即売会とその理由を一つだけ教えてください
花羅 一つだけ、というのは正直厳しいですね(笑)
強いて挙げるのであれば、東方Projectオンリーで活躍されている作家・久樹輝幸さんの結婚式二次会を同人誌即売会形式で開催した『ひさけっと』。あとは主催自らの誕生日を祝ってもらうために開催した『COMIC王』が双璧でしょうか。
結婚式や誕生日を「同人誌即売会」の形式で開催しようとする発想が無茶過ぎましたね(笑)。実際、サークルとしてお店を構えてはいたものの、飲み食いばかりしてましたので、「即売会」というよりは「パーティー」の雰囲気でした。
──今回の『日本クソ即売会列伝』の見どころを教えてください。特に良い意味で頭の悪い『クソ即売会』はなんでしょうか?
花羅 『クソ即売会』という言い方をしていますが、どこのクソ即売会も私には思いも付かない柔軟な発想と、飛び抜けた実行力をもって新鮮な感覚を味わえる。素晴らしい即売会ばかりです。
そういう即売会をおもしろおかしく紹介することは、日本全国の同人誌即売会を飛び回っている自分だからできることだと思います。紙面の都合上、短評のみにとどめたものも多いですが、日本中の「クソ即売会」を知ってる限りほぼ全てを取り上げました!
中止に追い込まれたり、シャレにならなかったり、笑えないようなひどい即売会は取り上げていません。クソ即売会のクソ主催本人が読んでも笑ってくれる。そういう即売会だけを取り上げたつもりです。
──今回のコミケは、2箇所で4日間開催、有料化など多くの変化が起きましたが、これについてはどうお考えですか?
花羅 外部環境の急激な変化に伴い、不可抗力的にそうせざるを得なくなったものと認識しております。誰が悪いわけでもなく、仕方のないものと捉えています。
変化するという事実を受け入れ、それを踏まえながら、コミケでの過ごし方を考えていきたいと思います。
──ありがとうございました!
『日本クソ即売会列伝』はコミケ3日目、8月11日(日)「西・く-05a」で頒布される。
今回は花羅さんが体験したクソ即売会はもちろん、自ら主催を務めたクソ即売会の開催体験記を特別企画として収録。巻末には、30もの紹介しきれなかった変わった即売会、クソ即売会の数々を短評と共に紹介している。
同人誌即売会は、もちろんコミケに限ったイベントではない。全国各地で、大小の同人誌即売会が日夜開催されている。
企業が運営しているものもあれば、ファン有志で運営されているものもあり、中には(良い意味で)とんでもない即売会というものも当然存在する。
実際にあった面白い「同人即売会」をまとめた『日本クソ即売会列伝』を刊行する花羅さんを直撃。
「この本をお読みいただいた皆様、漏れなく頭痛or脱力に見舞われる」と豪語するほどの内容とは一体?【夏コミ情報】新刊2冊
— 花羅@8/12 西・く-05a (@hanara_striker) August 2, 2019
「日本クソ即売会列伝」…日本には、頭おかしい即売会が多数!即売会を通じ、この国の頭の悪さを知らしめますw
「コンテンツツーリズム取組事例集6」…聖地町おこし研究本。山梨県内や、今話題「唐津」の話など。放火事件を受け、京アニの町おこしへの多大な貢献も論じます pic.twitter.com/RqD79TCvHT
即売会に魅せられた花羅さん
花羅さんは、全国各地の同人誌即売会を主な対象とした評論サークル「STRIKE HOLE」の主宰をつとめる、まさに即売会に生きる剛の者。「否定的なことは極力抑えて前向きな提言を目指す」「男性向け・女性向けの枠、地方・都会の枠に囚われない評論を目指す」の2点をポリシーに、全国各地の即売会に赴いてはそれを評論している。
加えて、コンテンツツーリズムやアニメ聖地町おこしの研究・評論も行っており、セミナーなども開催している。
サークルの活動として同人誌即売会評論本を定期的に刊行している「STRIKE HOLE」だが、去年に刊行した同人誌即売会主催団体「SDF」が手がけた"これはひどい"と笑える同人誌即売会に焦点を絞った『SDFクソ即売会列伝』が話題に。
今年のコミケでは「SDF」に限らず、全国各地でこれまでに行われた「クソ即売会」を総力特集した『日本クソ即売会列伝』を刊行する。
「クソ即売会」の真相を本人に直撃
──花羅さんはいつからコミケなどの即売会に参加されていますか?花羅 中学生の頃、キャプテン翼・聖闘士星矢のオンリーイベントに、友人に連れられて参加したのが初めてですが、余り記憶に残っていません。事実上の初参加は、2000年頃、仕事の都合でコミックマーケットに参加したことです。人出の多さに舌を巻きましたが、これ以後、同人誌即売会というものに興味を持つようになりました。
──『クソ即売会』を取り扱うにいたった経緯を教えてください
花羅 同人誌即売会に参加するのが好きになり、日本全国、場所を問わず面白そうな即売会があれば、遠征して足を運んでいました。
艦隊これくしょんオンリー『砲雷撃戦!よーい!』や結城友奈は勇者であるオンリー『勇者部満開』など、同人誌即売会主催団体「SDF」のオンリーイベントにもちょくちょく顔を出していましたが、あそこは変わった即売会も多いです。それならば、SDFの変わった即売会をおもしろおかしく紹介してみようと。それが前著『SDFクソ即売会列伝』です。
──具体的に印象的だったものは?
花羅 印象的なSDF即売会は、瀬戸内海に浮かぶ離島・江田島にある標高402メートルの砲台山の山頂で開催された、艦隊これくしょんオンリー『砲雷撃戦!よーい!』という即売会でした。
いくらこの砲台山が、旧日本海軍ゆかりの史跡である「艦隊これくしょん」の聖地だからといっても、さすがに普通の主催は山のてっぺんで開催しようとしないでしょう。
砲台山までは公共交通機関も運行していなかったので、SDFは最寄りの港から山頂まで、無料の送迎バスをチャーターし対応しました。港から山頂まで、バスで20分もかかりました。
やっとの思いで到着したのは、砲台山にある旧海軍の史跡を今に遺す歴史公園。弾薬庫跡に机椅子を入れてサークルを配置しました。
弾薬庫は屋根付きだったので、雨天時でもサークルさんは安心して参加できるというメリットはあるものの、そこまで出費も手間暇もかけてまで山のてっぺんで即売会をやろうとする発想がいい意味で異常です(笑)。
そんな即売会に参加した我々も明らかに「頭おかしい」と言えるでしょうが…
もっとも、そんな場所で開催したにも関わらず、数十ものサークルが集まり、一般参加者も数百人規模。江田島の商工業者も、砲台山に屋台を出店させたほど盛況でした。
──なるほど、それは確かに「クソ即売会」の名に相応しいイベントですね…。そういったものをまとめた『SDFクソ即売会列伝』の反響はどうでしたか?
花羅 読む人読む人、腹抱えて笑ってくださいました(笑)。
脱力する方か、「頭痛くなってきた」と漏らす方が多い印象です。SDF主催の即売会にこの本を持ってサークル参加すると、なぜかスタッフの皆さんが率先して買いに来て下さいます(笑)。
──花羅さんが思う「即売会の魅力」を教えてください。
花羅 即売会は、主催という一個人のキャラクターに依拠する、属人的な性質の催事だと思います。そして、人それぞれ個性があります。主催が違えば、即売会の中身も大きく変わります。主催本人の個性に裏打ちされた即売会の雰囲気の違いを楽しめることが、即売会の魅力の一つです。
ほかには月並みですが、買い手さんや他サークルさんと直に交流できること。自分が苦心してつくった作品を手に取ってもらえる喜び。そういった部分も魅力です。
──これまで花羅さまが体験された中でもっとも衝撃だった即売会とその理由を一つだけ教えてください
花羅 一つだけ、というのは正直厳しいですね(笑)
強いて挙げるのであれば、東方Projectオンリーで活躍されている作家・久樹輝幸さんの結婚式二次会を同人誌即売会形式で開催した『ひさけっと』。あとは主催自らの誕生日を祝ってもらうために開催した『COMIC王』が双璧でしょうか。
結婚式や誕生日を「同人誌即売会」の形式で開催しようとする発想が無茶過ぎましたね(笑)。実際、サークルとしてお店を構えてはいたものの、飲み食いばかりしてましたので、「即売会」というよりは「パーティー」の雰囲気でした。
──今回の『日本クソ即売会列伝』の見どころを教えてください。特に良い意味で頭の悪い『クソ即売会』はなんでしょうか?
花羅 『クソ即売会』という言い方をしていますが、どこのクソ即売会も私には思いも付かない柔軟な発想と、飛び抜けた実行力をもって新鮮な感覚を味わえる。素晴らしい即売会ばかりです。
そういう即売会をおもしろおかしく紹介することは、日本全国の同人誌即売会を飛び回っている自分だからできることだと思います。紙面の都合上、短評のみにとどめたものも多いですが、日本中の「クソ即売会」を知ってる限りほぼ全てを取り上げました!
中止に追い込まれたり、シャレにならなかったり、笑えないようなひどい即売会は取り上げていません。クソ即売会のクソ主催本人が読んでも笑ってくれる。そういう即売会だけを取り上げたつもりです。
──今回のコミケは、2箇所で4日間開催、有料化など多くの変化が起きましたが、これについてはどうお考えですか?
花羅 外部環境の急激な変化に伴い、不可抗力的にそうせざるを得なくなったものと認識しております。誰が悪いわけでもなく、仕方のないものと捉えています。
変化するという事実を受け入れ、それを踏まえながら、コミケでの過ごし方を考えていきたいと思います。
──ありがとうございました!
『日本クソ即売会列伝』はコミケ3日目、8月11日(日)「西・く-05a」で頒布される。
今回は花羅さんが体験したクソ即売会はもちろん、自ら主催を務めたクソ即売会の開催体験記を特別企画として収録。巻末には、30もの紹介しきれなかった変わった即売会、クソ即売会の数々を短評と共に紹介している。
いよいよ今週末!
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